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コラム
「建築って何?(49)」「鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ」
2012年10月2日 公開 / 2020年12月28日更新
建築基準法施行令第79条第1項において、「鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ」が規定されています。耐力壁以外の壁又は床にあっては2cm以上、耐力壁、柱又は梁にあっては3cm以上、直接土に接する壁、柱、床若しくは梁又は布基礎の立上り部分にあっては4cm以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く)にあっては捨てコンクリートの部分を除いて6cm以上確保しなければなりません。また、鉄筋・型枠組立ての際の施工誤差、コンクリートの打込み・締固めの際の鉄筋・型枠の移動等に伴う施工誤差と仕上材を考慮して、「建築工事標準仕様書・同解説JASS 5鉄筋コンクリート工事:日本建築学会」においては、「鉄筋のかぶり厚さ」が建築基準法施行令第79条第1項の規定より厚く設定されています。
定められた「鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ」を確保しなければならない理由は、「コンクリートの中性化」から鉄筋の腐食を保護することだけでなく、以下に示す重要な役割を担っているからです。
(1)構造耐力上必要となるかぶり厚さ
「日本建築学会発行:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」で記述されているように、構造計算では、鉄筋の中心の位置が重要となります。構造計算時の鉄筋の位置は、「かぶり厚さ」の下限値、即ち法令で定められた数値により設定されています。そのため、「かぶり厚さ」が不足した鉄筋に大きな応力が作用した場合、鉄筋に沿ってコンクリートのひび割れ《付着ひび割れ:付着割裂破壊》が生じ、部材耐力の急激な低下をもたらす場合があります。そのため、法令で定められた「かぶり厚さ」を確保することは構造耐力上重要な意味を持ちます。
(2)耐久性の確保に必要なかぶり厚さ
「コンクリートの中性化」に伴い、内部の鉄筋に錆びが生じます。錆びが進行すると、かぶりコンクリートを破壊し鉄筋に沿ってひび割れが発生し、このひび割れ部分から水と空気(酸素)が入り込むと、構造耐力の低下・コンクリートの剥離や落下が生じ、美観・機能・日常安全性が低下します。そのため、法令で定められた「かぶり厚さ」を確保することが重要な意味を持ちます。
(3)耐火上必要なかぶり厚さ
火災時には、温度上昇に伴い「鉄筋」の強度・降伏点、「コンクリート」の強度が低下し、それぞれの長期許容応力度以下に下がります。そのため、常時荷重下での耐力が不足し、火災時の建築物の荷重状態によっては部材の過大な撓みや変形が生ずることになります。そこで、火災時においても部材の構造耐力の低下や過大な撓み・変形をもたらす「鉄筋」及び「コンクリート」の劣化が生じないよう、定められた「かぶり厚さ」を遵守することが重要となります。
設計監理/調査鑑定/CM(コンストラクションマネジメント)
タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所
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