気になる国内のタブレット市場、メーカー別シェアとサポート現場からの雑感
エンタメ動画で扱うのは大きな問題
以前から、Windows11に非対応のパソコンを裏技でアップグレードできるという動画がYouTube上で蔓延しています。以前のコラムでそのような記事を鵜呑みにしたり、実行しようとするのは情報リテラシーに問題があるということを指摘しました。
非対応のパソコンにWindows11導入は何が問題なのか、その理由を専門家はこうみる
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/5117596/#h2-5
今回は、AMDのCPUがIntelのCPUに続けて問題が起きているといった内容の動画が蔓延しはじめているようです。AMDのCPUで発見された脆弱性が大きくニュースになっていることは確かですが、Intelの問題とは事情が違います。IntelのCPUでは、脆弱性ではなく物理的な損傷が生じるというもので、プログラムの修正や更新などでは修復ができないトラブルです。そのため、IntelのCPU問題は大きな問題として取り上げられています。
Intel 13世代、14世代CPUの不具合対応がメーカー公式ページで公開されました
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/5170328/
しかし、今回のAMDのCPUで発見されたSinkcloseという脆弱性は、すぐにPCが無防備になってしまうというようなものではありません。一定の特殊な条件下のみにおいて脅威になるものです。BIOSやソフトウェアの更新などで対処ができるレベルの話で、IntelのCPUの問題とは根本的に異なります。
ところが最近、ネット動画でセンセーショナルな話題として誤解を与えるタイトルで拡散しています。そういうものは公益性に基づいた良心的な情報発信とは言えず、ある意味悪意さえ感じさせます。このような動画は単に再生回数を稼ぐ目的のための動画といわざるを得ないものです。情報というレベルではなく、注目を集めて収益を上げるための仕掛けです。
特にIT分野は専門家でもない限り、情報の正非を判断できるものではありません。それをエンタメ感覚で一般の人を扇動したり誤解を与えたりすることはコンプライアンス的にも大きな問題です。Platform Secure BootのAMDのシステム(標準で設定されている)でシステムを更新すれば対応可能な問題であり、適切なセキュリティー対策を同時に行っていればそのまま使い続けていても問題はありません。動画のタイトルのようにすぐにでもパソコンが乗っ取られるような性質のものではありません。惑わされないようにしてください。
倫理的な問題があるFUD手法
この手法は昔からある「FUD」と呼ばれる宣伝手法です。FUDは「Fear, Uncertainty, and Doubt(恐怖、不安、疑念)」の略で、ビジネスや政治の場面でよく使われます。競合する製品やサービスに対して、意図的にネガティブな感情を抱かせることで、人々に不安を与えるのが目的です。これは、リスクに敏感な人間の防衛本能に働きかけるため、非常に効果的です。多くの人の注目を集めたり、リスクを避けたい人を思い通りに動かすことができてしまいます。
しかし、FUDは倫理的な問題があります。というのも、人々の恐怖や不安を煽ることで冷静な判断を妨げ、正しい情報に基づいた選択をできなくしてしまうからです。今回のAMDのCPUに対する煽り動画も、FUDの一例と言えるでしょう。
FUDの問題点は、それが人々の善意や前向きな動機ではなく、恐怖や不安、疑念を利用して自己判断力を奪い、盲目的に従わせる危険性があることです。
このような影響に惑わされないようにするためには、情報リテラシーを向上させることが重要です。以前の私のコラムも参考にしてください。
情報リテラシーが向上しフレーミング効果を見抜けるクリティカルシンキング
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/5141852/