空き家発生防止に行動経済学を応用しよう~住まいの終活を考えるシリーズ⑩~
(はじめに)
空き家の発生抑制や利活用の促進、適切な維持管理をより推進するために、空き家対策特別措置法の一部を改正する法案が閣議決定されました。また、京都市では、空き家新税(非居住住宅利活用促進税)の導入に向けた取組みが行われるなど、政策面の環境整備が進んでいます。
そこで今回は、空き家を利活用する際の留意点を考えてみます。
(留意点①:検討の流れ)
「木を見て森を見ず」を避けるためにも、まず始めに保有している自宅を含めた全資産の棚卸しを行い、ポートフォリオから資産の見える化をして下さい。そうすることで、売却した方が良いか、賃貸がいいかなど、利活用の検討に役立てることができます。例えば、その結果、土地の一部を売却する方が望ましいという結論になるかもしれません。
(留意点②:資金収支と法令チェック)
空き家を居宅以外に利活用する場合、資金収支と法令上の制限を確認して下さい。具体には、必要資金はいくらで自己資金か借入金の割合、投資の回収期間といった資金計画や、賃料はいくら取れて、ランニングコストはいくらという収支計画を作成し、お金の流れが見えるようにしておくことをお勧めします。
また、都市計画法上、計画している用途が禁止されていることがあります。市街化区域には13種類の用途地域がありますが、計画する用途が建築可能かどうかを調べて下さい。特に、市街化調整区域にあると原則、用途変更は認められないため、細心の注意が必要です。
(留意点③:空き家を賃貸する場合)
賃貸の方法の一つにサブリース方式があります。サブリース業者が空き家を一括借上げして、実際に空き家を利用する者に転貸する方式です。
空き家の所有者にとっては、借上げ期間中は空室リスク・滞納リスクを回避でき一定の家賃保証があり、管理業務も委託しているため一義的には入居者トラブルの当事者にはならないなどのメリットがあります。その一方で、サブリース業者に手数料を支払う為、家賃収入を最大化できない、入居者を選べない、更に契約内容の変更(保証家賃や保証期間)や業者の倒産といったリスクがあります。
そして、賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約があります。普通借家は、一度貸し出すと、貸主に正当事由がなければ契約は法定更新されるため、貸主の事情で明け渡して貰うのは簡単にはいきません。一方の定期借家は、契約で定めた期間が満了すれば、更新されることなく確定的に賃貸借契約が終了し、明渡しを受けることができます。定期借家の家賃は、普通借家よりも一般的に安くなりますが、明渡しの容易さを考慮すれば、検討に値すると思います。
(留意点④:建物の解体)
建物を解体し更地にして利活用するケースもありますが、この場合は次のような点を確認して、思わぬ損失を被らないように注意して下さい。
・固定資産税の住宅用地特例が適用除外となり増税になることがあります。
・既存不適格の建物で再建築できなくなることがあります。
・建物が共有の場合、解体には共有者全員の合意が必要となります。
・長屋(連棟建物)の一部を取り壊す場合、耐震性が低下したり、接道要件を満たさなくなったり、隣接建物の所有者の承諾や修復費用が必要になります。
(留意点⑤:補助金の活用)
自治体によっては空き家の利活用への補助金制度があり、対象要件を満たせば、活用の検討をお勧めします。
例えば、大阪市には、空家の劣化状況等を確認する調査や住宅性能向上に資する改修に対する補助があり、また神戸市では、空家を地域利用するための改修工事費等に対する補助制度があります。
(まとめ)
これら以外にも、国や自治体等から所有者への空き家の流通や活用の働きかけや、相談窓口の設置の促進、更には活用希望者の判断に資する情報提供の充実に取り組んでいます。
利活用には一定の事業リスクを伴うこともあるため、所有者が利活用に躊躇することも少なくないと思われます。そのような場合には、信頼できる相談先が身近にあれば安心できます。なお、住まいの消費者教育研究所でも、セカンドオピニオンとして空き家所有者の方のご相談に応じています。
以上