なぜ沖縄の土地は売りに出ているのに売れないのか

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄不動産


最近、沖縄県内最大級の不動産ポータルサイト「うちなーらいふ」を見ていて少し気になる数字がありました。沖縄県内の売り土地掲載件数です。現在の掲載数は5,153件。もちろん、この数字には複数の不動産会社が同じ物件を掲載しているケースも含まれているため、そのまま実在庫数と考えることはできません。ただ、それを差し引いても、以前より売り土地が市場に滞留している印象は強くなっているように感じています。


こういう話をすると、「沖縄の不動産市場は悪くなっているのですか」と聞かれることがありますが、私自身はそう単純な話ではないと思っています。実際に取引は成立していますし、条件の良い物件であれば今でも購入申込みは入ります。海が見える土地や海の前の土地など、希少性の高い物件であれば複数の購入希望者が競合することもあり、土地が売れなくなったというより、別のことが起きているように見えるのです。

売買仲介の現場で相談を受けていると、以前より売主と買主が見ている市場が違ってきているように感じます。売主は路線価を見たり、近所で売りに出ている価格も見たり、知人が売却した話も参考にしたり、不動産会社の査定も聞きます。どれも間違った情報ではありませんし、私自身も査定をする立場ですから、それらの情報が大切であることは理解しています。ただ、その情報がそのまま現在の市場価格を表しているかというと、必ずしもそうではありません。

【売主が見ている価格、買主が見ている価格】
売却査定のご相談を受けていると、査定価格より高く売りたいというご希望をいただくことは以前からありました。これは特別なことではありません。自分の不動産ですから、少しでも高く売りたいと思うのは自然なことですし、私も売主の立場であれば同じように考えると思います。

ただ、以前と比べると、その差は少し大きくなっているように感じています。例えば、15年前頃であれば査定価格に対して5%から10%程度上乗せした価格で売り出したいというご相談が中心でした。しかし最近は1.2倍、1.3倍、中には2倍近い価格を希望されるケースもあります。

もちろん価格を決めるのは不動産会社ではなく売主であり、最終的にいくらで売り出すかは売主の判断になります。ただ、私自身は過去に査定を行った後、媒介契約をお断りしたことがあります。物件を預かりたくなかったわけではなく、その価格では市場が反応しないと考えたからです。過去のコラムにも書いた一括査定サイトの不動産業者のように、媒介を取りたいための査定は不誠実なので、したくないからです。

私自身、売却について一つの目安を持っています。それは募集を開始してから引渡し完了まで概ね6か月以内で進むかどうかです。もちろん、これは絶対的なものではありません。特殊な諸条件や高額物件であれば時間がかかることもありますし、反対に募集してすぐに購入申込みが入るケースもあります。ただ、一般的な住宅用地であれば、6か月を超えても動きがない場合、市場が何らかのメッセージを出している可能性が高いと私は考えています。

実際、売主は価格を見ていますが、買主は必ずしも同じものを見ているわけではありません。このあたりから、売主と買主の間に少しずつ認識のズレが生まれているように感じるのです。

【土地価格ではなく総予算で判断する時代】
では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。私は、買主側の変化が大きいと思っています。
売主は土地価格を見ていますが、買主は必ずしも同じものを見ているわけではありません。実際には土地価格だけではなく、その土地を購入した後にいくらお金がかかるのか、最終的に総額でいくら必要になるのかという視点で見ています。

例えば土地を購入して家を建てるとします。数年前であれば成立していた予算でも、現在は成立しないケースが増えています。建築資材は上がりましたし、人件費も上がりました。輸送費や燃料費も上がっていますし、住宅設備についても以前と比べるとかなり高くなっています。さらに金利や税金も考えなければなりません。そのため買主は土地価格だけを見ているのではなく、土地を購入した後にどれくらいの費用が必要になるのかという総予算で判断するようになっています。

