売上と粗利益を確実にアップさせる 経営再建に効く「6つの重要チェックポイント」
■増え続ける相場の騰落要因
青果物の相場は、天候や産地の気象被害、為替、そして需要拡大を続ける中国問題などに強い影響を受ける。
昨年後半は、台風が接近、また上陸し、西日本を中心に大雨となり、産地では大きな被害が出た。12月に入ってからは、日本海側を中心として、寒波が押し寄せ、雪や低温による天候被害が多くなった。従来ハウス栽培の品目は気温の変化などを受けやすく、冬場は燃料コストがかかってくる。しかし昨今、欧州や新興国景気の減速や世界的な原油生産量の増加から原油価格が値下がりし、円安を吸収して足元は下落傾向にある。
このようなことから、青果物の相場は、産地の気象変化だけではなく、内外を問わず多くの原因によって変化するようになってきている。
■相場上昇品目
この冬、野菜では、寒気や雪の影響を受けて、ほうれん草や水菜などの軟弱葉物類やハウス栽培のきゅうりやトマトを中心とした果菜類などの相場がアップしやすくなる。
また、果物では、グレープフルーツやオレンジ、レモンなどの輸入柑橘などが、円安の影響を受ける。そして、年間最大の売上高のバナナは、円高もさることながら、最大輸入国であるフィリピンの昨年の台風の影響が残ることや、大消費国である中国の動きが相場を左右するものと考えられる。
■相場高の時の基本的対応策
基本的に注意したいことは、グレードを落としての単純な安売りをしないことである。グレードを安易に下げることは、お客からの信用を低下させることにつながる恐れがある。
そのためにキャベツなどは、玉売りから1/2カットへ中心SKUを変更することや、1/2カット、1/4カットの定番の他にも、1/6や炒め物用カット等で量目をコントロールしてプライスラインを増やし、お客の買いやすさを演出する。
果菜や土物などは、バラ売りコーナーを設置して、必要な量だけ買えるようにすること。バラ売りを集めてバンドル販売をすることも効果的である。
また、カット野菜もサラダ用や炒め物用を中心に、ここ数年販売量を確実に伸ばしてきているが、野菜の相場高の時には、もやしなどと並んで確実にその量を伸ばすことから、品揃えを充実させて、欠品を起こさない努力が必要である。
輸入果物については、果物のトップアイテムであるバナナ。
バナナは例年、4月後半から5月6月はトップの消費支出となる。国産果物では、4月後半からいちごの売上が低下して、6月のメロンや西瓜が出回るまで例年トップとなる。
朝食アイテムとして、バナナやグレープフルーツ、オレンジやキウイフルーツなどは重要アイテムである。3月後半から4月に掛けて、新生活、新学期が始まる。シリアルやヨーグルトなど関連販売を徹底して、関連購買を促す売場作りを行うことが重要であり、顧客の買い上げ単価アップにつながる。
■物の価格ではなく、それを使うことによるベネフィット(得)を売る・・・POPの重要性
「原価がいくらで、売価はいくら」ということは商売をする以上大切であるが、これは、売る側の視点である。
「なぜそれを買うのか」「なぜ買わなければならないのか」という様な、買う側の視点を考えることができれば、新たな需要を生むことができる。また、売価を高位に設定することも可能である。
お客が知らなかったこと、気付かなかったことに焦点を当てて、需要を創造するのである。
有機農産物や高糖度トマトなどのような高品質のこだわり品。果物やトマト、さつま芋や玉ねぎなど、糖度の高さや味に自信を持てるもの。バナナやトマトを中心とした、健康維持やダイエット、美容に効果があるといわれる品目。カット野菜やカットフルーツなどの簡単便利で、手間を省き、時間を短縮してくれる物。など、その価値をお客に確実に伝える努力をすることが出来れば、お客様の「買いたい」「使ってみたい」という気持ちを刺激して、販売数量を増やすことができる。
そういう意味では、プライスカードはあるが、情報伝達のためのPOPが少ない売り場が圧倒的に多い。
効果的なPOP作成のためには、
1.明確なターゲット(誰に買ってもらいたいのか)
2.明確なベネフィット(それを買うと、どの様な良いことが有るのか)
