地価は上がっているのに、なぜ売れない?|沖縄の不動産市場で感じる変化

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄不動産


※本稿は、当社が実際に受けた不動産オーナーからの相談をもとにしています。相談者および物件の特定を避けるため、所在地、価格、物件の詳細など一部の情報を伏せ、内容についても趣旨を変えない範囲で調整しています。また、市場に関する数値については、公表されている統計資料等をもとに記載しています。

【「この物件、売った方がいいですか」から始まった相談】
少し前に、戸建てを所有しているオーナーから相談がありました。その物件は現在、民泊を運営する事業者に貸しているのですが、その借主から「この物件を購入したい」という話が出ているので、今売った方がいいのか、それともこのまま持っていた方がいいのかという相談でした。

私は普段、売却の相談を受けたからといって、必ず売却を勧めているわけではありません。通常の賃貸として貸した方がいい物件もありますし、民泊など宿泊事業をする方へ貸すことで、居住用とは違った価値が出る物件もありますので、その物件を売った場合と、持ち続けた場合の収益や将来性を見ながら考えるようにしています。

ただ、今回については、私は売却を検討してもいいのではないかと思いました。

もちろん、沖縄の不動産価格がこれから下がると考えたわけではありませんし、今が価格のピークだと断定できるものでもありません。ただ、ここ数年の地価上昇を見てきた中で、金利が上がり、建築資材や人件費を含めてさまざまなコストも上昇している現在の状況を考えると、これまでと同じような勢いで価格が上がり続けることを前提にしていいのだろうかということが、以前から少し気になっていました。

そこで今回、改めて数字を見てみました。

【地価はまだ上がっています。ただ、上昇率を見ると少し違って見えます】
公益社団法人沖縄県不動産鑑定士協会が公表している「令和8年地価公示動向・沖縄県」を見ると、2026年の沖縄県の全用途平均変動率は+6.6%で、東京都に次いで全国2位です。住宅地についても+6.4%ですから、この数字だけを見ると、沖縄の不動産市場は依然としてかなり強いように見えます。

ただ、私が気になったのは、地価が上がっているという事実だけではなく、その上がり方です。

沖縄県の住宅地は前年の+7.3%から+6.4%へ上昇幅が縮小しています。調査対象となった21市町村すべてで住宅地の地価は上昇していますが、そのうち上昇幅が拡大したのは7市町村にとどまります。また、同資料では一部地域で地価の頭打ち感が見られ始めていることや、木造建売住宅について供給過剰感と販売価格の高止まりから売れ行きに陰りが見られることも指摘されています。

地域ごとに見ても同じではありません。たとえば、うるま市の住宅地は2026年も+7.4%と高い上昇率を維持していますが、前年は+8.1%でした。名護市は+4.4%、北谷町は+9.7%と、同じ沖縄本島の中でも動きはかなり違います。
+7.4%という数字を見れば、「まだかなり上がっている」と見ることができます。ただ、前年の+8.1%と並べれば、「上がってはいるけれど、上昇する勢いは少し鈍っている」と見ることもできます。

私は不動産市場を見るとき、上がった、下がったという結果だけではなく、その数字が前年からどう変化したのか、さらに公表されている数字と実際の売買現場が一致しているのかというところも一緒に見るようにしています。

そうすると、「沖縄の地価は全国2位の上昇率」という数字だけでは見えなかったものが、少しずつ見えてきます。

【地価は上がっているのに、売主と買主が合わなくなっています】
実際の売買現場で最近感じているのは、少なくとも戸建てについては、地価が上昇しているからといって簡単に売れる市場ではないということです。

これは以前のコラムでも書きましたが、売主と買主が見ているものが少しずつ離れてきているように感じます。

売主側からすると、沖縄の地価は長く上昇していますし、「近所の物件がこれくらいで売れた」「知り合いがこれくらいで売った」という話も耳にしますので、自分の物件もできるだけ高く売れるのではないかと考えます。実際、住宅地が+6.4%上昇しているという数字を見れば、そう考えること自体は不自然ではありません。

一方、買主は違うものを見ています。金利のある環境になり、物価も上昇していますし、中古住宅を購入してリフォームするのであれば工事費も考えなければなりません。物件価格だけではなく、購入後も含めた総額を考えるため、当然できるだけ安く買いたいという方向になります。

