「不安、イライラ」の意外な原因とは
疲れやすい、イライラする、急に不安になったり、落ち込んだりする、
これらの症状が、じつは、低血糖のためにおこっている場合があります。
これは機能性低血糖と呼ばれ、糖尿病治療中の低血糖とは異なります。
今回は、機能性低血糖について解説します。
血糖値を一定に保つ仕組み
血糖のはたらき
そもそも血糖とはなんでしょう。
血糖とは、血液中のブドウ糖、グルコースの濃度です。
グルコースはエネルギーの原料であり、からだを動かすためのエネルギー源です。
血糖が低いということは、エネルギーが少ないということですから、だるくて、しんどくて、疲れを感じるわけです。
適正な血糖値とは
血糖値の正常は70-140mg/dlとされています。
でも、血糖値が70くらいだとちょっとしんどいかなと思います。
90くらいはあったほうがいいです。
血液検査で血糖が70以下だったら明らかにおかしいです。
一見健康で元気そうな方が、健診の血液検査を見ると、血糖57だったりしてびっくりすることがあります。
ご本人に症状はなくてもこれはりっぱな低血糖です。
血糖値を一定に保つ仕組み
食事をすると血糖値はゆるやかに上がり、食後はゆるやかに下がります。
その後は、上がったり下がったりせず、横ばいとなり一定値を保ちます。
どうやって血糖値を一定に保っているのかというと、
肝臓に貯蔵しているグリコーゲンをグルコースに分解して、血液中に放出しているからなんですね。
それでは、肝臓に充分なグリコーゲンを貯蓄できていない場合はどうなるでしょう。
血糖が下がっても、肝臓から切り出すグリコーゲンがないので、血糖値は下がり続けます。
こうして低血糖状態に陥るわけです。
こうなると、からだは糖分を欲しますから、異常に甘いものが食べたくなります。
ここで糖分を一気にとると、急激に血糖値が上昇しますから、
今度は上昇しすぎた血糖を下げようとインシュリンが分泌されます。
すると血糖は急降下し、ふたたび低血糖におちいります。
こうして、血糖値が急激に上昇、下降をくりかえすことになり、これがさらにからだを疲弊させます。
低血糖の症状
グルコースを多く必要としているのは、脳、筋肉、肝臓です。
特に脳はもっとも糖を必要とする臓器です。
低血糖のとき、脳は働くことができませんから、ぼーっとしてしまいます。
また、筋肉に糖がなければ、筋肉を動かすことができません。
ですから低血糖のとき、体は動かなくなってしまうのです。
姿勢を保つにも、筋肉の働きは必要です。
朝起床時に低血糖だと、起き上がることもできません。
いつまでも寝ていたくなり、なかなか起き上がれないのはこのためです。
肝臓も糖が必要です。
低血糖のとき、肝臓の働きは低下し、解毒や代謝ができなくなります。
低血糖状態では、エネルギーを作ることができないので、からだはだるく、しんどくて、疲れています。
また、エネルギーがないので、体温が低くて、寒さを感じているかもしれません。
夜間低血糖
夜、寝ている間の血糖値
夜寝ている間、血糖値はどうなっているのでしょう?
寝ている7-8時間の間は食べることも飲むこともできません。
それでは、血糖値は下がり続けているのか?
