沖縄の不動産、しばらく見に行けていない方へ

【沖縄移住で最初に考えたのは妻の生活圏でした】
2019年に妻と二人で東京から沖縄へ移住して、気がつけば7年が経ちました。今は沖縄で不動産の仕事をしていますので、移住を考えている方から住む場所について相談を受けることがありますが、そういう話を聞いていると、自分たちが沖縄へ来るときに何を考えていたのかを思い出すことがあります。
私たちも二人とも海が好きでしたので、せっかく沖縄へ移住するのであれば海の近くがいい、散歩をするときに海の周りを歩けるような生活がいいという気持ちはありました。ただ、実際に住む場所を探し始めてみると、それだけでは決められませんでした。妻は車の免許を持っていませんので、まず考えたのは妻が一人でも生活できる場所であること、スーパーやドラッグストア、飲食店などが徒歩10分程度のところにあり、車がなくてもある程度日常生活が完結することでした。
沖縄は車社会ですので、自転車があれば何とかなるのではないかとも考えましたが、実際には日差しが強く、突然スコールが降ることもありますので、毎日の移動手段として自転車を前提にするのも少し違うように思いました。当時の私の職場はうるま市でしたので、そこへの通勤時間も考える必要があり、そうなると北部では遠すぎますし、南部へ行けば今度は通勤時間が長くなります。
一方で、便利だからという理由だけで那覇を選ぶことにも少し違和感がありました。私たちは東京で10年以上生活していましたので、便利さだけを求めて都市部に住むのであれば、わざわざ沖縄へ移住しても生活そのものはあまり変わらないのではないかと思ったからです。沖縄らしさがあって、海が近く、それでも妻が徒歩で生活できて、私もうるま市へ通勤できる。その条件を重ねていった結果、選んだのが北谷町でした。
今振り返ってみると、私たちは最初から「北谷に住みたい」と考えていたわけではありません。二人がどんな生活をしたいのか、そのためには何が必要なのかを一つずつ考えていったら北谷にたどり着いたという方が近く、これは今、不動産の相談を受ける立場になってからも、意外と大事なことだったのではないかと思っています。
【暮らして初めて分かった沖縄の家の現実】
もちろん、実際に住んでみなければ分からなかったこともかなりありました。その一つが湿気で、沖縄は湿気が多いという知識は当然ありましたが、知っていることと、それが毎日の生活になることはやはり違います。エアコンや換気を使いながら湿気を逃がしておかないと、収納の中に入れてある靴や衣類、バッグなどにもカビが出ることがありますので、東京にいた頃とは家の管理に対する感覚がかなり変わりました。
台風も同じでした。関東にいた頃にも台風は経験していますので、沖縄へ来る前からある程度は分かっているつもりでしたが、実際に強い台風を経験すると、その認識は変わります。スーパーから水や食料品が少なくなっていき、停電や断水も実際に起こりますので、台風が来てから準備するのではなく、普段からある程度備えておくという生活になります。
ただ、不思議なもので、こうしたことを経験したから沖縄移住を後悔したかというと、私たちの場合はまったく逆でした。湿気もありますし、台風もあります。それでも東京で暮らしていた頃に感じていた、いつも何かに追われているような感覚や、人の多さ、街全体のせわしなさから離れられたことの方が、私たちにとってはずっと大きかったのだと思います。
車を運転していても、信号のない横断歩道で人が待っていれば止まる車が多いですし、道路へ入ろうとしていると譲ってくれることも珍しくありません。日常生活の中でクラクションを聞くこともそれほどありません。もちろん沖縄での生活がすべてゆったりしていて何の不満もないということではありませんし、もう少し段取りよく進めてもらえたらと思う場面もありますが、それを含めても、私たちにはこの時間の流れが合っていたのだと思います。
【海が見える家にも、自然の中の戸建てにも現実がある】
今、不動産の仕事をしていると、「沖縄へ移住するなら海が見える家に住みたい」という相談を受けることがあります。私自身も海が好きですので、その気持ちはよく分かりますし、沖縄へ移住するのであれば、窓を開けたときに海が見える生活をしてみたいと思うのは自然なことだと思います。
ただ、7年間暮らし、不動産や宿泊施設の管理にも関わるようになった今は、海が見えるということだけでは考えなくなりました。海に近ければ、それだけ塩害の影響も受けます。エアコンの室外機や屋外のドア、金属部分などが錆びやすくなり、海の目の前でなくても海風の影響を受ける場所はあります。景色として見えている海と、生活環境として存在する海は、同じ海でも少し意味が違います。
自然豊かな場所にある庭の広い戸建てもそうです。写真で見ると非常に沖縄らしく、庭でバーベキューをしたり、ゆっくり過ごしたりする生活を想像しますが、自然が豊かであるということは、人間にとって都合のいい自然だけが存在するわけではありません。アリやヤモリ、クモ、ヤスデなどもいますので、虫が苦手な方にとっては、それだけで毎日のストレスになる可能性があります。
