数字では測れない価値 ― ゲスト満足を極める運営哲学【5/5】

【台風13号で10件を超える相談が一気に入りました】
最近、台風の影響によるキャンセルと返金について考える機会が続きました。特に台風13号が沖縄へ接近した際には、当社が運営代行している宿泊施設だけでも10件を超える相談がありましたので、ゲストとのメッセージ、オーナーとの相談、Airbnbへの確認を繰り返しながら対応していたのですが、その中で少し気になったのが、同じ台風を見ているはずなのに、ゲストとオーナー、Airbnb、そして運営を代行する当社では、見ているものがかなり違うということでした。
ゲストから最初に届くメッセージは、「台風が来ていますがキャンセルできますか」というものから、「台風なので全額返金ですよね」というものまでさまざまでしたが、感覚的には約70%の方が、台風で旅行を取りやめるのであればキャンセル料はかからない、という認識だったと思います。残りの約30%の方は「キャンセルした場合はどうなりますか」という確認でしたので、台風という自然災害に対して、宿泊予約のキャンセルポリシーとは別のルールが当然に適用されると考えている方が多いことに、改めて気づかされました。
もちろん、当社としても台風が接近している中で無理に沖縄へ来てくださいとは考えていませんし、何よりゲストの安全が最優先です。ただ、宿泊施設にはオーナーがいて、予約が入った時点からその部屋は他のゲストへ販売できなくなっていますので、「台風が来ている」という理由だけで、運営を任されている私の判断ですべての予約を全額返金することもできません。このあたりから、ゲストが考えるキャンセルと、オーナーが考えるキャンセルには少し違うものがあるのだと思います。
【ゲストにとっての台風と、オーナーにとっての台風は違います】
今回、特に印象に残った予約がありました。ゲストから最初に「飛行機が遅延している」と連絡があり、その後、多くの航空便が欠航しているというニュース記事が送られてきて、旅行そのものをキャンセルしたいという相談になったのですが、その時点では、そのゲスト本人が搭乗する予定の便が欠航したことまでは確認できていませんでした。
当社ではこれまで、ゲストが搭乗する往路または復路の航空便が実際に欠航し、氏名などが入った航空会社からの通知等で確認できる場合、あるいは停電や断水、設備故障などによって施設そのものが営業できない場合と、航空便は運航しているもののゲスト自身が安全を考えて旅行を取りやめる場合は分けて考えてきました。後者については、基本的には予約時に合意しているキャンセルポリシーを基準に判断するという考え方です。
ところが今回は、その確認をしている途中でAirbnb側が先に予約をキャンセルしました。そこでAirbnbへ問い合わせたところ、最初はゲストから「飛行機が欠航した」と報告があったとの説明でしたので、実際に搭乗予定だった便の欠航証明を確認したのかを聞いてみました。すると、その後の回答では、今回は個別の航空便の欠航とは関係なく、台風13号の勢力やリスティング所在地などを総合的に判断し、「重大な影響を及ぼす事象ポリシー」を適用したという説明でした。
さらに確認していくと、同じ沖縄であっても住所や宿泊期間によって対象にならない場合があり、対象となる予約であっても自動的にすべてキャンセルされるわけではなく、ホストやゲストから問い合わせがあって初めて手続きが行われる場合があることも分かりました。私自身、Airbnbへ問い合わせて初めて対象であることを知った予約もありましたので、ここは今後の運営を考えるうえで少し気になったところです。
【判断する人と、売上を失う人が違うということ】
今回、あるオーナーの予約では、この判断によって20万円を超える売上が返金となりました。また、台風13号に関係する他の予約まで含めると、当社が管理する物件全体では50万円近い売上が返金対象となりましたので、オーナーにとって決して小さな問題ではありません。
もちろん、金額が大きいからゲストへ返金しないという話ではありませんし、Airbnbがゲストの安全を考え、自然災害に対する仕組みを設けていることも理解できます。ただ、今回少し考えさせられたのは、返金するかどうかを判断する人と、その結果として売上を失う人が必ずしも同じではないことでした。
ゲストから見れば「台風だから沖縄へ行くのをやめる」という判断ですし、Airbnbから見れば「重大な影響を及ぼす事象に該当する予約か」という判断になります。一方、オーナーから見れば、予約を受けてその日程を確保し、他の予約を受ける機会を失ったうえで、最終的に売上がなくなるという話になりますので、同じキャンセルを見ていても、それぞれが見ているものはかなり違います。
