何をしても改善しなかったイップス。見直したのは食事でした

野口由美

野口由美

テーマ:病気、症状の解説

25歳の会社員男性から、
「普段の会話は問題ないのに、歌うときだけ声が出なくなる。

特に高い声を出そうとすると、声がつまるような感じがあって、
声を出そうとする意思が、体にうまく伝わっていない感じがする。

もう歌えなくなったらどうしようと思うと、さらに出せなくなります。

野球の送球でも、腕が思うように動かなくてボールを投げられません」
というご相談です。

これまで内科、耳鼻咽喉科、音声外来などを受診し、整体や鍼灸も受けましたが、まったくなにも変わりません。

歌と送球は異なる動作ですが、どちらも筋肉、姿勢、呼吸、タイミングなどを細かく調整する高度な協調運動です。

初診時、男性は20代とは思えないほど顔色が悪く、目の下にはクマがありました。

生活状況をお聞きすると、仕事のあと深夜までカラオケで歌い、就寝は午前2〜3時。
朝は7時に起きて出勤していました。
寝つきも悪く、夜中に目が覚めることもありました。

朝食は食べず、昼は丼物やコンビニ弁当を一気に食べ、深夜にはお菓子を食べていました。

血液検査では、中性脂肪が280、BUNが11でした。

食事内容と合わせると、「血糖値が乱れやすく、たんぱく質をはじめとする栄養も不足している」と考えられます。

この男性の場合、血糖値が乱れやすい食生活、栄養不足、慢性的な睡眠不足が重なり、発声や送球に必要な身体の調整力が低下していた可能性があると考えました。

さらに、「またできなかったらどうしよう」という恐怖や緊張が、症状を強めていたと考えられます。

食事と睡眠を整えることにしました。

朝食を含めて3食を規則正しく食べること。

丼物だけで済ませず、主食、味噌汁、主菜、副菜を組み合わせること。
深夜のお菓子を控えること。
そして、深夜まで歌うのをやめ、午前0時までに寝ることをお勧めしました。

3週間後、目の下のクマはほとんど消え、顔色も明るくなっていました。

「12時に寝て、3食食べるようにしたら、眠れるようになりました。
中途覚醒もなくなりました」
と話されました。

3か月後には、
「いつもどおり声が出る日が増えました。
食事を抜いたり適当にすると、眠れなくなり、声も出にくくなるので、食事が関係していると感じている」
と言われます。

イップスは、心理的な問題だけで起こるとは限りません。

血糖値の乱れ、栄養不足、睡眠不足、疲労の蓄積など、身体的な問題が背景に隠れていることもあります。

必要な検査を受けても原因がわからず、さまざまな治療を受けても改善しない場合には、食事や睡眠を含め、体全体の状態を見直すことが改善の糸口になることがあります。
※症例は個人が特定されないよう、一部内容を変更しています。
※治療効果には個人差があります。

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野口由美
専門家

野口由美(医師)

クリニック千里の森

患者一人ひとりの個性を重視した「患者ファースト」の治療方針のもと、薬に頼らない医療を提供。近代西洋医学の最前線で培った豊富な知識、自身の体験を裏付けに、幅広い選択肢の中から最適な治療法を提案します。

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