「社長として」と「息子として」の線引の難しさ

上原輝夫

上原輝夫

テーマ:同族.家族経営の心理的.感情的な悩み後悔

同族家族経営の会社で「社長として」と「息子として」の線引きができず、後継者育成に後悔が残るケースが多く見られます。以下で、その原因と手っ取り早く出来る改善策を整理したいと思います。


原因:役割の混同による育成の偏り

1. 感情が優先される「親」の視点

親は子に対して、愛情や期待、時には過保護な感情を抱きがちです。厳しく指導すべき場面で甘くなったり、逆に、厳しくし過ぎて過度なプレッシャーをかけたりすることがあります。客観的な能力評価よりも、「息子だから」という感情が優先され、必要なフィードバックが滞ったり、挑戦する機会を奪ったりするケースも見られます。

2. 「社長」としての権限の曖昧さ

父親が「社長」として経営判断を下す一方で、「親」として息子の意見を感情的に評価してしまうと、息子は社長としての自分の役割や責任範囲を明確に認識できません。結果として、主体性が育たず、会社を率いていくどころか、「指示待ち人間」になってしまうことがあります。

3. コミュニケーションの質と量の問題

親子間のコミュニケーションが不足していると、互いの気持ちや考えを理解し合うことが難しくなります。また、親が子どもの話を「ながら聞き」したり、真剣に耳を傾けない姿勢は、子どもの自己肯定感を低下させ、信頼関係を損なう原因となります。結果として、業務上の重要な情報共有や、本音での意見交換が阻害され、適切な育成が進まないことに繋がっていってしまいます。

4. 信頼関係の構築不足

「言わなくてもわかるだろう」という親子間の甘えや思い込みから、具体的な言葉でのコミュニケーションが不足しがちです。互いの期待値がずれたり、誤解が積み重なったりして、健全な信頼関係が築けないことがあります。信頼関係がなければ、子が親の言葉に耳を傾けようとせず、育成も困難になってしまいます。

5. 後継者への過度な期待とプレッシャー

父親が息子へ「将来の社長像」を一方的に押し付けたり、過度な期待をかけたりすると、息子はプレッシャーを感じ、本音を言えなくなったり、親の期待に応えようとするあまり、自身の成長の機会を見過ごしたりすることがあります。

はぐらかす


手っ取り早くできる改善策

1. 「役割」を明確にしたコミュニケーションの意識的な実践

・「役割別」の声かけを意識する:
「社長として」話す際は、ビジネスの言葉遣いや論理を意識し、「息子として」話す際は、親としての愛情や心配事を伝えるなど、声かけの入り口を意識的に使い分けます。「今は社長として話している」と冒頭で伝えるだけでも、相手に心の準備を促し、役割の混同を防ぐ効果があります。

定期的かつ非公式な「親子対話の時間」を設ける: 会社の外や、食事の場など、リラックスできる環境で、仕事とは関係のない「親子としての対話」の時間を意識的に作るように心掛けることが大切です。

週に一度、30分でも良いので、仕事の話題は持ち込まず、互いの近況や興味関心について話すことに集中します。この時間は、お互いの人間像を理解し、信頼関係を深めるための「余白」となります。

・「傾聴」と「共感」の実践:
息子が話す際は、スマートフォンや他の作業を中断し、目を合わせて真剣に耳を傾けます。感情を否定せず、「そういう気持ちだったんだね」「大変だったね」などと共感を示すことで、息子は「自分の話を真剣に聞いてもらえている」と感じ、安心感が生まれます。これにより、本音を話しやすくなります。

2. 「育成」における客観性の導入

具体的な「行動目標」と「評価基準」の設定:
「社長として」息子を育成する際には、感情や感覚に頼らず、客観的な行動目標と評価基準を明確に設定し、共有します。例えば、「〇〇プロジェクトの責任者として、〇月〇日までに△△を達成する」など、具体的な業務内容と期限、達成度合いを数値で測れるようにします。

目標達成度への「フィードバック」の分離:
業務目標達成のフィードバックは、親ではなく「社長として」行います。成果に対しては具体的に褒め、課題に対しては改善点を明確に伝えます。この際、個人の性格や人間性への言及は避け、あくまでビジネス上の行動に焦点を当てます。感情的な評価を排除することで、息子も建設的に受け止めやすくなります。

外部専門家(経営コンサルタントやコーチ)の活用:
息子が経営者として成長するために、外部の研修や個別のコーチングを積極的に活用します。これにより、父親からの直接指導では得られにくい客観的な視点や、体系的な知識・スキルを習得できます。また、父親もコンサルタントを通じて、息子とのコミュニケーションの取り方や役割分担についてアドバイスを受けることで、客観的な関係性を築くヒントを得られます。

3. 「承認」と「信頼」を意識した関わり

「承認(アクノレッジメント)」の機会を増やす: 息子がどんな小さなことでも努力したり、成果を出したりした際には、見逃さずに言葉で「承認」します。これは、「よく頑張ったな」「お前ならできると思っていた」といった具体的な言葉で伝えることが重要です。息子の自己肯定感が高まり、父親への信頼感も増します。

「自己開示の返報性の法則」を活用する:
父親が自身の悩みや過去の失敗談、感じているプレッシャーなどを息子に「社長として」ではなく「父親として」話すことで、息子も心を開きやすくなります。これにより、一方的な指導関係から、互いに支え合うパートナーシップへと関係が深化する可能性があります。感情を伴う話をする際には、「なぜそう感じるのか」を具体的に伝えることで、息子が父親の感情を理解しやすくなります。

親子経営

結びに

「社長として」「息子として」の線引きは、完璧なモノを目指すではなく、それぞれの役割を行き来する際に、感情と合理性、親と子の関係、そして社長と後継者の関係を意識的に切り替えるスキルを養うためのものです。手っ取り早いからこそ、継続することが重要であり、それが結果として良好な関係と健全な育成に繋がっていきます。




跡継ぎ(後継・二代目)悩み応援サポート那覇

https://soudan-aite.net/

融資サポート那覇

https://soudan-aite.net/bank/




何から手をつければいいか?
どういった順番で取組めばいいか?
応援してほしい・一緒に考えてほしい等
先ずは、お気軽にお話をお聞かせください
下記のブログとサイトからお問い合わせや申込みが可能です ご参照ください





跡継ぎ(後継.二代目)悩み応援サポート那覇ブログ

☞ https://telblob.ti-da.net/

ブログ写真紹介 






社長の愚痴
同続.家族経営の先代社長.二代目社長や後継予定者を含む
「経営者」とその「ご家族」の皆さまへお知らせします
ビジネスやプライベートで気掛かりな事はありませんか?
誰にも話さず抱え込むと精神的にも肉体的にも疲弊します

「話すことで楽になった」との声を数多くいただいております
ストレス解消に! 不安解消に! 現状の善し悪しの判断に!
ZOOM(全国対応)と出張訪問で対応中 お気軽にお問合せ下さい
詳しくはコチラから☞ https://soudan-aite.net/anshin-support/

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

上原輝夫
専門家

上原輝夫(経営・生き方・終活カウンセラー/行政書士)

行政書士ヒューマンサポートオフィス

資格と前職での経験、これまでの実績を最大限に活かし、「会社と家族の相談相手」として、経営・メンタルケア・終活を応援、サポートします。お客さまにとって何でも話せる気軽で身近な相談相手を目指しています。

上原輝夫プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

人と経営を大切にするプロ

上原輝夫プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