日本のものづくり産業の再生策
米国の雑誌「ワイアード」編集長のクリス・アンダーソン氏の最新作「MAKERS」を読みました。
副題に、21世紀の産業革命が始まる、とか、製造業の未来がここにある!とか唱っているので、読まないわけにはいきません。
実は、この本、夏の終わりに、仕事の訪問先の近くの書店で偶然見つけたもので、何となくSNS等で話題になっていたことを覚えていて衝動買いしたものです。
と、いうわけで、しばらくつんどく状態でしたが、最近、まとまった時間が取れるようになったので、読み始めました。読んでみると、これは面白い。さすが、ジャーナリストの本だけあって読者を楽しませますが、それ以上に、本質を突いた着眼点があり、一気に読了してしまいました。
何がそんなに魅力的であったか。それは、従来の製造業の未来論というのは、いわゆる部品加工、組立産業の大企業を中心としたピラミッド型に基礎をおき、かつ従来の匠を宝とする中小企業論が常であったのですが、この本は、ITCの世界で起きたデジタル革命が、製造業の実際のものつくりにまで波及し、それが産業構造を変えていく、との視点を見せてくれたからです。
つまり、未来の製造業の将来像として、個人レベルでの設計、製造、商品化力が、インターネットやデジタル技術革命で、飛躍的にアップし、それゆえ、世界を相手に、大企業に頼らずに、自分の製品を全世界にリリースする事が可能になったとしています。
これは、ある種、非常に斬新なアイデアで、かつ、非常に現実味を帯びた指摘です。すでに、例えばLED照明器具の世界では、一人企業が現れ、設計、製造(もちろん外部委託ですが)、販売をしているところが出てきています。今や、いいアイデアがあれば、それを現実のものとして受託生産してくれるところは、世界を探せばいくらでもあり、なおかつ、数人のメンバーで、商品の試作を請け負うことも可能になってきました。
これは、本当に、従来型の製造業に対する破壊的イノベーションになりうると思います。製造業が衰退したといわれるアメリカにおいて、このような新しい考え方による製造業が再構築されれば、日本の製造業はますます苦境に立たされるのではないでしょうか。そういう意味でも、日本においても、早く過去の成功体験を断ち切り、新しい発想で前に進むことが必要だと思います。