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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

空き家はなぜ増え続けるのか。

2021年5月3日

テーマ:住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 相続税まちづくり空き家対策

「住宅・土地統計調査(2018年)」によると、全国の住宅総数約6,240万戸に対して総世帯数約5,400万戸となり、差し引き約820万戸余りが空き家になります。なぜ多くの空き家が発生するのでしょうか。その要因を改めて考えてみます。

1.新築住宅の大量供給
新設住宅着工戸数が平成21年度に年間100万戸を下回ったものの、直近でも80万戸前後が毎年供給され続けています。その一方、2014年~2018年の5年間における建物の滅失登記戸数は建築着工戸数を約100万戸も下回っています(NPO法人空家・空地管理センター資料)。人口や世帯数が減少するなかで住宅の在庫が増え続けているのが現実です。

2.自宅を所有する単身高齢者の増加
1980年から2020年の40年の間に日本の人口が約970万人減少したのに対し、単身高齢者の数は男性が約225万人、女性は約390万人増加しています。また持ち家率は高齢者以外の世帯の約46%に対し、高齢者世帯は約82%と多くの世帯が自宅を所有しています。自宅を所有する単身高齢者が多いことは、更に空き家が多く発生することが予測されます。

3.認知症による資産凍結
2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になり、同じく約5人に1人が認知症予備軍になると言われています。成年後見人がいなければ本人の資産は凍結されます。不動産も例外ではありません。そうなれば自宅の売却や相続対策、遺産分割協議ができずに放置され、空き家の発生ますます懸念されます。

4.家族の変化
高度成長期以降、核家族化が進み家族関係も変化し都市部と地方に親子や兄弟姉妹が離れて暮らすケースが増え、家族関係が疎遠になっています。その結果、遺産分割が不調に終わり、数次相続のため共有者が増え自宅や実家の取り扱いに関する意思決定が困難になり、空き家が増加しているという側面は否めません。

5.活用の難しさ
空き家になるような住宅は、そもそも利用価値が低く活用が難しいいう課題を抱えているケースが少なくありません。例えば市街化調整区域に立地しているとか、接道条件が悪いなどの法令上の制限が活用のネックになっています。そのため行政等への寄付も難しく、空き家として放置されてしまう現実があります。

6.費用負担の回避
空き家を活用しようとすれば当然に費用が発生します。空き家を解体するには解体費用が必要で、さりとて更地のまま放置すれば固定資産税の住宅用地特例が適用されません。また相続登記をするにも司法書士への手数料や登録免許税などの負担が生じます。そうすると費用負担を回避するため空き家のまま放置する、という事態が生じかねません。

凡そ空き家の発生や増加する原因はこのようなものだと考えられます。

それでは、住まいの終活(住活)をすることで空き家の発生を抑制できるのか、またどのようなメリットがもたらされるのか、などについて次回は考えてみます。

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