入居者選択の自由と貸主の責任。入居希望者が外国人であることを理由に入居を拒否した場合。

宮本裕文

宮本裕文

契約の自由。


入居希望者が外国人であることを理由に、入居を拒否した場合、その契約締結段階に
よっては信義則上の義務に違反する可能性もあります。

(事例)
入居希望者は、媒介業者を通じて、賃貸マンションの入居申込書を提出しました。家主
は入居申込書の内容から希望者が外国人であることは理解していましたが、媒介業者に
は「おまかせします。」とだけ返事をしていました。

ところが家主の家族から文化の違いもありトラブルも予想されるので、入居は拒否すべきだ
とアドバイスされ断りの連絡を媒介業者にしました。

納得ができない入居希望者は、外国人であることを理由にした入居拒否は不法行為に
あたるとして、家主に対して損害賠償を求め裁判所に訴えました。

(裁判所の判断)
家主の不法行為の責任については、媒介業者を通じて賃貸借契約の交渉行為が開始
され、入居申込書も提出された。家主も「おまかせします。」と媒介業者に返事をしている。
入居希望者との間で契約交渉が相当進行し、入居希望所も当然借受けできるものと信じ
て期待するに至ったからには、合理的な理由なく契約の締結を拒否することは許されない
とし、その責任を認めました。

家主には少々酷な判断ではとも思いますが、やはり入居申込書も提出され媒介業者にも
「おまかせします。」と意思表示をし、入居希望者も契約の締結は間違いないと思った以上
、何らかの責任は生じるかと思います。(契約締結上の過失。)

ならば、入居募集の条件に「外国人不可」「高齢者不可」「女性専用」「男性専用」など
の条件を付け、契約の締結に向けた交渉自体を拒否した場合、法的には問題ないので
しょうか。

あくまでも個人間の契約なので、家主も誰と契約をするのかは自由ですが(契約の自由)、
今後の流れは否定的となりそうです。
「入居者選択の自由」と「貸主の社会的責任」、どちらが優先されるのでしょうか?
現在でも、その判断は難しいです。

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宮本裕文(宅地建物取引業者)

有限会社富商不動産販売

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