親が社長としてしか息子に接しない

上原輝夫

上原輝夫

テーマ:同族.家族経営の心理的.感情的な悩み後悔

同族.家族経営の会社で、父親が息子を「社長」としてのみ接し、親としての自分を見失ってしまうという状況は、多くの同族.家族企業に共通する複雑な問題です。これは、親子の関係性、事業承継の特殊性、そして自己認識の歪みが絡み合って生じます。
以下に、原因と手っ取り早く出来る改善策を整理したいと思います。

親が「社長」としてしか息子に接しない原因

① 事業への過剰な同一化

同族.家族経営の創業者は、会社を一代で築き上げた、あるいは困難を乗り越えて発展させてきたケースが多く、会社は人生そのものだと感じています。そのため、息子が後継者となることで、息子を会社の「継承者」として強く認識し、そのアイデンティティが「社長」という役割と一体化してしまいます。
息子を「会社の一部」として見るようになり、一人の人間、自身の息子としてではなく「会社の未来を担う社長」という機能的な役割でしか見られなくなる傾向があります。

② 成功への強い願望とプレッシャー

父親は、自らが築き上げてきた会社を息子に確実に引き継ぎ、さらに発展させたいという強い願望を抱いています。その目的達成のために、息子を厳しく指導し、完璧な社長に育てようとします。
「社長としての成功」にこだわりすぎるあまり、親としての愛情や心配りが二の次になってしまうことがあります。息子への期待が、純粋な親子関係の構築を阻害し、常に「社長としてどうか」という視点で評価するようになってしまいます。

③ 感情と役割の混同

同族.家族経営では、家族関係と会社での役割が混同されやすいという特徴があります。父親は会社では「社長」であり、息子は「後継者」や「役員」です。家庭での「親と子」の関係性の延長として、職場でも「親」の立場で接してしまうことがあります。
また、その逆も然りで、会社での「社長」という役割の意識が、家庭での振る舞いにも影響を及ぼし、「親」としての振る舞いを見失いやすくなります。これは、父親自身が「親」と「社長」という複数の役割を、適切に切り替えられていないことの表れでもあります。

④ 承認欲求の裏返し

父親自身も、会社を大きくし、息子に継がせることで社会的な承認を得たいという欲求を抱えている場合も多いです。息子を立派な社長にすることで、自身の経営者としての成功を再確認し、賞賛を得たいという無意識の願望があるのかもしれません。
その結果、息子を「承認を得るための道具」のように扱ってしまい、息子自身の人間性や感情に目を向けなくなることがあります。

⑤ 自己肯定感の欠如または歪み

一部の父親は、自身の自己肯定感を会社や息子の成功に依存していることがあります。会社を経営する中で、自身の存在価値やアイデンティティが「社長」という役割に過度に結びついてしまい、そこから乖離すると「自分を見失う」という感覚に陥りやすくなります。
息子を「社長」として厳しく育てることは、父親自身の存在価値を確定させるための行動の特性になってきます。



改善策 オフサイトミーティングの導入と役割の明確化

最も手っ取り早い改善策は、会社とは別の場所で、定期的に「プライベートな親子」としての時間と、「ビジネス上の社長と後継者」としての時間を明確に区別することです。
家族会議の場を設ける:
会社とは関係のない場所(自宅、居酒屋など)で、定期的に家族全員または親子二人の食事会や時間を設けます。そこでは「社長のこと」「会社のこと」は原則として話さないルールを設けます。
趣味の話、最近あった良いこと、心配事など、会社と無関係の話題で会話を試みましょう。これにより、父親は「親」としての役割を意識し、息子は「子」としての役割で父親と接する機会を得られます。
職務権限規程の作成と共有:
会社における父親(会長など)と息子(社長)それぞれの職務権限を明確に定義し、文書化します。「会社」における役割は「社長」と「会長」であり、個人の感情や親子の関係を超えたものだと客観的に認識できるようになります。
また、株式の承継状況を明確にすることも、経営権と所有権の分離を意識する上で重要です。

第三者による介入(コンサルタントの活用)

親子間のデリケートな問題であるため、当事者だけでの解決は困難な場合が多いです。客観的な第三者の介入が非常に有効です。
事業承継コンサルタントの活用:
経験豊富な事業承継コンサルタントを巻き込むことで、親子それぞれの立場や感情を尊重しつつ、会社という「公」と家族という「私」の境界線を明確にする支援を受けられます。
コンサルタントは、感情的な対立を避け、客観的な視点から問題点を指摘し、解決策を提案してくれます。特に、父親自身が自身の行動や感情の背景にあるもの(例:事業への執着、承認欲求)に気づくきっかけを与えることができます。
コーチングの導入:
父親に対し、リーダーシップコーチングなどを導入することも有効です。プロのコーチとの対話を通じて、自身の「親」としての自己認識を見つめ直し、役割の切り替え方や、息子とのコミュニケーションの取り方を学ぶことができます。

父親自身の「社長」以外の居場所と新たな目標設定

父親が引退後も会社に依存しすぎず、親としての自分を見つめ直すためには、「社長」という役割から離れた場所での自己実現が必要です。
趣味や社会貢献活動へのシフト:
新たな趣味を見つけたり、地域活動やボランティアなど社会貢献活動に参加したりすることを促します。これにより、「社長」とは異なるコミュニティで新たな人脈や役割を得ることができ、自己肯定感を「社長」以外の部分で見出す機会が生まれます。
メンターとしての役割への移行:
会社への関わり方を「経営者」から「メンター」へと移行することを提案します。息子を信じ、口出しをせず、必要な時だけ助言を与えるというスタンスを意識付けます。
息子が困難に直面した際に、親として精神的な支えとなることを意識するよう促すことで、親子としての関係性を再構築できる可能性があります。

後継社長さん

結びに

これらの改善策は、一朝一夕には実現しないかもしれません。しかし、継続的な意識と努力、そして時には第三者の力を借りることで、父親は「社長」としての役割と同時に「親」としての自己を見つめ直し、息子との健全な親子関係を再構築できるでしょう。





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上原輝夫
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上原輝夫(経営・生き方・終活カウンセラー/行政書士)

行政書士ヒューマンサポートオフィス

資格と前職での経験、これまでの実績を最大限に活かし、「会社と家族の相談相手」として、経営・メンタルケア・終活を応援、サポートします。お客さまにとって何でも話せる気軽で身近な相談相手を目指しています。

上原輝夫プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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