3.ユニークな特徴(ベネフィットの裏付けは何か)
ということを基本に設定し、ターゲットが興味をそそるようなキャッチコピー(フレーズ)を付けること。
また、全体として、明確でわかりやすく、見やすい、読みやすいことに心がけて作成に当たることが重要なポイントである。
競合店に対して、商品やサービスの差別化をはかれれば、円安になっても、相場高になっても関係なく、価値を伝えることができれば販売量を伸ばすことは可能である。
価値があるのであれば、その魅力を感じる商品に仕上げる努力が必要であり、逆に言えば、安くてもその商品やサービスに魅力を感じなければモノは売れない。
■モノの価格ではなく、それを使うことによるベネフィット(得)を売る・・・試食販売担当者のスキルアップと計画的実施
お客に、商品を直接食べていただくことが効果的であることは言うまでもないが、効果的に実施している店舗は、意外に少ない。
試食販売を無人でやっている場合と、商品とその使い方を熟知した担当者が、直接お客にお勧めするのでは、結果(販売量)に大きな差を生む。また、試食販売を実施した後の販売量は、格段に違ってくる。
効果をアップさせるためには、午前午後のピーク時間帯や広告チラシの投入初日などの繁忙日などに実施することである。そして、販売する担当者の商品知識の習得や販売スキルのアップが重要なカギとなるので、事前の教育訓練を計画的に実施することが求められる。
事例1:カットフルーツで手作りケーキ
輸入のグレープフルーツ、オレンジ、キウイ、ブルーベリー、国産のメロンなど、単価の高いものや量の多いものは、アソートパックを作り、全体としての購入単価を下げることにより、買いやすさを演出する。
■根本的に焦点を変えて行動を変える・・・「モノに豊かさ」から「心の豊かさ」
内閣府の「国民生活に関する世論調査」によると、1980年頃より消費者の豊かさの価値観が変わってきていることが解かる。戦後から高度成長期を経て1970年前半まで、消費者は、モノ自体を所有することにより豊かさを感じていた。
ところが、大方モノが行き渡ると、日々の心の豊かさを求める消費者が確実に増えてきて、その差は大きく拡大している。
このことには、商品の価格高騰への対応というだけでなく、商品化や売場づくりなど、競合店と戦う上で無視できない、重要な差別化の要素になってきていると考えられる。
この意味からも、商品の価値をお客に伝える努力とその差が、売上の差になってくることが考えられる。
■そのための生産性アップ・・・付加価値作業のための人時をつくり出す
試食販売や推奨販売、顧客のための価値ある情報発信、そのためのPOPや動画等の作成と、それを効果的に伝えるためのコピーライティング。特に効果を出すためのキャッチコピー(フレーズ)の技術アップなどが、付加価値のある商品の売上を伸ばすためには重要なスキルとなってくる。
しかし、売りを伸ばすためのPOPの作成や有人の試食販売を行うには、それを行うための新たな人時が必要になってくる。
また、国内経済の活性化から、地域差はあるものの、パート社員の人件費の上昇が見られる。
そのための対策としては、作業改善が必要になってくる。単純作業の無駄をなくし、作業段取りや作業手順の見直しなどを行い、作業全体の処理能力を高くして、現状の総人時の中から有効人時をつくり出す必要である。
人時投入のメリハリを付けて、付加価値作業については、人時売上高は一時的に低下しても、荒利益率を高くして、人時生産性を高くするという発想である。
■絶対価格と相対価格
価格高騰の時に、価格で競合店と戦う方法もあるが、ほとんどの場合、荒利益低下を招き、賢い選択とは言い難い。対策としては、品質や鮮度、産地や生産者など、その商品の持つ付加価値の情報をお客に伝え、価格の維持やアップを狙いたい。前者は、絶対価格(単純に価格で比較)で、後者は、相対価格(品質に対して価格を評価)である。
例えばキャベツは、NBの加工食品ではない。品種や産地、生産段階のこだわりや鮮度など、価値を確実にお客に伝え、価格の維持、向上に努力したい。
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