マンションの機能上の耐震性能

高塚哲治

高塚哲治

テーマ:建築の仕組み

 地震時に脱出経路となるマンションの玄関扉は、廊下壁(雑壁)に取り付けられています。この壁が損傷し始めるのは震度5強程度とされています。壁が損傷すれば扉は歪み、開かなくなります。ところが、マンションには、さらに低い震度でも損傷しかねない設備機器が数多く存在しています。こうした設備機器のなかには、損傷しかねない震度より一段階低い震度で自動的に停止するものがあります。まずはエレベーターです。低層階の住人以外は毎日必ず利用する重要な通路であるだけに、地震時の機能停止や閉じ込めは命に関わる問題となります。エレベーターの耐震性能は極めて低レベルです。停止レベルは通常だと震度4であり,120m以上の超高層になると震度3で停止します。マンション上層階での生活には、エレベーターが動かなくなった時には大変なリスクが生じます。
 屋上の耐震型高置水槽からの給水も震度4で停止します。それ以上の震度では配管のどこかが損傷する可能性が高いからです。
 これらの設備が重要な機能を担っている高層マンションでは、損傷の程度はともかく、「機能を保持できるレベルは震度4」といえます。このように、マンションの機能上の耐震性能はバランスよくできていません。
 玄関扉は震度6弱以上でも歪まない耐震扉とし、エレベーターは震度5強以上で機能を保持できる性能であれば、構造体の耐震性能とバランスがとれますが、残念ながらこの性能を満たすものはまだなく、近い将来に実現できる見込みも立っていません。


「マンションは地震に弱い(矢野克己 著)抜粋」

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タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所

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高塚哲治
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高塚哲治(建築家)

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大手設計会社での豊富な経験を生かし、多くの欠陥住宅問題を手がけ、日本ではまだなじみの薄いCM(コンストラクションマネジメント)を広く世間に発信し、遂行している

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