残業代(3)
AはB社と期間の定めのない雇用契約を締結していた。Aは結婚式のトータルプロデュースサービスに従事しており、基本給15万円、職能給9万4000円、通勤手当6000円であった。Aは退職後、Bに残業代を請求。その場合、計算の基礎となる基礎賃金は、基本給のみか、基本給と職能給を加算したものかが争われた。Bは、職能給9万4000円については、残業代の支払いい充てられる取り扱いとなっている、すなわち、差額精算の合意があるのと主張した。しかし、第1審は、差額合意は形ばかりのものであり、公序良俗に違反し、無効であるとし、基礎賃金は24万円4000円であると認定し、Bに対して残業代として約300万円を認めた。これに対して第2審は定額残業代が有効となるには①基本給と割増賃金の部分が区別されていること②差額精算の合意があることを考慮し、②については基礎賃金863円となり87時間分のの時間外労働の対価となる。87時間の時間外労働を強制するものではなく、時間外割増賃金として支払う旨の合意をしたものであって有効として、職能給は時間外労働の差額に補充可能としてBに対して約4万円の支払を命じた。基本給15万円に対して職務手当が9万4000円と高額であったことと、差額精算の合意があったことからこのような判決になったと思われる。