広い家についても、東京で100㎡、200㎡の家を見る感覚と、沖縄で同じ広さの家を維持する感覚は少し違うと思っています。湿気が多く、植物もよく育ちますので、室内だけでなく建物の周囲も含めて手を入れていかなければ、思っている以上に早く傷んでいくことがあります。広ければ広いほど快適になるとは限らず、その広さを維持する時間や費用まで含めて初めて、その人に合っているかどうかが分かります。
これは、海の見える家や自然の中の戸建てをおすすめしないという話ではありません。私自身、海の近くで暮らすことには今でも魅力を感じています。ただ、移住する前に「魅力」として見えているものと、実際にそこで毎日暮らす人が見ているものには、少し違いがあるのだと思います。
【希望エリアより先に、どんな暮らしがしたいかを考える】
最近は、移住や二拠点生活を考えている方から「那覇に住みたい」という相談を受けることもあります。そのとき私は、那覇がいいか悪いかを先に考えるのではなく、なぜ那覇なのかを聞くようにしています。本州との行き来が多いのか、海外へ行くことが多いのか、夜に飲食店へ出かけることが多いのか、誰と暮らすのか、車を使えるのか。そういう話を聞いていくと、その人が「那覇」という地名に求めているものが少しずつ見えてきます。
本州や海外への移動が多く、空港へのアクセスを重視し、夜も街で食事を楽しみたいという方であれば、那覇を選ぶ理由は十分にあります。ただ、そこで予算とのズレが出てくることがあります。沖縄は東京などと比べれば不動産が安いと思って来られる方もいますが、今の那覇では5,000万円程度の予算があっても、立地や広さなどの条件を重ねていけば、希望する物件が簡単に見つかるわけではありません。
そうなったときに、予算を上げるという方法だけではなく、「なぜ那覇なのか」に戻って考えてみると、豊見城や宜野湾、糸満などまで範囲を広げられることがあります。同じ空港へのアクセスを考えていても、その人が必要としている時間や生活によっては、必ずしも那覇でなければならないとは限りません。
これは私自身の北谷選びも同じだったと思います。今でも北谷を選んだことは大正解だったと思っていますが、もし妻が車を運転できるのであれば、今の私なら読谷村もかなり有力な候補になります。自然が残り、比較的ゆったり暮らせて、個性的な飲食店もあり、中部ですので北部にも南部にも動きやすい。私たちの生活条件のうち「妻が車を運転しない」という一つが変わるだけで、最適だと思う場所も変わるわけです。
逆に那覇や浦添、豊見城、宜野湾などの都市化が進んだ地域が合う方も当然います。二拠点生活で本州との往復が多い方にとっては、空港からの距離は生活の質そのものに関わりますので、利便性を優先した方がいい場合もあります。結局、沖縄移住で「どこがおすすめですか」と聞かれても、その人がどんな生活をしたいのかが分からなければ、本当の意味でおすすめできる場所は決められないのだと思います。
【まとめ】
では、2019年の自分に今の私が何か一つ助言するとしたら何を言うのだろうと考えてみると、意外ですが「まず賃貸で住んでみたらいい」という答えになります。
私たちは北谷でマンションを購入せず、賃貸を選びました。当時は自分の事業もありましたので、住宅まで購入してリスクを増やしたくないという事情もありましたし、沖縄での生活が本当に自分たちに合うのかも、実際に住んでみなければ分かりませんでした。賃貸であれば、合わなければ別の場所へ移ることもできますので、まず沖縄で生活してみるという意味では悪い選択ではなかったと思っています。
ただ、今になって振り返れば、当時4,000万円前半だったマンションが5,000万円前半になっているものもありますので、「あのとき買っておけば良かった」と思う気持ちもあります。不動産屋として価格だけを振り返れば、買っておいた方が良かったということになりますが、7年前の自分たちが持っていた情報と、その時点で抱えていた事業のことまで考えれば、最初に賃貸を選んだ判断そのものが間違っていたとも思いません。
沖縄へ移住して7年が経ちましたが、私たち夫婦は今でも、沖縄へ移住して本当に良かったと心から思っています。便利さや新しさ、何でもすぐに手に入ることよりも、毎日を穏やかに過ごせることの方が自分たちには大切だったということも、移住してから分かりました。
だから今、沖縄で家を探している方を見ると、物件を探す前に一度、「沖縄のどこに住みたいか」ではなく、「沖縄でどんな毎日を送りたいのか」を考えてみてもいいのではないかと思います。海が見える、庭が広い、那覇に近い、新築であるという条件ももちろん大切ですが、その条件が自分たちの毎日の生活と合っているかどうかは別の話です。
私たちが北谷を選んだときも、北谷という場所から考え始めたわけではありませんでした。二人がどう暮らしたいのかを考えていった結果として、北谷が残りました。7年経った今でもここで良かったと思えていることを考えると、沖縄での家選びというのは、物件を選ぶことより先に、自分たちがこれからどんな生活をしたいのかを考えるところから始まっているのかもしれません。
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