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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

空き家対策と固定資産税~神戸市の取り組み~

2020年11月23日 公開 / 2021年2月18日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 相続税エンディングノート都市計画

土地や建物を所有者には「固定資産税」、地域によっては「都市計画税」が課税されます。これらの税金は、市町村が決める不動産価値である「課税標準」に基づいて税額が決まり、1月1日時点の所有者へ納税通知が届きます。空き家であっても所有者に納税義務があります。

税額がどのくらいになるかを試算してみます。
【事例】
・200㎡の土地に戸建1件ある場合の固定資産税
課税標準額 (土地)2,000万円 (建物)600万円 
・更地の場合 土地2,000万円×1.4% =28万円
・住宅用地の場合 2,000万円/300平米×200平米×1/6×1.4%+2,000万円/300平米×100平米×1/3×1.4% = 約6万2千円
住宅用地であれば、200㎡までは課税標準が1/6、200㎡を超える部分は1/3に軽減される特例があります。その結果、上記事例では税額が約8割近くも減額されます。「住宅用地の特例」が適用される条件は「住宅が建っていること」。つまり、空き家を解体してしまうと適用されなくなり税金が高くなります。反対に空き家であっても解体しない限り特例が適用されます。

「住宅用地の特例」は、平成26年度までは全ての住宅に適用されていましたが、平成27年度からは、特定空き家等への適用が廃止になりました。平成27年度の「税制改正大綱」で、「空き家等対策の推進に関する特別措置法に基づく必要な措置の勧告対象となった特定空き家等に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から除外する」と決定されました。その結果、適正な管理が行われていない特定空き家に対しては、固定資産税等が大幅に増税されることとなります。

また神戸市では、増加を続ける空き家対策として、来年度から特定空き家以外に利活用の見込みがなく老朽化が進んだ一定の空き家を対象に、固定資産税の税制優遇を順次廃止する方針を固めたようです。空き家に伴う防犯・防災面の課題に対応するとともに、土地や建物の利活用にも繋げたい狙いが神戸市にはあります。

空き家対策特別措置法では、放置すれば倒壊の恐れや、景観を損っている空き家を市町村が「特定空き家」に指定したうえで、所有者への助言・指導に加え、税制優遇の停止も認めています。ところが所有権を大幅に制限する特定空き家に指定するハードルは低くありません。同法の基準では特定空き家に準ずる空き家への打ち手が欠けています。その意味で神戸市の取り組みは注目すべきであり、全国の自治体へも影響すると思われます。

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