安くしか貸せない建物は、本当に安くしか貸せないのか

【「沖縄の投資物件を探している」という相談から始まりました】
先日、以前から付き合いのある友人から、「知り合いが沖縄の不動産で利益を上げたいと考えているので、相談に乗ってもらえないか」という連絡がありました。最初に聞いていたのはそれくらいで、その後のやり取りで、県外にお住まいのご夫婦で、沖縄には年に2、3回ダイビングで来られていること、購入予算は約1億円で現金購入を考えていることなどが分かってきました。
ただ、今回は最初から物件を紹介するつもりはありませんでした。初回のZoomでは、すぐに物件を決めることを目的にせず、まず「沖縄でどのような不動産を持ちたいのか」を整理するために、事前にヒアリングシートを作り、それに沿ってお話を聞くことにしました。
予算や希望エリアを決めて、その条件に合う物件を10件、15件と見ていけば、自分に合った物件が見つかりそうに思います。ただ、実際に物件を見始めると、「こちらはいくら」「こちらの利回りは何%」「この金額を出すなら、こちらの方が得ではないか」という比較が始まりやすくなります。比較すること自体が悪いわけではありませんが、その前に「なぜ沖縄の不動産を買いたいのか」「購入した後にどう使いたいのか」が整理されていないと、物件を見るたびに判断基準が変わってしまい、結果として自分が本当に希望していた物件が何だったのか分からなくなることがあります。
例えば、同じ5,000万円の物件でも、将来の売却しやすさを一番重視する人と、沖縄に来た時に自分たちで過ごすことを一番重視する人では、その物件に対する評価は変わります。収益性を優先する人なら、さらに別の見方になります。つまり、予算やエリアだけを先に決めても、それだけでは「自分にとって良い物件」を選ぶ基準にはならないのだと思います。
そのため、物件を探し始める前に、まず「沖縄の不動産を購入しようと思った理由や目的」「何を一番重視するのか」「購入した不動産をどのように使いたいのか」「どのくらいの期間所有するのか」を整理してみる。この4つがある程度見えてから、予算やエリア、購入時期といった具体的な条件に入っていく方が、物件を見た時にも「自分たちの目的に合っているか」という基準で判断しやすくなり、結果として希望する物件にも近づきやすくなるのではないかと思います。
【予算1億円でも、1億円の物件を探しているとは限らない】
40分ほどお話をしていくと、最初に聞いていた「沖縄の投資物件を探している」という言葉だけでは分からなかったことが、少しずつ見えてきました。
初対面のご主人からは、投資期間として10年程度という話が出ましたので、失礼ながら年齢を伺うと、ご夫婦は60代前半とのことでした。一方で、条件によっては購入後すぐに売却してもよいという話もあり、さらに、これまで聞いていなかったご友人が一緒に投資する可能性もあることが分かりました。ご夫婦の間でも、まだ具体的な方向性について十分に話し合っていたわけではないようでした。
私が話を聞いた印象では、ご主人は今ある資産を有効に使い、将来的にご家族へ残すことも含めて、できれば資産を増やしていきたいという意識が強いように感じました。それと同時に、物件の立地や実際の使いやすさについてもかなり現実的に考えているようで、「そこはレンタカーを使わないといけないのか」といった質問もありました。
これはあくまで私の推測ですが、ご主人は沖縄に来るたびにレンタカーを借りて、慣れない土地を運転することまで考えているのかもしれません。沖縄は観光客のレンタカーも多く、米軍関係者の車も走っていますので、県外から来て運転することを負担に感じる方もいます。今は問題なくても、これから5年、10年と所有することを考えれば、物件そのものだけではなく、空港からどう移動するのか、滞在中に車が必要なのかということも、物件選びの条件になってくるのだと思います。
一方、奥様は少し違っていて、資産を増やすことだけではなく、沖縄に来た時に自分たちでも使えることに魅力を感じているようでした。旅館業が可能な物件などをお見せすると、「こういうのもいいかもしれない」という反応があり、そこで過ごす時間までイメージされているように見えました。同じご夫婦でも、ご主人は資産性や将来の売却、移動のしやすさなどを現実的に見ていて、奥様は沖縄で過ごす時間も含めて物件を見ているように感じました。
そして、もう一つ印象に残ったのが予算です。事前には約1億円と聞いていましたが、話の途中でご主人から「3,000万円くらいで買えるんですよね」という言葉が出ました。
正直なところ、私は「ああ、またこの感覚か」と思いました。県外のお客様と話をしていると、沖縄の不動産はまだかなり安く買えると思われていることがあります。ただ、現在の沖縄で3,000万円程度の予算から、立地、資産性、使い勝手まで含めて条件の良い物件を探そうとすると、選択肢はかなり限られてきます。
