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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

所有者が不明な土地が増加する高齢社会

2020年10月10日

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 財産分与まちづくり相続 手続き

高齢社会は多死社会でもあります。そのため相続機会が増加するなかで、所有者不明土地が増加の一途をたどることが予測されます。所有者不明土地とは、不動産登記簿等の公簿情報で調査してもなお所有者が判明しない、又は判明しても連絡がつかない土地を指します。所有者不明土地の面積は2016年時点で全国に410ha、2040年には720haに及ぶと推計されています(所有者不明土地問題研究会最終報告2018)。九州が368ha 北海道が835haという面積を考えれば、如何に所有者不明土地が広大か想像できます。

なぜ所有者不明な土地が発生するのでしょうか。
一つ目の理由は、高齢者世帯は他の年代に比べて持ち家率が高く、そして単身高齢者が増加するなかで、相続人がいない土地、相続されない土地が増加しているということです。
二つ目の理由は、高度経済成長時の地方から都市部への人口移動を背景とした、地方に残した土地に対する所有意識の希薄化が考えられます。そのため土地が利用されない、相続登記がされないということが発生しやすくなります。 
三つ目の理由は、人口減少や高齢化に伴い土地利用に対するニーズの絶対量そのものが低下していることが挙げることができます。

所有者不明土地が今後増加していけば、「不動産」が「負動産」になって様々な負の影響が予想されます。例えば、草木の繁茂、害虫の発生、土地の荒廃、境界の不明化、景観上の阻害、防犯上の懸念、不法投棄、災害の発生要因などに加え、災害復旧や震災復興といった公共事業の進捗にも障害が及んできます。

このような背景のもと、2015年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が全面施行されました。同法によって、①倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態、②著しく衛生上有害となる恐れのある状態、③適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態、④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空き家を「特定空家等」に指定し、必要な措置の実施のための立ち入り調査や指導→勧告→命令→代執行の措置が採れるようになりました。

所有者不明土地が増加する社会では、私的な世界だけでなく、公的な領域でも多くのコストが発生します。住まいの終活をすることで、少しでも無駄なコストを減らす必要があります。

この記事を書いたプロ

菊池浩史

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