『マージン・ミックス』、ほとんどの人が知らない戦略的・活用術【商人舎magazine7月号】原稿
先日、クライアントの営業会議に参加しているときのことです。
会議の中である幹部が、キャッシュレス決済の状況について発表していました。
その幹部曰く、「だいぶキャッシュレス決済比率が高まり、その経費負担が高くなっている」という。
確かに、決済手数料自体、数年前はほぼゼロだったわけですから、あらゆるコストが高騰している時期に気になることは無理もないことです。
また、キャッシュレス決済もクレジットカードや電子マネーなど、その種類や方法も増えて、手数料も決済会社によって異なっています。
自社の電子マネーのシステムを導入している場合は、お客が事前に入金(チャージ)してくれるため、店舗側には何かと有利であるのですが、システムの利用に使用料は発生します。
コロナ禍からの経験で、考え方と行動に変化が生まれた
クレジットカードや電子マネーなどによる決済手段の登場により、レジでの決済という仕方そのものが、買う側共にとって便利になっていることは間違いないことです。
このことで、買い物をする店を選ぶ理由にもなって来ているだろうし、買い物のタイミングによっては、選ばれない理由にもなってしまうことも考えられます。
特にコロナ禍で、非接触対応やネットスーパーでの買い物など、「キャッシュレス決済の習慣化」のきっかけになった人も多いでしょう。
そして、その慣れは、今まで日々当たり前にやっていた、現金のやり取りや、小銭の管理など、現金決済自体の「不便さ、煩わしさ」を感じさせる、切っ掛けにもなったと思います。
「クレジットカードを使うことの不安・・・」さえ感じていた人たちが、使ってみた便利さや快適さから、現金決済という行動へ戻ることは少ないと考えられます。
写真:Amazon Go
考え方と行動を変えて、「行かない店」のレッテルを張られ
「あのクレジットカードの手数料は高い・・・」と言っている場合ではないことは、賢い経営者であれば、すぐに解るはずです。
お客が変化しているのですから、こちらが変化して、その先を考える必要があります。
目先の経費しか考えられないようでは、これから先の経営自体が危ぶまれます。
そもそも、決済手段自体の拡大を考えなければ、他の競合店などが決済手段を増やしており、(お店に余程の魅力がない限り)現金決済のみや限られた決済方法しか使えないままでは、お客から「行きたくないレッテル」を張られてしまい、販売機会を簡単に失うということになってしまいます。
必要なことは、「お客の快適な買い物体験」をしてもらうことを優先して、それに掛かるコストを機器の入れ替えや、投入人時の改善などでコストを吸収する仕組みを作ることです。
お客と販売側のメリットを追求する努力と行動が、お店の価値
レジ清算(決済)が簡単に行えるようになり、レジ担当者にも気持ち的余裕が生まれることは十分考えられます。
その分、お客とのコミュニケーション機会を増やせる側面もあると思います。
例えば、「〇〇Pay」などのスマホ決済では、顧客から「フォロー」されることも可能です。そして、その機会を利用してお客にメッセージを送ることも可能です。
次回の来店を促すようなメッセージを送ることも可能ですし、日々価値情報を送ることもできます。
電子的だから出来るコミュニケーションの仕組みであり、お店のファンを増やすきっかけにもなり、これらは現金決済ではできなかった仕組みです。
いわゆる、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係性マネジメント)で、顧客と良好な関係性を築くこの手法(ツール)として活用できるようになります。
このこと自体は、お店側から一方的に特売などの集客手段ということではなく、顧客と長く良好な関係を築くための方法と考えるべきだと思います。
キャッシュレス決済の便利さと併せて、無意識のうちに選んでもらうお店になるための戦略手段だと考えると良いと思います。
日々進化するハード メリット追求の洞察力が投資対効果を高
各レジメーカーのハードが進化しています。
十数年前、フルセルフのレジが発売され、セミセルフが出て、そして、フルセルフレジがタブレット端末やスマートフォンで決済できるタイプへ、と確実に進化しています。
このこと自体を、ハードの進化や人件費の削減とだけで捉えてしまうのではなく、お客のメリットとレジ担当者のメリットを考えて導入決定を行うべきだと思います。
スマフォレジの導入した店舗は、特売日やピーク時間帯の「レジ待ち時間の解消」という、大きなベネフィットを、お客が享受できる様になっています。
従来のフルセルフでは、お客のレジ清算のための時間は短縮出来ず、また、セミセルフでは、レジ待ち時間はさほど解消できなかったのです。
更に導入店舗では、特売日の売上アップを実現していると聞きます。
【写真:スマホレジは、設置面積を大幅に狭くできる】
数年後には、レジのハード自体が無くなってしまうことも考えられますが、現時点で考える必要があるのは、
①通常レジとフルセルフ(スマフォレジ)の組み合わせ
②セミセルフとフルセルフ(スマフォレジ)の組み合わせ
③組み合わせの台数比率
また、お客の慣れに合わせて、
④フルセルフの台数を増やす(調整する)
などという様に、お店の現場に合わせた、柔軟な対応(修正)をメーカーと協議して考えていくことが重要であると考えます。
このことは、
・ハードに掛かるイニシャルコスト
・お客のメリット
・レジ担当者とお店のメリット
・ランニングコスト(特に人件費)
・レジ設置の専有面積
など、トータルで考え、全体としての最適化を計画することを強くお奨めします。
レジメーカーも日々努力をして素晴らしいハードを作り上げていますが、そのスピードが速く、導入する店も洞察力を高めていく必要があります。
展示会に行く回数を増やすことや、メーカーとのコミュニケーションを日々取り続けること、また1つのメーカーに偏らず、複数のメーカー(担当者)とも良好な関係を築き、情報収集を行うことが非常に重要だと思います。