沖縄の不動産、しばらく見に行けていない方へ

※本稿は、当社が実際に受けた不動産購入相談をもとにしています。相談者および関係者の特定を避けるため、個人情報や詳細な希望条件などの一部を伏せ、価格についても概数を用いて記載しています。また、金融機関の融資基準や担保評価は、購入者の属性、物件、金融機関、融資商品などによって異なります。本稿で記載する自己資金等については、私が沖縄で実際に不動産取引や購入相談に関わる中で見ている一つの目安としてお読みください。
【東京の元同僚から届いた、沖縄の家探し】
少し前に、東京で不動産仲介をしている元同僚から連絡がありました。私が東京の不動産会社に勤務していた頃の同僚で、今も都心の不動産を扱い、富裕層のお客様とも数多く接している人です。その同僚から、「沖縄で6,000万円くらいの終の住処を探しているお客様がいるので、相談に乗ってほしい」という話がありました。
お客様は県外にお住まいで、将来的には沖縄で暮らしたいという希望を持っていました。場所は那覇市内で、一人で暮らすためそれほど大きな家は必要ないものの、現在の住まいと比べて物件のスペックを大きく落とすことなく、趣味や日常生活を楽しめる住環境を求めているという話でした。
6,000万円という金額だけを見ると、決して小さな予算ではありません。東京で不動産を探す感覚であれば、「沖縄なら6,000万円もあれば、それなりの一戸建てを選べるのではないか」と考える方がいても不思議ではないと思います。
参考までに、この原稿を書いている時点で沖縄の不動産情報サイト「うちなーらいふ」を確認したところ、那覇市の一戸建て、築15年以内、5,000万円以内という条件で掲載されている物件は、同一物件の重複掲載を除くと7物件でした。もちろん検索条件を広げれば物件数は増えますし、この数字だけで那覇市全体の市場を判断することはできません。ただ、築年数や予算といった基本的な条件を入れただけでも、選択肢がそれほど多くないことは分かります。ここからさらに立地、広さ、間取り、駐車場、建物のグレードなど、本人が求める条件を重ねていけば、実際に候補となる物件はさらに少なくなります。
ただ、今回の相談では、6,000万円で物件が見つかるかどうかよりも、その物件をどのような資金計画で購入するのかという点の方が重要でした。6,000万円以内でも候補になる物件自体はありますが、本人はフルローンでの購入を前提に考えていたからです。
【6,000万円より、私が気になったのはフルローンでした】
本人と資金計画について話してみると、沖縄での物件購入は、物件価格の全額を金融機関から借り入れる、いわゆるフルローンを想定していることが分かりました。自己資金について確認すると、数百万円程度であれば用意できるというお話でしたが、購入価格の20%前後を自己資金として準備することは難しいということでした。
ここで私は、このまま物件紹介を進めても難しいだろうと感じました。6,000万円で買える物件があるかどうかではなく、その6,000万円の物件を現在の資金計画で実際に購入できるのかという問題だからです。
県外に住んでいる方から沖縄の不動産購入について相談を受けた場合、私はかなり早い段階で自己資金を確認します。いくらの物件を探しているのかも大切ですが、そのうち自己資金をいくら用意できるのか、あるいは購入価格の何%程度まで出すことができるのかを確認しなければ、現実的な物件探しができないからです。
現金一括で購入できる方であれば、当然ながら選択肢はかなり広がります。一方、融資を利用する場合には、購入者の勤務先や年収、資産状況だけではなく、県外在住なのか、将来沖縄へ移住するのか、どの金融機関を利用するのか、そして購入する物件を金融機関がどのように評価するのかまで関係してきます。
私が実際の相談や取引で見ている範囲では、購入価格の15%から30%程度の自己資金を用意できると、ようやく具体的な検討に入りやすくなるケースがあります。ただし、これは沖縄の金融機関すべてに共通する融資基準という意味ではありません。購入者の属性や物件、金融機関によって条件は変わりますので、「20%あれば必ず借りられる」という話ではありません。
今回のお客様にも、単に「フルローンは難しいです」と伝えたのではなく、なぜ自己資金が必要になるのか、その背景にある金融機関の担保評価の考え方まで含めて説明する必要があると考えました。
