なぜ病院・クリニックに医療接遇研修が必要なのか? 患者様満足度・医療安全・信頼につながる接遇力
自治体職員に求められる接遇とは?
―住民満足(CS)と信頼につながる市役所の接遇マナー研修―
ホスピタリティ&マナー・ラボ 代表
ホスピタリティコンサルタントの長澤さおりでございます。
先日、研修エージェント株式会社SWITCH WORKS様からのご依頼で、
岡山県内のM市役所様にて、主事~上級主事級職員の皆さまを対象とした
「接遇マナー研修~丁寧な応対で地域への信頼と安心を~」に登壇させていただきました。
午前・午後の2回、計46名の皆さまにご参加いただき、
住民満足(CS:Citizen Satisfaction)とホスピタリティ、第一印象、挨拶、表情、身だしなみ、態度・立ち居振る舞い、敬語・言葉遣いなどについて、
ワークやロールプレイングを交えながら学んでいただきました。
自治体職員の皆さまにとって、なぜ接遇マナーが必要なのでしょうか。
市役所は商品を販売する場所ではありません。
一方で、窓口や電話、相談、各種手続きなどを通して、日々多くの住民の方々と接します。
そして、一人ひとりの職員の応対が、住民の方にとっては「市役所そのもの」「自治体そのもの」の印象になることがあります。
自治体における「CS(住民満足)」とは
「CS」というと、
一般企業におけるCustomer Satisfaction=顧客満足を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
自治体においては、CS=Citizen Satisfaction(住民満足)という考え方があります。
住民満足を高めるうえで大切なのは、
制度や手続きを正確に行うことはもちろん、
住民の方が職員の方との関わりの中で、どのように感じるかという視点です。
「きちんと話を聴いてもらえた」
「分かりやすく説明してもらえた」
「安心して相談できた」
そのような一つひとつの経験が、
その職員個人への信頼だけではなく、市役所や自治体全体への信頼にもつながっていきます。
「できないこと」があるからこそ、接遇が大切になる
自治体では、法律や制度、規則に基づいて業務を行うため、
住民の方のご要望にすべてお応えできるわけではありません。
職員が制度上「正しいこと」を説明していても、伝え方によっては、
「言っていることは分かるけれど、事務的で納得できない」
と受け取られてしまうこともあります。
できないことを、できるようにすることがホスピタリティではありません。
相手の話を聴き、立場や心情を想像し、
その方を尊重する気持ちを表情・言葉・態度・行動として表す。
相手を大切に思う「心」を「形」にして表すための土台となるものが、接遇マナーだと私は考えています。
第一印象は、自治体への「信頼の入口」
職員の皆さまにとっては毎日の窓口業務であっても、
住民の方にとっては、不安や緊張を抱えて来庁される一日かもしれません。
そのとき、パソコンを見たまま応対するのか。
一度手を止め、相手を見て挨拶するのか。
同じ説明をする場合でも、受け取られる印象は大きく異なります。
受講者の方からも、
「常に人に見られている意識を持ちたい」
「表情や言葉を通じて、住民の方々に安心感を与えられる職員になりたい」
というお声がありました。
一人の職員の応対・印象が、組織や職員全体の印象につながる。
第一印象は単なる「感じのよさ」ではなく、
住民の方が「この人なら相談できそう」と感じる信頼の入口でもあるのです。
挨拶は「あなたの存在を認めています」というメッセージ
今回、特に大切にお伝えしたことの一つが「挨拶」です。
私は研修で、挨拶とは、
「自分の方から相手のこころにはたらきかけること」
そして、「あなたの存在を認めています、と伝えること」
だとお伝えしています。
来庁された方に、自分から声をかける。
すぐに対応できないときにも、相手を見て会釈をする。
その小さな行動だけでも、「気づいてもらえている」「関心を寄せてもらえている」という安心感につながります。
接遇とは、大げさなことをすることではありません。
相手を大切に思う心を、日々の小さな行動として表すこと。
その積み重ねが、住民の方との信頼関係をつくっていきます。
「見られている」のは窓口応対のときだけではありません
研修では、窓口での応対だけではなく、デスクワーク中の姿勢や表情、職場での立ち居振る舞い
についても振り返っていただきました。
受講者の方からは、
「デスクワーク中も見られているということが印象に残った」
というお声もありました。
市役所を訪れた住民の方は、
職員と直接話をしているときだけ、職員を見ているわけではありません。