売主はこれまで上がってきた価格を見ていて、買主はこれから自分が負担する金額を見ている。同じ物件を見ているのですが、実際には違う時間軸を見ているのかもしれません。

最近、今回とは別の戸建てについて査定を依頼された際にも、私は周辺の売出価格だけを見て査定したわけではありません。公示地価や周辺の取引事例、土地面積、建物の築年数、用途地域などを確認し、複数の事例を補正しながら査定価格を出しました。

オーナーからすると、自分の土地は広い、立地も悪くない、沖縄の地価も上がっているという認識があります。一方で買主は、その土地や建物を今その価格で買う価値があるのかを考えますので、売主が考える価値と市場で実際に成立する価格が必ずしも一致するわけではありません。

地価が上がっていることと、その価格で買う人がいることは、同じではないのだと思います。

【別のオーナーは、今は売らないという判断でした】
もう一件、まったく別のオーナーから相談を受けたことがあります。こちらは他の不動産会社に売却査定を依頼したところ、オーナーが考えていたよりもかなり低い査定額が出たことから、「本当にこの価格なのだろうか」と相談に来られた案件でした。私もあらためて査定しましたが、売却する場合の価格にはどうしても市場との関係がありますので、オーナーが希望する価格をそのまま付ければよいという話ではありません。

その話をしたうえで、オーナーから出てきたのが、「それなら今は売らずに、できるだけ高く貸す方法を考えたい」という話でした。ここで私が少し考えたのは、この物件を一般的な住宅として貸すことだけを前提にしてよいのだろうか、ということです。

私はこれまで沖縄本島で戸建てなどの活用に関わる中で、民泊事業者へ貸すことで、一般的な居住用賃貸と比べて高い賃料で契約できたケースを見てきました。物件によっては通常賃貸の2倍程度、それ以上の水準になったケースもあります。ただ、これは民泊だから必ず高く貸せるという話ではなく、その物件の立地、広さ、間取り、駐車場、周辺環境などを、誰がどのような目的で使うのかによって評価が変わっているのだと思います。

【住宅として貸す以外にも、借り手はいる】
この案件では、民泊事業者だけではなく、もう少し広く「この建物を必要としているのは誰だろう」と考えてみました。実際にオーナーへ提案したのは、福祉事業者が一棟を借りて運営するグループホーム、企業が従業員のために借りる社員寮、元気な高齢者が共同生活をする高齢者向けのシェア型賃貸、そして自宅と仕事場を兼ねて使うSOHO兼住宅という方向です。今回の提案では、この4つについて、賃料だけではなく、入居までのスピード、長期契約になりやすいか、管理の手間がどの程度あるのかまで比較しました。

たとえばグループホームであれば、福祉事業者が建物をまとめて借りて共同生活の場として運営しますし、社員寮であれば、複数の従業員がいる企業が一括して借りるという形になります。高齢者向けシェア型賃貸は介護施設そのものではなく、比較的元気な高齢者が共同で生活する住まいとして考える方法で、SOHO兼住宅であれば、フリーランスや個人事業主が住む場所と仕事をする場所を一つにするという考え方です。

こうして並べてみると、同じ一戸建てでも、一般の家族から見れば「毎月いくらまでなら家賃を払えるか」という住宅ですが、会社から見れば「複数の従業員をまとめて住まわせられる建物」になりますし、福祉事業者から見れば「事業を行うための場所」になります。同じ建物を見ているのに、借り手が変われば評価している部分そのものが変わります。

もちろん、どの方法でも高く貸せるわけではありません。早く決まりやすい方法は賃料の上限が低くなりやすかったり、長期間安定しやすい方法は事業者探しや準備に時間がかかったりと、それぞれに違いがあります。私自身、この提案を整理しながら、「一番高く貸せる方法」と「オーナーにとって一番良い方法」は必ずしも同じではないとあらためて感じました。収益、空室リスク、契約期間、管理の手間のどこを優先するのかによって答えは変わります。

不動産の価値というのは、建物の中に最初から一つだけ存在しているものではなく、誰が何のために使うかによって見え方が変わるのではないかと思います。売却査定だけを見れば「この金額なら売らない」という判断だった物件でも、借り手を変えて考えてみると別の選択肢が出てくる。ここにも、同じ不動産を見ながら、それぞれが違う価値を見ているという認識の違いがあるように思います。

