日本のコーチングの現状<No.10> セッションでコーチは何をみているのか(1)
前回のコラムで、部下一人ひとりの成功体験を聴くことをお勧めしました。では、どんな質問をすればいいのでしょうか?
まず聞く態度です。自分の価値観を横に置く。これはなかなか難しいです。というのは、自分が普通と思っていることが実は相手にとっては普通ではないことがあるからです。ですから、相手の話を聞くときに、「変だな?」とか「違うぞ」と思っても決して評価せず「この人にとっては普通なんだ」と思って聞く。そうするとその人が価値を置いている考え方が見えてくることがあります。「○○さんは、そうなんですね」と認めてあげる。相手は、評価せず批判せずに聞いてもらっているだけで安心感があります。
そして相手の感情を理解する。楽しかった、つらかった、頑張って乗り越えたなどです。あくまでも相手がそういう感情になったことを認めてあげる。年上の部下の場合で質問を作ってみました。この順に質問を投げかけてください。
「今まで多くのご苦労をされてきたと思いますが、あなたの実感でいいので、“やり遂げた”とか充実感があったお仕事ってどんなことですか?」
「それを取組まれた動機はなんですか?」
「そこで工夫したことは?」
「楽しかったことは何ですか?」
「大変だったことはどんなことですか?」
「それは何があったから頑張れたのでしょう?」
「その体験には、どういった方々が関わっていましたか?」
「それをやり始めるとき、やっている最中、やり終えたときの感情の変化について教えてください。」
「振り返ってみて、成功要因は何だったでしょう?」
話の中からその時代特有の苦労だとか、培った技術とかが聞こえてきます。そこを「もう時代遅れ」などとは思わず、しっかり承認してください。相手の「強み」や「大切にしているもの」、「能力」なども聞こえてきます。そのなかで自分のチームで活用できる能力を認め、それを活かす場面を作ってあげましょう。例えば、「ある業務に精通している」、「説明がうまい」なら後輩指導、「交渉力」なら自分が困難と思っている得意先の交渉をお願いするなどです。そこから信頼関係は徐々に生まれてきます。