一方で売主は、「沖縄の地価は上がっている」「東京に次いで価格が上がっている」といったニュースを見ています。それも間違いではありませんし、実際に沖縄の不動産価格はここ数年で上昇してきました。ただ、買主からすると、その価格で土地を購入した後、本当に建物を建てられるのか、自分たちの予算の中で計画が成立するのかということの方が重要になります。

そう考えると、売主は高く売りたい、買主は予算の範囲でしか買えないという状況が生まれるのも不思議ではありません。私は、このあたりに現在の市場の難しさがあるように感じています。

個人的には、現在の沖縄市場は以前より買主側の発言力がやや強くなってきているように感じています。もちろん価格を決めるのは売主ですから、最初は高めの価格で売り出すケースが少なくありません。ただ、その一方で、以前であれば取引が成立していた価格では買主が動かなくなってきていることも事実です。そのため、売主の中には高値で募集を開始しながらも、一定期間反応がなければ多少の指値を受け入れてでも売却を進めたいと考える方も増えてきているように感じます。

ただ、売り出し価格そのものは依然として売主が決めます。そのため、市場では買主が慎重になっているにもかかわらず、募集価格は強気のままという状態が起きています。私は、このズレこそが現在の沖縄市場の特徴の一つではないかと思っています。そして、その結果として売却まで時間がかかる物件が増え、市場に売り物件が残りやすくなり、先ほどの5,153件という数字にも少なからず影響しているのではないかと感じています。

【同じ沖縄でも二つの市場が存在している】
ただ、ここで少し不思議なのは、先ほどお話したように売り土地が市場に滞留しているように見える一方で、実際には今も活発に取引されている土地が存在することです。

例えば北部エリアのオーシャンビュー用地や、ホテル開発が可能なまとまった土地、将来的な開発が期待されているエリアの土地などについては、今でも県外の大手企業やファンド、開発業者などが積極的に情報を集めています。実際に数十億円規模の取引の話を耳にすることもありますし、大きなお金が動いている市場が確かに存在しています。

そう考えると、「沖縄の土地が売れなくなった」という見方も少し違うように思います。
むしろ私には、同じ沖縄の不動産市場の中で、違う市場が同時に動いているように見えています。

一つは一般の方が住宅を取得するための実需市場です。こちらは建築費の上昇や金利、生活コストの上昇などの影響を受けやすく、以前より慎重な判断が増えているように感じます。

もう一つは投資や開発を前提とした投資市場です。こちらは将来の収益や開発価値を見ながら判断しますので、同じ土地であっても見ている基準がまったく違います。

私は現在の沖縄市場で起きていることを、単純に「良い」「悪い」で説明するより、この二つの市場がそれぞれ違う動きをしている状態として見ています。

【まとめ】
今回の5,153件という数字を見て感じるのは、沖縄の土地が売れなくなったということではなく、売主と買主が見ている市場が変わってきているという点です。実際に取引は成立していますし、条件の良い土地や希少性の高い土地には今でも購入希望者が集まっています。その一方で、市場には以前より多くの売り土地が残っているようにも見えます。

その背景には、建築費や人件費、金利などを含めた総予算で判断する買主と、地価上昇や周辺相場を見ながら価格を考える売主との間に生まれた認識のズレがあるように感じています。また、同じ沖縄の中でも、一般の住宅取得を目的とした実需市場と、投資や開発を前提とした投資市場では動き方も大きく異なっています。

だからこそ私は、「土地が売れない」という言葉だけで市場を判断するのではなく、その土地を誰が買うのか、その買主は何を見て判断しているのかまで考える必要があると思っています。価格だけを見るのではなく、市場が何を評価しているのかを見ること。その視点を持つだけでも、不動産の見え方はかなり変わってくるのではないでしょうか。

今回ご紹介した内容について、「自分の土地はどうなのだろう」「今の価格設定は適正なのだろうか」と感じた方は、お気軽にご相談ください。

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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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