実際、今回のオーナーからも、返金そのものに反対するというより、「いつの時点の何を基準に対象になったのか分からない」「台風が過ぎた後の宿泊までなぜ対象になるのか」「停電や断水などが続いているのであれば理解できるが、判断基準が見えない」という声がありました。私もこの疑問は理解できますし、売上への影響を受けるオーナー側へ、対象となる地域や期間、判断されたこと自体がもう少し分かりやすく共有されてもよいのではないかとAirbnbへ伝えました。
【OTAは誰を見て仕事をしているのでしょうか】
今回の対応を通じて、もう一つ考えたのが、AirbnbのようなOTAは誰を見て判断しているのだろうということでした。私には今回の判断が少しゲスト寄りに見えましたし、宿泊施設を提供するオーナーがいなければ、そもそも予約サイトとして提供できる商品もありませんので、個人的にはもう少しオーナー側の事情を優先してもよいのではないかと思う部分があります。
ただ、ここは一方的にAirbnbがおかしいとも思っていません。AirbnbもBooking.comなど他のOTAと競争していますので、旅行者から「何かあったときに安心して予約できるサイト」と認識されることは非常に重要ですし、ゲスト保護を厚くすることが結果として予約を増やし、長期的にはオーナー側にも利益をもたらすという考え方もできます。おそらくAirbnbは一件の予約だけを見ているのではなく、プラットフォーム全体の信頼を見ながら判断しているのでしょう。
そう考えると、Airbnbとオーナーのどちらが正しいという話ではなく、見ているものが違うのだと思います。ゲストは自分の旅行と安全を見ていますし、オーナーは自分の施設と売上を見ています。OTAはプラットフォーム全体の利用者と信頼を見ていますので、それぞれに合理性はありますが、その間に立つ運営代行会社は、どれか一つの立場だけで判断することができません。
【今回の経験から、社内の判断基準を作りました】
実は今回、一番難しいと感じたのは運営代行会社としての立場でした。ゲストへの対応はもちろん大切ですし、安全については何より優先しなければなりませんが、当社はオーナーから運営代行手数料をいただき、大切な資産とその収益を預かっていますので、担当者が「台風だから仕方がない」「ゲストがかわいそうだから返金しよう」と、その場の感覚だけで判断することはできません。
そこで今回の一連の対応を受けて、「台風・航空機欠航時の社内判断基準」を改めて策定しました。予約経路を確認し、実際に何が起きているのかを確認したうえで、それぞれのOTA規約や契約条件を調べ、ゲストの安全、オーナーの利益、会社としての判断、前例化するリスクまで確認して対応するというものです。AirbnbとBooking.com、直接予約では契約条件も違いますので、同じ台風であっても同じ結論になるとは限りません。
私が今回この基準を作っていて思ったのは、ルールを厳しくすることが目的ではないということでした。むしろ逆で、誰が担当しても同じ事実に対して同じように判断でき、返金するのであればなぜ返金するのか、キャンセル料をいただくのであればなぜいただくのかを、ゲストにもオーナーにも説明できる状態にしておくことが必要なのだと思います。
【まとめ】
台風13号による10件を超える相談を振り返ってみると、最初はキャンセル料をどうするのかという問題だと思っていましたが、Airbnbやオーナーとやり取りを重ねていくうちに、実際には「誰が何を見て判断しているのか」という問題だったのかもしれないと思うようになりました。
ゲストは安全に旅行できるかを見て、オーナーは予約によって確保していた売上を見ていますし、Airbnbはプラットフォームとしてゲストを保護すべき事象なのかを見ています。そして運営代行会社は、そのすべてを見ながら判断しなければなりませんので、同じ台風という出来事でも、立場が変われば「当然だと思う対応」まで変わってきます。
今回だけでも当社管理物件では50万円近い売上が返金対象となりましたが、大切なのは50万円を返金したことが正しかったのか、間違っていたのかということではありません。誰が判断し、その結果として誰がリスクを負担するのか、その基準を関係者がどこまで共有できているのかということの方が、宿泊事業を長く続けるうえでは重要なのだと思います。
沖縄で宿泊事業をしていれば、台風はこれからも来ます。そのたびに担当者の感覚や、その時のゲストとのやり取りだけで判断するのではなく、ゲストの安全を守りながらオーナーの収益も守り、OTAのルールとも整合する判断基準を持っておくことが、運営を任される側には必要なのだと、今回の台風対応を通じて改めて考えました。
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