沖縄の不動産、しばらく見に行けていない方へ

※この記事は実際の不動産売買案件をもとにしていますが、プライバシー保護のため、個人や物件が特定されないよう、所在地や金額、物件条件、取引の経緯など一部の内容を変更・省略しています。また、将来の活用方法や収益については、調査に基づく可能性や試算であり、実現を保証するものではありません。
【売れない収益物件について相談を受けました】
少し前に、以前からお付き合いのある不動産オーナーから、沖縄本島に所有している収益物件の売却についてご相談をいただきました。すでに別の不動産会社が販売活動を行っていたのですが、なかなか買主が見つからず、当社にも販売を手伝ってほしいというお話でした。
物件は米軍関係者に賃貸している、いわゆる外人住宅で、現在も入居者がいるオーナーチェンジ物件です。毎月一定の賃料収入があり、当初の売出価格は4,000万円台でしたが、周辺の類似物件と比較すると、相場より1割程度高いのではないかという印象を持ちました。
また、現在の賃料に対する表面利回りは5%程度でしたので、購入を検討する投資家にとって、それほど魅力的な条件ではないだろうと感じていましたし、実際、これまで一定期間販売していたにもかかわらず、具体的な問い合わせはほとんど入っていませんでした。
不動産の売却では、希望する価格で買主が現れないことは珍しくありませんが、今回の物件については、売出価格と収益性の両面で、買主が購入を判断するには難しい条件になっているのではないかと思いました。
そこで、まずは価格を下げる前に、この物件が持っている魅力や特徴を改めて調べ直すことにしました。
【売主が売りたい価格と、買主が買いたい価格の違い】
最初に確認したのは、これまでの募集期間や問い合わせの実績、周辺で販売されている収益物件の価格や利回りでした。収益物件の場合、土地や建物の広さ、築年数だけで比較できるわけではなく、投資家は購入価格に対してどの程度の賃料収入が得られるのか、その後にどのような費用が発生するのかという点も考えています。
実際に調べてみると、同じような価格帯で募集されている収益物件が複数あり、その中には今回の物件より表面利回りが高いものもありましたので、購入希望者が複数の物件を比較した場合、現在の賃料収入だけで判断すれば、ほかの物件の方が魅力的に見えてしまう可能性があります。
ここで改めて感じたのは、売主が考える不動産の価格と、買主が投資対象として評価する価格は必ずしも一致しないということです。売主にとっては長年所有してきた不動産であり、土地や建物そのものにも価値がありますし、現在も賃料収入を得られているという実績がありますが、一方の買主は、同じ金額を支払うなら、ほかにどのような物件を選べるのかという比較をしています。
売主は自分が所有している不動産を見ていますが、買主は市場にある複数の投資先の一つとして見ていますので、売主が売りたいと考える価格と、市場で買主に受け入れられる価格には、どうしても違いが生まれることがあります。私自身は、市場で適正と評価される価格で売り出されている物件であれば、通常は6か月以内に買主が見つかり、引渡しまで進むものだと考えていますので、一定期間販売しても問い合わせがほとんどないのであれば、価格や販売条件を改めて検証する必要があると思います。ただ、ここで価格を下げるだけでは、今回の物件が持っている価値を十分に伝えられないのではないかという思いもありました。
【現在の賃料だけでは見えなかった、もう一つの価値】
当社では、お客様が所有する不動産の資産価値を最大化することを、大切なミッションの一つと考えています。今回の物件についても、現在の賃料収入や売却価格だけで価値を判断するのではなく、ほかに資産価値を高められる方法がないだろうかと考え、さまざまな活用方法を調べ始めました。
例えば、米軍関係者向けの賃貸住宅だけでなく、一般住宅としての賃貸、飲食店などの店舗利用、デイサービスやグループホームといった福祉施設への転用、宿泊施設としての活用などです。ただ、用途を変えれば必ず収益が増えるわけではありませんし、立地や建物の構造、法令上の制限、改修費用、事業者からの需要なども考える必要があります。
こうした活用方法を考える際、私が意識しているのは、誰がこの建物を必要としているのか、そして、その人にとってどのような価値があるのかということです。一般住宅としては賃料が高いと感じられる建物でも、社員寮や福祉施設として利用する事業者であれば、部屋数や広さに価値を感じる場合がありますし、宿泊事業者であれば、観光地へのアクセスや駐車場、周辺環境などを違った視点から評価することもあります。
そうした中で、今回の物件について特に可能性を感じたのが、宿泊施設としての活用でした。
