なぜ沖縄の土地は売りに出ているのに売れないのか

【家賃を下げる前に、本当に考えるべきこと】
ある日、普段通っているお店の店主から、不動産の相談を受けました。その方とは不動産の話をすることが多く、日本国内に複数の不動産を所有されている不動産投資家の方です。
今回ご相談いただいたのは、築38年の戸建住宅でした。オーナー様ご自身が購入され、リフォームの内容から募集方法まで相談を受けながら、賃貸運用の方向性を一つずつ整理していくことになりました。
最初に伺ったご希望は、「なるべく高く貸したい」というものでした。空室をなくすことだけではなく、高い賃料で貸し出すことが前提だったのです。
オーナー様は、沖縄で人気の高い外国人住宅の賃料相場をご存じで、一般的な住宅よりも高い賃料で貸し出される米軍関係者向け住宅に近い水準を希望されていました。ただ、私が建物を見た時、率直に感じたのは、「この建物をそのまま居住用として、同じ水準で貸すのは厳しい」ということでした。
【建物ではなく、使い方を考えてみる】
建物は築38年でしたが、人気のあるエリアにあり、間取りも4LDKでしたので、相場並みの賃料であれば、沖縄への移住を考えている家族にとって十分魅力のある物件でした。
ただ、オーナー様が求めていたのは相場並みの賃料ではありません。居住用としての魅力だけを見ていても希望には近づけないと感じ、私は建物の良し悪しではなく、誰がどのような目的で使えば、より高い価値を感じてもらえるのかという視点で、使い方そのものを見直すことにしました。
【建物は変わらないのに、価値は変わる】
どのような使い方であれば、居住用相場を超える価値を感じてもらえるのかを考えながら、私は何度も物件の周辺を歩いたり、車で走ったりしていました。その中で、近くの戸建住宅が事務所として使われていることに気づき、今回の物件も住むための住宅だけではなく、仕事をする場所として見直せるのではないかと思いました。
一般的な居住用として貸すのであれば、4LDKは家族にとって魅力がありますが、賃料を高く設定すれば選ばれる可能性は下がります。一方で、住居と事務所の両方を必要とする方であれば、部屋数の多さや、生活する場所と仕事をする場所を分けられることに、別の価値を感じるかもしれません。
改めて間取りを見ると、居住用として気になっていた部分も、住居兼事務所として考えれば、必ずしも大きな欠点ではありませんでした。収納が少なくても仕事で使う部屋には棚や什器を置けますし、天井の高さや内装の仕様も、高級住宅のような設備を求める方でなければ、それほど重要ではありません。それよりも、一つの建物で生活と仕事を分けられ、複数の部屋を用途ごとに使えることの方が評価される可能性があると考えました。
建物自体は変わっていませんが、誰がどのような目的で使うのかが変われば、見られる部分も評価される理由も変わります。住居としては月額10万円程度の物件でも、住居と事務所を別々に借りようとしている方にとっては、一つの建物で両方を実現できることに価値が生まれるのではないかと思いました。
そこでオーナー様に、住居兼事務所として募集する方法をご提案しました。オーナー様は、住居または事務所として貸す方法はご存じでしたが、両方を兼ねた募集は想定されていませんでしたので、対象となる方や、居住用だけで募集する場合との違い、メリットや注意点をお伝えしたうえで、募集を始めることになりました。
【相場を見るのではなく、目的を見る】
募集を始めて約2か月後、この建物を住居兼事務所として使いたいという方が現れました。近くで事業を営んでいる方で、1階を住居、2階を事務所として利用したいという希望がありました。住居だけを探す方には使いにくさのある間取りでも、その方にとっては、生活と仕事の場所を一つの建物の中で分けられることが大きな魅力でした。
特に2階に複数の部屋があることは、事務所として見れば、執務室、打ち合わせ室、作業スペースなどに分けて使えます。収納の少なさや簡素な内装も、必要な家具や設備を自分で入れる前提であれば、大きな問題にはなりませんでした。同じ建物を見ても、暮らす住宅として見る人と、仕事と生活を両立する場所として見る人では、評価する部分が違っていたのだと思います。
最終的な賃料は月額16万円で成約しました。一般的な居住用では10万円程度が目安でしたので、十分に高い賃料です。ただ、用途を変えれば賃料が上がると単純に考えることはできません。最初から住居兼事務所が正解だと分かっていたわけではなく、オーナー様が希望していた米軍関係者向けの募集も実際に行いました。
外国人向けのコミュニティサイトでは、軍関係者向けの相場に合わせて月額20万円で募集し、問い合わせは5件ほど、そのうち1件は案内まで進みましたが、最終的には見送りとなりました。オーナー様からその相場で募集してほしいという希望を受けていましたので、まずは可能性を確認する必要がありましたし、私自身も市場の反応を見なければ分からないと考えていました。
私はオーナー様に周辺の募集サイトの情報をそのまま送りました。長く説明するより、実際にどのような建物が、いくらで募集されているかを見ていただく方が早いと思ったからです。口頭で「この賃料は難しいです」と伝えると、こちらの感覚だけで判断しているように聞こえることがありますが、募集状況を見れば、築年数、広さ、設備、立地によって、同じ軍関係者向けでも賃料に差があることが分かります。
