『マージン・ミックス』、ほとんどの人が知らない戦略的・活用術【商人舎magazine7月号】原稿
2月、3月と、決算月を迎える企業も多いと思います。
ここで重要になって来るのが、コンセプト、戦略、プロジェクトなど、新年度の目標設定と、そのための計画づくりです。
私の現在、過去のクライアントを見ても、ここに問題を抱えている企業が少なくありません。
そこで今回は、競争環境の中で、「どう戦うか」を、そして、「どう行動するか」について、解説していきます。
念のため申し上げますが、机上の論理的な話をするつもりはありません。
実践するための、誰にでもできる『考える力』を身に付け、そして、『無駄なく行動する』ためのやり方をお伝えします。
なぜ、良い結果が出ないのか?
目標を達成出来ない(良い結果を出せない)企業は、
戦略(計画)策定について、
①戦略(計画)の立て方を知らない。
②知っているけど、正しい意味を理解していない
③意味を理解しているけど、行動していない
④行動しているけど、そもそも、やり方が間違っている
⑤行動しているけど、継続して遣っていない
と言う様なことが考えられます。
このことは、社内の大小のプロジェクトなどでも、同じことが言えます。
絶対に勝てる(良い結果が出せる)戦略があるとは言い切れません。
しかし、正しい戦略を立てることで、無駄を少なくして行動することが出来ます。
そして、実行することで、良くも悪くも結果が出てきます。
結果を評価検証して、次の改善行動に繋げるというプロセスを繰り返すことが、良い結果を出すためには重要なことなのです。
そして、戦略を考えることを、あまり難しく考える必要は無いと思います。
重要なことは、戦略を正しく理解して、チームとしてムダを少なく行動することです。行動を継続することで、その中身は充実したものとなり、良い結果を出せる確率は高まって行きます。
知っておきたい、効果を出せる考え方
私は、コンサルティングを行う上で、色々なフレームワーク(思考の枠組み)を利用しています。
その中でも、「生産性を上げる」という時に、使うフレームワークの一つが【図①】のものです。
生産性を上げるということは、基本的には、お金と時間(人時)に対するリターン(利益)の拡大のことを意味します。
そして、リターンを増やすためには、お金と時間の投資が必要になります。
また、成功の確率を上げることや、より多くのリターンを生むためには、限られたお金と時間を戦略分野に集中投資することが重要です。
そして、多くのお金と時間を戦略投資に回すためには、現状ムダな人時(コスト)を減らすことも重要な考え方となります。
先述したように、結果を出せない企業は、戦略(計画)についての、
④行動しているけど、そもそも、やり方が間違っている
⑤行動しているけど、継続して遣っていない
この2項目に大きく関わっています。
多くの場合、何かの時間を削減しないで、新しいことに挑戦しようとすると時間的な余裕がなくなり、継続することが難しくなってしまいます。
そうならないためには、作業改善やアウトソーシングによって、現状取り組んでいる作業の種類を減らすことや、作業工数(時間)の削減を考える必要があります。その要点を解説しているのが、下の【図①】になります。
【図①】単純作業の削減と付加価値業務の拡大イメージ
単純作業は、『経費』と考えて、投入人時や投入資金を縮小および削減する対象として考えます。
一方、付加価値業務は、直接的、間接的に粗利益の拡大に貢献するものであり、経費ではなく『投資』として考え、拡大することを念頭において考えます。
「取り除く」「減らす」「増やす」「創造する」ことを考える
【図①】の内容を、更に具体的にするのが、【図②】の考え方です。
このフレームワークを活用すれば、戦略(計画)策定がより現実味を生みます。
このフレームワークは、『ブルー・オーシャン戦略』(2005年にW・チャン・キム&レネ・モボルニュ著、ダイヤモンド社刊)のなかに「4つのアクション」の考え方が示されています。
このフレームワークを応用して、コスト削減と売上アップという、相反すると考えられがちなことを整理して、実現可能性を高めて行きます。
ここでは、「4つのアクション」に加筆して、図の左側が『コスト削減』。右側が『ベネフィットの拡大』としています。
また、コストは時間、ベネフィットはプロフィット(利益)や差別化などと置き換えて考えても良いでしょう。
「取り除く」、「減らす」とは、
ほとんど利益に貢献しないだけでなく、場合によっては、コストを押し上げる要因のことです。
また、全ての人時、コスト予算の生産性を低下させてしまうものを言います。
「増やす」、「創造する」とは、
お客や従業員の側から見て、価値や利益をもたらせてくれる要因のことです。
そして、「価値を創造する」は、お客や従業員が、今まで見たことの無いことや、体験したことの無いことを、商品やサービスの提供によって実現してくれるものを言います。
【図②】
【図③】を使って具体的に解説すると、
「取り除く」ものは、
これまでのやり方、業界標準で、形骸化して意味が無いもの、実際にほとんど価値を生まないもの
「減らす」ものは、
これまでのやり方、業界標準で、貢献度の低い、価値を生まない、また、過剰なもの
「増やす」ものは、
お客、従業員の立場として、意味があるもので、増やす価値が有るものまた、増やすべきもの
「価値を創造する」ものは、
業界標準(商圏内)で、これまで提供されていない、商品やサービス(お客、従業員共に)。
競合他社に対して差別化を実現して、価格決定力を増して、利益を確実に拡大することに繋がるものということです。
【図③】
例えば、【図④】ですが、スーパーマーケットの戦略部門でもある、青果部門の強化をはかるという目的で、計画を立てた事例です。
「取り除く」「減らす」ものは、
効率の悪い作業や不良在庫、低品質品やムダな会議などが挙げられています。
一方、「増やす」ものは、
高品質の商品やプロモーション、生産性を向上させるためのことや計画業務などが挙げられています。
そして、「創造する」ものは、
現状実行されていない、差別化戦略です。
【図④】青果部門強化作戦
下の写真が、【図④】青果部門強化作戦を基に改善を行った売場改善の事例です。
戦略売場として、地場野菜売場を前面に拡大展開したのですが、その売上は、20%近く伸びています。
但し、中長期の戦略は、一時的な売り上げ拡大ではなく、地域との繋がりを、より強固にすることにあります。
結果的に、地場の産業も活性化して、ひいては自店のお客を増やすことにも繋がります。
これがこの戦略の真の目的であり、マーケティング的にも、良い商品を作ることの強み(資産)を持つ生産者と、集客という資産を持つスーパーマーケットとの強いジョイントベンチャーなのです。
高鮮度の商品、美味しい商品、道の駅を感じさせる売場が前面に出ていて、お客の潜在ニーズに火を付けます。
【写真①】変更前の売場
【写真②】変更後の売場
コンセプト、戦略、戦術など、多くのものに活用できる
このフレームワークは、コンセプト、戦略、戦術は勿論ですが、業務改善全般、マーケティング、人時削減、コスト削減など、生産性を向上させるための多くのことに活用できます。
応用範囲はとても広いと言えます。
上述した青果部門の実例は、営業戦略策定の一つにすぎません。
次月の本コラムでは、大小複数の具体的事例を取り上げながら、更に掘り下げて解説していきます。
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