【6,000万円の物件を、金融機関も6,000万円と見るとは限りません】
一般のお客様には少し分かりにくいところですが、不動産の売買価格と、金融機関が融資をするときに見る担保価値は必ずしも同じではありません。
たとえば6,000万円で販売されている物件を購入しようとした場合、購入者からすると「6,000万円の物件を買う」という認識になります。そのため、仮に自己資金を20%用意すればよいと考えると、単純には1,200万円を準備すればよいという計算になります。
ところが、金融機関がその物件を6,000万円と評価するとは限りません。
金融機関ごとに評価方法は異なりますが、実際の売出価格や取引価格だけで担保価値を判断するのではなく、土地については路線価なども参考にしながら、それぞれの基準で評価していきます。そのため、市場で実際に取引されている価格と、金融機関が融資の際に見る担保評価額との間に差が出ることがあります。
ここは、沖縄で不動産を購入しようとする方には意外に重要なところだと思っています。特に海が見える場所や人気の高いエリアなどでは、実際の取引価格が大きく上がっているところがあります。売主と買主の間ではその価格で売買が成立するとしても、金融機関の担保評価が同じように上がっているとは限りません。
そうなると、「販売価格の20%程度を自己資金として用意しておけば大丈夫だろう」と考えていた購入者にとっては、話が変わってきます。金融機関の評価によって融資できる金額が想定より少なくなれば、購入価格との差額についても自己資金で補わなければならない可能性があるからです。
つまり、購入者が見ている6,000万円と、売主が考えている6,000万円、そして金融機関が担保として見ている価値は、必ずしも同じではありません。
私は県外のお客様から沖縄の不動産を購入したいという相談を受けたとき、物件情報を次々と送るより先に、この辺りの説明からすることがあります。今回のお客様も、職業などの属性そのものに問題がある方ではありませんでした。それでも、希望する物件の価格、自己資金、フルローンを前提とした資金計画を一緒に考えると、今すぐ物件探しを始める状況ではないと判断しました。
【私は物件を紹介しませんでした】
不動産仲介の仕事ですから、本来であれば物件を紹介し、内覧してもらい、購入していただければ売上になります。今回も6,000万円以内で購入できる物件を探し、とりあえず何件か紹介すること自体はできたと思います。
ただ、私はそれをしませんでした。
理由は、希望する物件が見つからないからではありません。本人がフルローンでの購入を前提としており、自己資金として用意できるのは数百万円程度ということでしたので、まず融資の部分を整理しなければ、物件探しを先に進めても購入までたどり着く可能性が低いと考えたからです。
それでも「まずは沖縄に来て物件を見てみましょう」と言うことはできます。そうすれば、お客様は飛行機を予約し、時間をつくり、何件もの物件を見ることになります。ただ、その中から気に入った家が見つかった後になって金融機関へ相談し、必要な自己資金を用意できず購入できないということになれば、お客様の時間を使わせてしまうことになります。
私は、それなら物件を紹介する前に、現在の状況をきちんと伝えた方がいいと思っています。
今回も、現在の沖縄の不動産市場や県外在住者の融資について私が実際の取引で感じていること、さらに売買価格と金融機関が見る担保価値が必ずしも一致せず、その差によっては想定していた以上の自己資金が必要になる可能性があることまで説明しました。そのうえで、現時点の資金計画では購入を進めることが難しいことをご理解いただき、お客様自身が沖縄での購入を一旦見送るという判断をされました。
物件を紹介しなかったので、当然この時点では私の仕事にはなりません。ただ、購入できる可能性が低いことが最初の段階で分かっているのであれば、物件を紹介することよりも、まずその理由をきちんと説明することの方が大切だと私は考えています。
【1億円でも、希望する沖縄の家が見つからないことがあります】
実は、この元同僚からは少し前にも別のお客様について相談を受けていました。そのときの希望は、「1億円くらいで海が見える戸建てを探している。できれば近隣に人がいないような場所がいい」というものでした。
1億円という金額を聞けば、沖縄なら相当条件の良い家が買えると思う方もいるかもしれません。東京で都心の不動産を扱っている元同僚も、最初はもう少し選択肢があると考えていたのだと思います。