そのうえで、20万円での問い合わせや案内の結果を確認し、16万円でも居住用相場から見ればかなり高い賃料であることを共有しました。オーナー様の希望を最初から否定せず、一度市場に出して反応を見たことで、希望と現実を一緒に整理できたのだと思います。
【契約が決まっても、建物を使える状態とは限らない】
住居兼事務所として借りたい方が見つかり、賃料条件にも合意できましたが、契約直前になって、借主様から来客用の駐車場が必要だという相談がありました。建物には必要な駐車スペースがありましたが、事務所として使う以上、仕事で訪れる方の車を止める場所が必要だったのです。
周辺の不動産会社へ問い合わせても、月極駐車場はほとんど空きがなく、満車という回答が続きました。通常であれば、見つからないことを借主様に伝え、契約条件を再検討していただくことになると思います。ただ、ここまで条件が合う借主様が見つかりながら、駐車場を確保できないことで契約が流れるのは、双方にとって残念なことでした。
そこで私は周辺を歩き、看板が出ている土地を確認し、管理する不動産会社や地主へしらみ潰しに連絡を取りました。その結果、建物の近くで借りられる駐車場を見つけ、借主様へ紹介することができました。この紹介について仲介手数料はいただいていません。建物の賃貸借契約がまとまっても、借主様が実際に事業を行い、生活を始めるための条件が整わなければ、安心して利用できる状態にはならないからです。
今回の案件では、募集方法を変えただけでなく、借主様が実際に使える状態まで周辺条件を整えたことも、成約につながった理由の一つだったと思います。不動産会社の仕事を、物件を紹介して契約書を作るところまでと考えるのか、オーナー様の目的と借主様の利用をつなぐところまでと考えるのかによって、対応は変わります。
【建物の価値は、誰が使うかによって変わる】
この案件では、建物そのものに大きな変更を加えたから、月額16万円で貸せたわけではありません。募集前に必要なリフォームは行いましたが、高級住宅へ作り変えたのではなく、使える状態に整えるための必要最小限の工事でした。
変わったのは建物ではなく、見る視点です。一般の居住用では築年数や収納の少なさ、間取りの使いにくさが気になりますが、住居兼事務所では、部屋数の多さや生活空間と仕事場を分けられることが価値になります。貸主が見ている価値と、実際に使う人が見ている価値は、必ずしも同じではありません。
不動産の価格や賃料は、広さや築年数だけで決まるものではなく、誰がどのような目的で使うのかによって変わります。周辺相場は重要ですが、それは同じ使い方を前提とした場合の目安であり、使い方が変われば、比較する相場も変わります。
ただし、用途を変えれば必ず高く貸せるわけではありません。旅館業は用途地域の関係で難しく、軍関係者向けも希望した賃料では成約しませんでした。いくつかの可能性を検討し、市場の反応を確認しながら、住居兼事務所という使い方にたどり着いたのです。今回の結果はひらめきではなく、可能性を一つずつ確認し、難しいものを除きながら残った選択肢を形にした結果でした。
【まとめ】
今回、オーナー様が望んでいたのは、空室を埋めることではなく、なるべく高い賃料で貸すことでした。居住用相場だけを見れば10万円程度が自然で、その賃料なら、人気エリアに建つ4LDKの戸建住宅として、沖縄への移住者にも十分魅力がありましたが、それでは希望には届きませんでした。
そこで、軍関係者向け住宅、旅館業、事務所、住居兼事務所など、誰がどのように使えば価値が変わるのかを考え、最終的に住居兼事務所として月額16万円で成約しました。
相場や前例から考えることは必要ですが、それを出発点にすると、「この建物ならこのくらい」という結論で終わることがあります。今回の案件で改めて感じたのは、最初に見るべきものは相場ではなく、相談者が何を実現したいのかという目的だということです。
オーナー様はご自分の建物を高く貸したいと考え、借主様は生活と仕事の場所を一つの建物に求めていました。同じ建物を見ながら、それぞれ違うものを見ていたのです。その二つの目的が重なる使い方を探すことが、不動産会社の役割なのだと思います。
通常の賃貸では希望する収益が得られない不動産でも、使い方や借主を見直すことで、別の価値が見えることがあります。一方で、用途地域、建物の状態、近隣環境、駐車場などによって実現できない使い方もありますので、可能性だけではなく、できることとできないことを一つずつ確認する必要があります。
所有している不動産をこのまま貸すべきなのか、使い方を変えるべきなのか、それとも売却を考えるべきなのか。一般的な相場だけでは判断できないこともありますので、ご自身の場合はどのような選択肢があるのか、一度整理してみることが大切です。
―ご質問・ご相談も募集しています―
▼お電話でのご相談
050-5369-5812
受付時間 9:30〜18:00(水曜定休)
▼LINEで相談する
[https://lin.ee/wAo0UUx](https://lin.ee/wAo0UUx)
▼メールでのお問い合わせ
info★okinawa-realestate.co.jp
(送信時は★を@に変更してください)
※営業・勧誘を目的としたお問い合わせはご遠慮ください。