例えば、住民票などの書類が発行されるまで、待合スペースで待っている時間。
特に意識して見ているわけではなくても、
その視界には、職員の皆さんが仕事をしている姿が自然と入っています。
デスクに向かう姿勢はどうでしょうか。
椅子にだらりともたれているのか、姿勢を整えて仕事をしているのか。
職員同士がどのような表情で言葉を交わしているのか。
職場の中をどのような表情や姿勢で動いているのか。
ニコニコ・ハキハキ・キビキビと仕事をする姿は、
その人自身の印象だけではなく、
職場全体の明るさや活気、安心感といった「空気感」をつくります。
反対に、
疲れた表情やだらりとした姿勢、ぼそぼそと職員同士がやり取りをする姿などが多ければ、
それもまた、その場の雰囲気として住民の方に伝わっていきます。
接遇というと、窓口での挨拶や言葉遣いなど、
「人と直接接しているとき」のことを思い浮かべがちです。
けれども、接遇は応対している瞬間だけに表れるものではありません。
日頃の仕事への向き合い方や、一人ひとりの「在り方」も、その職場の接遇をつくっています。
職員の方一人ひとりがつくり出す空気感もまた、
来庁された住民の方が感じる「市役所の印象」につながっているのです。
自治体の窓口応対で大切な敬語とクッション言葉
今回のアンケートで多く挙げられていたのが、敬語とクッション言葉についてでした。
「普段使っていた敬語が、実は間違っていた」
「クッション言葉を状況に応じて使えるようになりたい」
というお声もいただきました。
もちろん、正しい敬語を知ることは大切です。
ここで大切にしたいのは、接遇における言葉遣いは、単に「敬語として正しいか」だけではないということです。
クッション言葉とは、
お願いやお断りなどの前に添えることで、表現をやわらかくし、相手が受け取りやすくする言葉です。
例えば、「できません」と伝えるのか、
「恐れ入りますが」「あいにくではございますが」と心遣いを添えるのか。
制度や規則を変えることはできなくても、「どのように伝えるか」は選ぶことができます。
私は研修で、「言葉使い」ではなく、「言葉遣い」を大切にしましょうとお伝えしています。
言葉を単なる道具として「使う」のではなく、相手を思いやり、心を「遣う」。
「恐れ入りますが」「差し支えなければ」といった一言にも、
相手を大切に思う気持ちを込めることができます。
言葉に自分の「気遣い」「心遣い」をのせて相手に届ける。
それが、接遇における「言葉遣い」です。
正しい言葉を使うことから、相手を思いやる言葉を遣うことへ。
その意識が、住民の方に安心感や信頼感を与える応対につながっていくのではないでしょうか。
「知っている」を「自然にできる」へ
受講者の方から、
「マナーは、勉強しただけではすぐに身につかず、日々実践しなければならないものだと理解した」
というお声をいただきました。
接遇は、知識として「知っている」だけでは十分ではありません。
「知っている」から「できる」へ。 「できる」から「自然にできる」へ。
相手を大切にしようという意識が、表情や言葉、所作となって表れる。
その行動を繰り返すことで、やがて「習慣」になります。
そして、一人ひとりの良い習慣が周囲へ広がれば、
それは個人の接遇力だけではなく、組織全体の接遇力へと変わっていきます。
自治体の接遇力向上は、住民との信頼関係づくり
自治体職員に求められる接遇とは、単に「感じのよい職員」になることではありません。
住民の方の立場に立ち、話を聴く。
不安や困りごとを想像する。
必要な情報を正確に、分かりやすくお伝えする。
そして、たとえご要望にお応えできない場合であっても、相手への敬意を失わず、誠実に向き合う。
その積み重ねによって、
「この人なら相談できる」
「この市役所なら安心できる」
という信頼が生まれるのではないでしょうか。
私は、接遇マナーは、そのための「形」だと考えています。
そして、その形に込める「相手を大切にする心」が、ホスピタリティです。
だからこそ、接遇研修で目指したいのは、
単に正しいお辞儀や敬語を身につけることだけではありません。
なぜ挨拶をするのか。
なぜ相手を見るのか。
なぜ丁寧な言葉を選ぶのか。
その意味を理解し、自ら気づき、考え、行動できることが大切です。
一人の職員の行動が変われば、その姿は周囲にもプラスの影響を与えます。
そして、一人ひとりの行動の積み重ねが、やがて組織の接遇文化となっていく。
職員一人ひとりの接遇力が、住民満足(CS)を高め、住民の皆さまから信頼される自治体をつくる力になる。
私はこれからも、「よろこんでもらうよろこび」を原点に、
接遇とホスピタリティを通して、
一人ひとりが自ら気づき、考え、行動できる人材育成につながる研修を大切にしてまいりたいと思います。