そこで今回の打ち合わせでは、現在の沖縄の不動産価格をイメージしていただくために、沖縄県の地価動向をまとめた資料も使いました。北谷町や恩納村だけではなく、那覇市、浦添市、宜野湾市、名護市などでも住宅地の地価は上昇しています。ただ、ここでお伝えしたかったのは「沖縄の地価が上がっているから買った方がいい」ということではありません。同じように地価が上昇しているエリアでも、那覇のように居住需要や売却時の流動性を見る場所と、北谷や恩納村のように観光需要やリゾート利用まで含めて考える場所では、物件を持つ意味が違ってくるからです。
ここで大切なのは、「予算はいくらですか」という一つの数字だけで物件を探し始めないことだと思います。今回であれば1億円は出せる上限であって、実際にはできるだけ余力を残したいのかもしれませんし、初めての投資だから最初から大きな金額を使いたくないのかもしれません。そう考えると、「予算1億円だから8,000万円から1億円の物件を探す」というだけでは、本当に希望している物件から逆に離れてしまう可能性があります。
予算という数字だけではなく、その金額をどのような考えで設定したのかまで整理してみる。今回のご相談を聞いていて、これも希望する物件に近づくためには大切なことなのだと思いました。
【物件を探す前に、整理しておきたい4つのこと】
今回のような相談をしていると、物件を探す前に整理しておいた方がよいことがあると感じます。それは、希望エリアや予算よりも少し前の話です。
まず、「なぜ沖縄の不動産を購入しようと思ったのか」です。資産を増やしたいのか、家賃収入を得たいのか、沖縄に自分たちの拠点を持ちたいのか、自分たちが遊びに来た時にも使いたいのか。同じ「沖縄の不動産を買いたい」という言葉でも、理由によって探す物件は変わります。
次に、「何を一番重視するのか」です。資産価値なのか、売却しやすさなのか、収益性なのか、自分たちでも利用できることなのか、あるいは管理に手間がかからないことなのか。もちろん全部満たせれば理想ですが、実際の物件選びでは、何かを優先すると別の何かを譲る場面が出てきます。その時に一番大切なものが決まっていないと、物件を見るたびに判断基準が変わってしまいます。
そして、「購入した不動産をどのように使いたいのか」と「どのくらいの期間所有するのか」です。自分たちだけで使うのか、長期賃貸するのか、民泊などで収益化するのかによっても物件は変わりますし、5年程度で売却する可能性があるのか、10年以上所有するつもりなのかによっても、購入時に見るべきところは変わってきます。
この4つをある程度整理した後で、初めて「では、どのエリアがいいのか」「予算はいくらにするのか」「いつ頃購入するのか」と具体的な条件に入っていく方が、自分たちの希望に合う物件を探しやすくなると思います。
【「良い物件があったら紹介してほしい」が難しい理由】
不動産の仕事をしていると、「良い物件があったら紹介してください」と言われることが多々あります。ただ、私はこの言葉を聞くと、少し困ります。
というのも、その人にとって何が「良い」のかが分からないからです。安ければ良いのか、値上がりが期待できれば良いのか、利回りが高ければ良いのか、海が見えれば良いのか、将来売りやすければ良いのか。それが分からないままでは、不動産会社側も何を選んで紹介すればよいのか判断できません。
今回のご夫婦にも、物件を10件、15件と並べるのではなく、那覇、北谷、恩納村という3つの方向から考えてもらうことにしました。那覇なら沖縄の拠点としての利便性や資産性、北谷なら沖縄で過ごす時間そのものの価値、恩納村などであれば自分たちでも使いながら、使わない期間を収益化するという考え方です。
同じ物件を比べるのではなく、まず違う「持ち方」を比べてもらう。そうすると、自分たちは何を求めているのかが少し見えてくるのではないかと思ったからです。
現時点で私が予想しているのは、ご主人は那覇に魅力を感じ、奥様は北谷に魅力を感じるのではないかということです。もちろん実際に物件を見てもらえば変わるかもしれませんし、最終的に今回は買わないという判断になっても構いません。今はまだ、物件を決める段階ではなく、自分たちが何を求めているのかを整理する段階だからです。
【まとめ】
これから沖縄で不動産を探そうとしている方は、最初から物件情報をたくさん集める前に、一度、購入する本人やご夫婦、ご家族で話をしてみてもよいと思います。
なぜ沖縄の不動産を買いたいのか。何を一番重視するのか。購入した後にどう使いたいのか。そして、どのくらいの期間所有するつもりなのか。この4つをある程度整理してから、エリア、予算、購入時期などの具体的な条件を考えていくと、「自分たちにとって良い物件とは何なのか」が以前より見えやすくなると思います。
物件を探していると、どうしても価格、広さ、築年数、利回りなど、比較しやすい数字に目が向きます。ただ、それらは物件を比較するための数字であって、自分たちがその不動産を買う理由そのものではありません。
たくさんの物件を見ることが、必ずしも希望する物件に近づくことではないのかもしれません。物件を探し始める前に、自分たちは何のために買うのかを整理する。その方が結果として、自分たちに合った物件を見つけやすくなるのではないかと、今回のご相談を通じて改めて感じています。
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