【地価が上がっているから売る、家賃が上がっているから貸す、ではないと思います】
今回の二つの相談を振り返っていて、私自身も改めて考えたことがあります。

不動産のニュースでは、「沖縄県の地価は全国2位の上昇率」といった大きな数字が目に入ります。実際、2026年の全用途平均は+6.6%、住宅地も+6.4%ですから、沖縄の不動産価格が依然として上昇していること自体は間違いありません。ただ、その数字だけを見て「まだ持っていた方がいい」と考えるのも、「これだけ上がったのだから今売るべきだ」と考えるのも、少し違うように思います。

県全体の住宅地は+6.4%ですが、前年は+7.3%でした。うるま市も+7.4%ですが、前年は+8.1%です。一方で北谷町の住宅地は+9.7%、本部町の商業地は+22.1%と大きく上昇している地域もあります。同じ沖縄県という一つの数字で括ってしまうと、その中で起きている違いが見えにくくなります。

さらに、その数字と実際の現場が一致しているのかも見なければなりません。地価は上がっているのに戸建てがなかなか売れないのであれば、そこには何か理由があります。売主が考える価格と買主が考える価格が離れているのかもしれませんし、金利や建築費、物価の上昇によって、買主が住宅に使える総額そのものが変わっているのかもしれません。

一方、売買市場では評価されにくい物件でも、賃貸市場では違う評価を受けることがあります。居住用として見れば賃料に限界があっても、宿泊事業者や福祉事業者、社員寮として利用する企業など、別の利用者から見れば、その建物の広さや間取り、駐車場などに違う価値が生まれることがあります。

不動産そのものが変わったわけではありません。その物件を誰が見ているのかによって、価値が変わっているのだと思います。

【まとめ】
今回、一つの戸建てについては売却を検討してもよいのではないかと考え、別の戸建てについては今は売らず、より高く貸せる方法を考えました。
一見すると逆の提案ですが、私の中ではそれほど矛盾していません。

地価が上がっているから売るのでも、家賃が上がっているから貸すのでもなく、今売ればいくらなのか、通常の居住用賃貸ならいくらで貸せるのか、違う用途なら誰がどのくらいの賃料で借りる可能性があるのか、そしてその地域の市場がどの方向へ動いているのかを、一つずつ数字にして比較しているからです。

沖縄県の住宅地は現在も+6.4%と上昇しています。ただ、その上昇率は前年の+7.3%から縮小しています。私はこの数字を見て、沖縄の不動産価格がこれから下がると考えているわけではありませんし、いつが価格のピークなのかを正確に当てることもできません。
ただ、これまで上がってきたから、これからも同じように上がると考えることには慎重になっています。

売主は過去の価格を見ます。買主はこれから支払う金額を見ます。そして借主は、その物件を使うことで得られる価値を見ています。同じ不動産でも、立場が変われば見ている数字は違います。
だからこそ、沖縄で不動産を所有している方が「今、売った方がいいのか、それとも貸した方がいいのか」と迷ったとき、最初から答えを決める必要はないのだと思います。

自分の物件が売買市場ではいくらと評価され、通常賃貸ではいくらになり、別の使い方をした場合にはどの程度の価値になる可能性があるのか。そこまで数字を並べてみてから考えても遅くありません。
今回の二人のオーナーを見ていて、同じ沖縄の戸建てでも、答えは物件ごとに違うのだと改めて感じました。

【沖縄スマートオーナーズ】
所有している戸建てや空き家について、「今は売らずに、もう少し高く貸せる方法はないだろうか」と考えているオーナー向けに、通常の居住用賃貸だけではなく、宿泊事業者や法人などへの賃貸も含めて活用方法をご提案しています。

物件の立地、広さ、間取り、駐車場、周辺環境などによっては、一般的な賃貸市場とは違う借り手から評価される可能性があります。

「売るか、貸すか」で迷っている段階でも構いません。まずは現在の物件価値と、どのような活用方法が考えられるのかを整理します。

▼沖縄スマートオーナーズ
https://okinawa-realestate.co.jp/smartowers

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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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