私は普段、不動産の売買仲介だけでなく、沖縄県内で民泊や宿泊施設の運営、宿泊事業に関する相談にも関わっていますので、地域ごとの宿泊需要や宿泊料金、建物の賃料について考える機会があります。今回も、そうした情報と物件の立地や建物の特徴を照らし合わせる中で、現在の外人住宅としての賃料収入だけでは、この不動産の可能性を十分に評価できていないのではないかと感じました。
そこで、現在の賃貸借契約が終了した後の活用方法として、まず考えたのが、購入した買主自身が宿泊事業(民泊)を経営する方法です。稼働率や宿泊単価によっては賃貸以上の収益を得られる可能性がありますし、予約が入っていない期間には、所有者自身やご家族が沖縄での滞在に利用できるというメリットもあります。ただし、清掃費や予約サイトの手数料、光熱費などの経費が発生し、売上も変動しますので、運営負担やリスクを含めて判断する必要があります。
一方、現在と同じように利回り、つまり賃料収入を重視するのであれば、民泊事業を行いたい事業者へ建物を賃貸する方法も考えられます。買主自身が宿泊施設を運営する必要はなく、事業者から毎月一定の賃料収入を得る方法ですが、沖縄の民泊市場や周辺地域の宿泊需要を踏まえると、今回の物件については、現在の外人住宅としての賃料よりも高い金額で貸せる可能性が高いのではないかと考えました。もちろん、実際にその条件で借りてくれる事業者が見つかるかどうかは別ですが、収益物件としての評価を変える可能性があります。
ただし、いずれも現在の賃貸借契約が終了した後の話ですし、宿泊事業として利用するためには、法令上の要件や許認可、消防設備、建物の状態、改修費用などを確認する必要があります。想定した収益が得られる保証もありませんので、現在の賃料収入と将来の試算を同じように評価することはできません。
それでも、同じ土地と建物であっても、誰がどのような目的で利用するのかによって、収益の考え方も不動産に対する評価も変わってきます。建物自体は何も変わっていませんが、現在の使い方にとらわれず、さまざまな可能性を検討することで、これまで見えていなかった価値が見つかることもあるのだと、今回の案件を通じて改めて感じました。
【不動産の価値を、買主にとっての魅力に変える】
さまざまな活用方法を調べる中で、今回の物件には現在の賃料収入だけでは評価しきれない可能性があると感じましたが、それだけで買主が現れるわけではありません。購入を検討する方にとっては、その可能性がどの程度現実的なのか、購入後にどのような費用やリスクがあるのか、そして、その価格で購入する価値があるのかということが重要になります。
そこで、現在の外人住宅としての収益性に加え、将来の宿泊事業への活用可能性も整理し、購入希望者に説明できるようにしました。現在の賃貸借契約が続く間は賃料収入を得ながら、将来契約が終了した際には、自ら民泊を経営することや、宿泊事業者へ賃貸することも検討できるという考え方ですが、実際に活用できるかどうかは法令や建物の状態などによりますので、現在の収益と将来の可能性は区別して伝える必要があります。
一方、売主に対しては、周辺の売出物件や利回り、これまでの問い合わせ状況などを踏まえ、販売価格について改めて相談しました。売主としてはできるだけ高く売却したいという思いがありますが、買主はほかの収益物件と比較していますので、将来の活用可能性があるからといって、割高な価格でも購入してくれるとは限りません。
また、売主がいつまでに売却したいと考えているのかによっても販売方法は変わってきます。希望価格を維持して買主を待つ方法もありますが、今回のように問い合わせがほとんどない状況が続いているのであれば、そのまま待つことが売主にとって最善なのかを考える必要がありますので、売主と相談しながら販売価格を見直し、改めて販売活動を進めることになりました。
私が今回考えたのは、単純に価格を下げて買主を探すことではなく、この不動産が持っている価値をできるだけ掘り起こしたうえで、その価値を買主に伝え、市場で購入を検討してもらえる価格に整えることでした。不動産の価値を高く評価することと、高い価格で売り出すことは必ずしも同じではありませんし、売主が納得できる価格と、買主が購入したいと思える条件の両方を考える必要があるのだと思います。
【売主と買主、それぞれが納得できる条件を探す】
その後、今回の物件を具体的に購入したいという方が現れました。購入希望者は、これから不動産投資を始めたいと考えている方で、当初は借入を中心に購入資金を準備したいという希望がありましたが、金融機関への相談を進める中で、希望していた金額の融資を受けることは難しく、一定の自己資金が必要になることが分かってきました。
