日本のゴルフ場で「1ホール2グリーン」が必要だった理由
今から80年以上も前の満州事変が始まった1931年(昭和6年)、目黒書店から発行された著者白石 多士良さんの「正しいゴルフ」という本を国立国会図書館のデジタルコレクションで見つけました。
国立国会図書館のデジタルコレクションとは、国立国会図書館に所蔵されている書物をインターネットで自由に閲覧することができるサービスです。
昭和6年発行「正しいゴルフ」にある「ゴルフの服装」とは
この「正しいゴルフ」の中で、「ゴルフの服装」という項があります。以下にこの項の全文を掲載します。
興味深い内容で、昔も現代と同じように機能性を重視して服装が変遷していったことが書かれています。
「国際競技でアメリカ人が上着を脱いで、半ズボンをはいて勝ち続けた」とあります。当時から「半ズボン」がはかれていたことは意外でした。
ぜひご一読いただきたいと思います。
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◎ゴルフの服装
ゴルフの服装と云えば所謂(いわゆる)ゴルフスーツと云われる軽快なる半ズボンとニッカボッカでそれにハデなネクタイを付けなければならぬ様に思われるが、之にも色々面白い歴史がある。
半ズボンにセーター1枚でゴルフをやりだしたのは亜米利加(アメリカ)人である。ゴルフの本家である英国人は長ズボンでゴルフコースに出ても、決して上着を脱がずにプレーをして居たものである。
ところが亜米利加人は、何でも新しい事を試みるので、長ズボンよりも半ズボンの方がゴルフの運動に都合よく、上着はゴルフスイングに邪魔であると云う所から、構わず新しい服装で英吉利(イギリス)に乗り込んだのである。そうして遂に国際競技で亜米利加が勝ち続けたので、英国人も長年脱がなかった上着を脱ぎ、長いズボンを半ズボンに履き替えるようになったのである。
ゴルフの服装にもこう云う歴史があるので、何もゴルフをするからハデな服装をしなければならぬという理屈はない。ただ運動に便宜な服装であれば宜いのである。
勿論忙しい仕事を忘れて、清遊する為に出掛けるのであるから、綺麗な芝生、心持のよいクラブハウスに合うような明るい服装をして、その周囲にあうようにするのは洵(まこと)に愉快なものである。しかしゴルフをやる時には必ず半ズボンでなければならぬと云う理由は以上の歴史から推してもないのである。
理想として、運動に自由のきく楽な服装が宜い。お互いに遊びに行くのであるから人に不快な感を起こさない程度に清楚なものであることは必要である。
但しトーナメントはよほどの暴風雨でなければ中止しないから常に雨具の用意を要する。
その為にゴム布で作ったズボンや上着を用意する必要もある。
しかし或人はゴム布の上着は中がムレて不愉快だから普通の服装でプレーして、そのかわり後で風邪を引かぬように着替えを全部用意する人もある。
また冬はレザーのコートを着る人もあるがしかし初心者はゴルフを始められる時は何もそれまで初めから用意する必要はない。だんだん技術が進めば雨も風も厭わず(いとわず)にやりだす時が必ず来る。その時に次第にこれらの服装が揃えば宜しいのである。
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以上です。
「周囲に不快な思いをさせない服装」というエチケットは昔も同じ
「理想として、運動に自由のきく楽な服装が宜い。お互いに遊びに行くのであるから人に不快な感を起こさない程度に清楚なものであることは必要である。」
この一文は現代のも通じるところです。「機能性を重視しつつ、周囲の人に不快な思いをさせない服装をしましょう。それがゴルフのエチケットです。」ということですね。
レインウェアも今ほど高機能ではないので、梅雨や夏などは蒸し暑くて、ゴルフどころではなかったのでしょうね。こういうところから、ゴルフ場のロッカーで着替えるという習慣が根付いていったのかもしれません。
面白いのは、初心者に厳しいというか、反対に優しいというかよく分からない独特の表現方法。とりあえず天気のいい日にゴルフを学べ。上手くなればゴルフが楽しくて雨風も気にせずゴルフがしたくなる、そうなってから服装も揃えなさいというところでしょうか。
■参考文献
「正しいゴルフ」目黒書店:白石多士良著
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