ところが、「海が見える」という条件だけでも、現在の沖縄ではかなり競争があります。海が見える場所を求めているのは、移住者や別荘を探している個人だけではありません。ホテルなどの宿泊事業者、飲食店、投資家など、さまざまな人が同じ場所を見ていますので、そもそも売り物件がほとんど出てこない場所もありますし、一般的な住宅地の相場とはかなり離れた価格で取引される場所もあります。
さらに「周囲に人がいない」という条件まで加わると、かなり難しくなります。沖縄で周囲に建物がほとんどない場所を探せば、今度は道路や水道などのインフラの問題が出てくることがあります。本土の都市部で不動産を探している感覚では、土地があれば当然そこまで水道などが整備されていると思うかもしれませんが、沖縄では自分で水道を延長しなければならない土地などもあります。
海が見えて、周囲に人が少なく、生活できるインフラが整い、建物も希望するスペックで、1億円以内。その条件を一つずつ重ねていくと、「1億円もあるのに見つからない」というより、そもそも市場にほとんど存在しないものを探している可能性が出てきます。
この話を元同僚にすると、「やっぱり高いんだね」という反応でした。
私はそのとき、東京で日常的に不動産を扱っているプロであっても、エリアが変われば現地のリアルな価格感や融資事情まではなかなか届かないのだと感じました。まして一般のお客様であれば、「沖縄なら東京より安く家を買える」というイメージを持っていても不思議ではありません。
【沖縄で家を探す前に、私は自己資金を聞いています】
今回の相談を振り返ってみると、6,000万円という予算が少なかったという話ではないと思っています。6,000万円は大きなお金ですし、その予算で購入できる沖縄の不動産も当然あります。
ただ、「6,000万円の予算がある」ということと、「その資金計画で実際に6,000万円の物件を購入できる」ということは別です。
購入者は自分の予算から物件を見ます。売主は現在の市場や自分の不動産の価値から価格を考えます。そして金融機関は、融資する立場からその物件の担保価値を見ています。同じ物件を見ていても、それぞれが見ている価格は同じではないのかもしれません。
だから私は、県外から沖縄の不動産を購入したいという相談を受けたとき、希望する物件の話だけではなく、自己資金をどのくらい用意できるのかをかなり早い段階で確認します。融資をどの程度利用するのか、その条件なら現実的にどの価格帯まで探せるのか。そこを整理してから物件を見た方が、お客様自身も無駄な時間を使わずに済みます。
今回のお客様は、沖縄で家を買うことを諦めたわけではありません。現時点では資金計画が合わないことが分かり、一旦見送ったというだけです。実際に元同僚から聞いたところでは、ご本人も今後に向けて自己資金を準備していくという話をされているようです。自己資金が増え、資金計画が変われば、当然購入できる物件の選択肢も変わってきます。
沖縄で暮らしたい、沖縄に自分の家を持ちたいという希望を持つこと自体は、もちろん悪いことではありません。ただ、その希望を実現するためにも、最初から物件だけを見るのではなく、今の自分の自己資金と融資条件で、実際にいくらの物件まで購入できるのかを知ることから始めた方がいいのではないかと、今回の相談を通じて改めて感じました。
【まとめ】
不動産会社へ購入相談をすると、まず希望エリアや予算を聞かれ、その条件に合う物件を紹介されることが多いと思います。ただ、沖縄のように県外から購入する方も多く、地域によって価格や物件の希少性に大きな差がある市場では、予算だけで物件を探し始めると、後になって資金計画とのズレが分かることがあります。
今回も、6,000万円という数字だけを見て物件を紹介することはできました。しかし、自己資金、融資、そして金融機関が見る担保価値まで考えていくと、現時点の資金計画では購入まで進める可能性が低いというのが私の判断でした。
沖縄の不動産を購入したい方にとって大切なのは、最初から希望を諦めることではありません。自分が考えている予算と実際の沖縄の市場、そして金融機関が見る物件価値との間にどの程度の差があるのかを、物件探しの早い段階で知っておくことだと思います。
物件を見るのは、その後でも遅くありません。
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