融資については前回のコラムでも取り上げましたので詳しくは触れませんが、買主が物件の価値を理解し、購入したいと考えていても、金融機関の融資条件によって購入できる価格が変わってくるという事情がありました。
さらに、今回は賃借人が入居しているオーナーチェンジ物件ですので、買主が建物内部を十分に確認できないという問題もありました。購入後に設備の不具合や修繕が必要な箇所が見つかれば、想定していなかった費用が発生する可能性がありますし、将来の宿泊事業への活用を考えるのであれば、建物の状態によって必要な改修費用も変わってきます。
買主にとっては、現在の賃料収入や将来の活用可能性に魅力を感じる一方で、購入資金や建物の状態に不安があるという状況でした。一方、売主としては、できるだけ早く売却したいという希望がありましたので、双方が納得できる価格と契約条件を探ることになりました。
今回、私が意識したのは、価格だけで交渉するのではなく、買主が何を不安に感じているのか、売主がどこまでの条件であれば応じられるのかを整理することでした。買主が価格の調整を求める背景には、融資の問題だけでなく、購入後に発生するかもしれない修繕費用への不安もありますし、売主が価格を譲歩するのであれば、その分、引渡しや売却後の責任について一定の条件を求めることも考えられます。
そこで、売買価格について調整する一方で、境界の現地明示や確認を行わないこと、建物内部や設備に十分確認できていない部分があること、契約不適合責任について一定の免責条件を設けることなどを整理しました。もちろん、売主が知りながら買主に告げなかった事実まで免責されるものではありませんし、契約条件を定めたからといって、建物に不具合がないことが確認できたわけでもありません。
それでも、買主が引き受けるリスクと、売主が譲歩する価格や条件を一つずつ整理し、それぞれが何に合意しているのかを明確にすることで、最終的には売買契約の締結に至りました。
今回の売買を振り返ると、最初に行った市場調査や活用可能性の検討と、最後に行った価格や契約条件の交渉は、別々の仕事のようでいて、実際にはつながっていたのだと思います。不動産にどのような価値があるのかを理解していなければ、買主に購入する理由を説明することは難しいですし、買主が何を評価し、何を不安に感じているのかを理解していなければ、売主に適切な価格や条件を提案することも難しいからです。
【まとめ】
今回の案件は、長期間売れなかった収益物件について相談を受けたことから始まりました。最初に感じたのは、売出価格が周辺相場よりも高く、利回りも買主にとって魅力的とはいえないのではないかということでしたが、だからといって、価格を下げることだけが解決方法なのだろうかという思いもありました。
そこで、現在の使い方にとらわれず、さまざまな活用方法を検討したところ、将来、買主自身が民泊を経営する方法や、宿泊事業者へ賃貸する方法など、現在の賃料収入だけでは見えてこなかった可能性があることが分かりました。もちろん、将来の活用可能性があることと、実際に収益を得られることは別ですし、それだけで売却価格が高くなるわけでもありませんが、買主が現在の賃料収入だけで判断するのと、将来の活用方法についても理解したうえで判断するのとでは、評価が変わる場合があります。
今回、改めて感じたのは、不動産の価値は土地や建物そのものだけで決まるのではなく、誰がどのような目的で利用するのかによっても変わってくるということでした。売主は長年所有してきた不動産としての価値を見ていますし、買主はこれから投資する対象としての収益性やリスクを見ています。また、同じ建物であっても、住宅として借りる人と、宿泊事業を行う人では、魅力を感じる部分が違うこともあります。
そうした認識の違いを踏まえながら、現在の市場や収益性、将来の活用可能性を調べ、その不動産が持っている価値を買主に伝わる形に整えていくことが、売却を進めるうえでは大切なのだと思います。
売却を考えているオーナーにとっても、現在の賃料や周辺の売出価格だけで所有不動産の価値を判断するのではなく、ほかにどのような使い方が考えられるのか、一度違った角度から見直してみることで、これまで気づかなかった選択肢が見えてくるかもしれません。
―所有不動産の売却・資産活用についてご相談ください―
現在の賃料や周辺の相場だけでは、不動産が持つ価値を十分に評価できていないこともあります。
当社では、不動産売買と宿泊事業の両方に携わってきた経験を生かし、現在の市場価値だけでなく、将来の活用可能性も含めて、お客様の不動産にとって最善の売却方法を一緒に考えます。
売却を検討されている方はもちろん、すでに売り出しているものの、なかなか買主が見つからない方も、お気軽にご相談ください。
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