残業代(5)社長ノーガードでは勝てません。
労働事件を取り巻く環境は急速に変わりつつあります。2016年9月に総理を議長とする「働き方改革実現会議」が新設されました。「同一労働、同一賃金」がにわかに注目されてきています。
そのような流れの中で、東京地裁は、契約社員と正社員の「年末年始勤務手当と住居手当」についての差別を違法とし、約92万円の支払いを命じました(2017年9月14日東京地裁)。
これまでの裁判例では「同一労働同一賃金の原則」をそのまま認めたものはありませんでした。「雇用形態の違いによる賃金差は契約自由の範疇の問題であり違法とはいえない。」(2012年5月22日大阪地判決)、「同一労働同一賃金の原則は労働関係を規律する一般的な法規範としては存在しているとは認められない。」(1996年3月15日長野地裁上田支部判決)
現行法においては労働契約法20条において「有期と無期労働者との労働条件の相違は不合理なものであってはならない。」、パート労働法8条「通常労働者との待遇の相違は不合理なものであってはならないと規定はされています。しかしながら、一方ではどのような契約とするかについては、契約自由の原則もあり、非正規労働者と正社員との間との間に現実に存在する賃金、手当等で様々な格差について直ちに違法という結論には至りませんでした。
今回の東京地裁の判決は第一審での判決であり、高裁、最高裁がどのような判断を下すか注目されています。
ただ、「働き方改革」の流れの中で「同一労働同一賃金」のガイドラインが策定されようとしています。今後非正規労働者をめぐる労働環境は大きくかわる可能性があります。