実は、夜間、寝ている間もずっと、血糖値は正常範囲に保たれています。
熟睡していると、成長ホルモンとコルチゾールが分泌され、肝臓に働きかけて、肝臓に貯蔵しているグリコーゲンをグルコースに分解します。
こうして、寝ている間の血糖値を保っているのです。
夜間低血糖の原因
ところが、熟睡できていないと、十分なホルモンが分泌されないため、血糖値を保つことができなくなります。
熟睡できなくて、ホルモンが分泌されないのは、どんな場合でしょう。
寝る前にスマホ、パソコンを使っていると、からだは、昼だと勘違いしてしまい、熟睡することができません。
日中、興奮するできごとがあったり、疲れすぎていても熟睡できません。
また、嫌な仕事をしいられる、いじめにあう、虐待されているなど、長期間のストレス状態にあると、熟睡できず、必要なホルモンも分泌されません。
ストレスが大きいと熟睡できないだけでなく、寝ている間、低血糖になっています。
昼間にたくさんの糖をとったときも、夜間低血糖になりやすいです。
低血糖のとき、からだのなかで起こっていること
低血糖になると、体は危険を感じ、アドレナリン、ノルアドレナリンを分泌して、血糖を上げようとします。
アドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されると、からだは緊張し力が入ります。
夜寝ている間であれば、食いしばったり、歯ぎしりしたりしているかもしれませんし、
翌朝、寝違えて首が回らなくなったり、肩こり、腰痛を感じるかもしれません。
また、寝ている間に動悸を感じて目が覚めるひともいるでしょう。
夜間低血糖の場合、ご自身は寝ているので、自覚することはできませんが、
朝起きたとき、寝違えて首が痛い、肩こり、腰痛のある人は、低血糖の可能性が高いです。
また、朝起きたとき、手がしびれていると言われる方もいらっしゃいます。
これは、夜間、手を握り締めていることで起こる場合があります。
低血糖予防のための補食
疲れやすい方、副腎疲労の方、そのほか、おなかがすくとイライラする、不安になるなどの症状のある方は、低血糖の可能性があります。
そのようなかたには、日中、低血糖を防ぐための補食をおすすめしています。
食後2時間もすると、食事による血糖は減少してしまいますので、
食後2時間くらいしたら補食をとるとよいでしょう。
そのほか、一日のうち、最も血糖が下がりやすい午後4時くらいにとるのもおすすめです。
ポイントはおなかがすく前に取ることです。
スープやお味噌汁、おにぎり、はちみつなどを、適宜、とりましょう。
上手に補食をとって、日中の血糖値が正常範囲内に入ると、疲労感を感じなくなってきます。
さらによいことに、日中の血糖値が穏やかになると、夜間低血糖もなくなります。
日中の血糖コントロールは、夜の低血糖対策のため、ひいては翌朝、気持ちよく起きるためにも大切です。
補食におすすめのもの
補食におすすめしているのは、スープやお味噌汁、おにぎりなどのほか、
はちみつ、葛湯、ゆで卵、はんぺん、さつま揚げ、ちくわ、
焼き芋、黒豆などの煮豆、ナッツ、バナナなどのフルーツです。
ちくわ、などの練り製品は、購入する際、添加物に気を付けて選ぶとよいでしょう。
避けたい食べ物
避けてほしいのは、ファーストフードやスナック菓子、洋菓子です。
精製された白砂糖を使用した食品も避けてください。
また、野菜や果物のジュースもおすすめできません。
コーヒー、緑茶などのカフェインの多い飲み物も取らないようにします。
パンやパスタ、うどんなどの小麦粉製品もとらないようにします。
補食におすすめ、はちみつの選び方
はちみつは、糖分のほかミネラルや酵素を豊富に含むことから、補食としてお勧めです。
ただし、一般に市販されているもののなかには、砂糖などを加えたはちみつも販売されており、注意して選ぶ必要があります。
加糖はちみつでは、低血糖を防ぐどころか、急激な高血糖を引き起こし、補食としてとった意味がありません。
また、加熱すると成分中の酵素が失われたり、発酵が止まるため、非加熱のものがおすすめです。
さらに、無農薬の畑のそばで採取されたものがいいでしょう。
できれば、信頼できる養蜂場、養蜂家や農家から直接購入するのがおすすめです。
補食におすすめ、葛湯のつくりかた
葛湯とは、葛粉をお湯でといたとろみのある飲み物です。
とろみがあるために冷めにくく、体が温まりますし、消化にも良いため、昔から離乳食や、風邪の引き始め、病後の療養食として用いられてきました。
葛粉は本葛100%を選びましょう。
葛粉の中には、馬鈴薯でんぷんを含むものも販売されています。
葛粉大さじ1杯を少量のお湯でといたのち、200-300mlのお湯を注いでかき混ぜます。
可能でしたら、お鍋で加熱しながら透明になるまでかきまぜます。
すりおろしたショウガやレモン汁、はちみつを加えてもいいですし、
お出汁やスープを注いでもいいですね。
パニック障害と機能性低血糖
不安でたまらない、パニックに陥る、気持ちが落ち込むなどの症状は、血糖値の急激な変化によることがあります。
血糖値が下がるとき、アドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されることで、精神的に不安定になり、感情も揺さぶられます。
血糖の変動を少なくして、血糖のコントロールを行うことで、感情の浮き沈みがなくなり、穏やかになります。
血糖のコントロールだけで、パニック発作がなくなることがあるのはこのためです。
パニック障害やうつなど精神症状のある場合は、感情面からのアプローチに加えて、血糖のコントロールなど栄養療法もともに行うことで、安定しやすくなるでしょう。
また、ストレス状態が続くと、低血糖を引き起こしやすくなりますので、ストレスの緩和、回避も必要です。