誰も言わなかった、ZEH(ゼロエネルギーハウス)に向かう危険性
高断熱住宅を探求してゆくと、初期段階でぶつかる問題のひとつに、
「基礎断熱とするか、床断熱にするべきか」
という問題があります。各工務店、HM、もっといえば建築士の個々で意見が分かれているのが現状ではないでしょうか。
それぞれの工法には、当然ながらいいところ悪いところがありますので、それらを踏まえたうえで、暖房方式や換気方式など総合的考えて工法を決定してください。
基礎断熱の場合は床下も室内空間として扱うため、暖房設備や給湯設備、さらには換気設備などを設置することも増えてまいりました。普段は見ることができない箇所でもあり、それほどの広さもありませんから、点検やメンテナンスの容易性を、建築主、施工者、設計者が十分に話し合うべきだと思います。
まずはお客様から実際に寄せられたメールのやりとりを紹介します。(一部補足で加筆しています)
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>塩原様
>お世話になります。
>ブログを拝見しふと思ったのですが、基礎または床についての断熱はどのように行っているのでしょうか?また今回のプランではどのように行う予定でしょうか?
>例えば上記ブログと同じ構造だと、こちらでは床下の配管は凍結するような気がするので、問い合わせてみました。
>時間のあるときにでもご回答頂ければと思います。
>よろしくお願いいたします。
>大山(仮称)
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大山様
こんにちは、Reborn塩原真貴です。
ご質問いただいた件につきまして。
詳細は次回打ち合わせの際に説明申し上げますが、
私は基本的には『床断熱』をよしとしています。
基礎断熱も数件施工し、自宅で施工しデータ検証したものを評価の基準としています。
基礎断熱の場合は、確かに床下も室温とほぼ同じ気温で、初年度は湿度が高めですが2年目以降は完全に1階室内と同じ環境になっていることを確認しました。
ただ床断熱の場合であっても、
・床下は地熱の影響で、外周1mよりも内側は氷零下にならない
・パネルヒーターのように温水配管が床下にあればなおさら零下にならない→熱が逃げてしまう、といういい方もできるのですが・・・
・床下配管は保温材を巻くだけで、凍結防止帯は必要ありません。(別荘など普段生活熱が長時間発生しなければ、床下も地熱があるといえども零下になることもあります)
また、
基礎断熱にはスタイロ系の断熱材を用いるのが一般的ですが、断熱性能の経年劣化やシロアリの問題がなかなか解決できにくい。
かといってグラスウールボードの基礎断熱は(自邸はそうしましたが)、土中のグラスウールが濡れないための排水処理工事等で余分な出費がある。床下も室内環境になるので、ランニングコストが床断熱に比べて多くかかる(年間で灯油換算30リットル程度)
床下にエアコンや設備機器を入れるアクティブな工法を用いる場合は基礎断熱にする方向が世にありますが、蟻害や初年度床下結露・コンクリート臭などの問題も発生している実状があります。なかなかエンドユーザーさんには聞こえてこないのかもしれませんが・・・。
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もう一通ご紹介します(一部補足文章を足してあります)。基礎断熱に関連した暖房=床下放熱器についてです。
>㈱Reborn 塩原様
>お世話になります。
>小坂(仮称)です。
>
>本日は打ち合わせ頂きありがとうございました。
>作製頂いた間取りを元に改めてこだわりたい部分、妥協できる部分の検討を進めてみます。
>
>暖房に関して一点教えてください。他社のオプションで床下放熱器というものがあったのですが、メリットとデメリットを教えて頂けないでしょうか。また、暖房機器の性能としてはいかがでしょうか。宜しくお願い致します。
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小坂様
Reborn塩原真貴です。
メッセージありがとうございます^^
いろいろと、ご夫婦で話合いを重ねてください!
床下放熱器の件でご質問がございましたので、意見を申し上げます。参考にしてみてください。
①まず前提になるのが『基礎断熱』、です。
・基礎の外側または内側に発泡スチロール状の断熱材を張りつけ、「床下も室内空間として考える手法です。北海道など極寒冷地から派生した手法で、長野県でもここ5年前くらいから、大手HMが多数採用しだしています。技術的にはまだ発展途上にあり、まだ試行錯誤段階、といっていいかと思っています。(私の自宅も9年前に建てましたが、基礎断熱です。
・基礎断熱のメリットは、
◎家全体の気密が確保しやすい、
◎床下の水道配管などが室内にある、ということなので凍結しにくい、
◎ボイラーや放熱器など設備機器を設置できる(スペースの有効活用)、
◎施工が比較的簡単(工期の短縮)、
◎基礎断熱を外側に張った場合、ベタ基礎コンクリートが床下にある状態になるので、夏、床面がすこしひんやりする。蓄熱作用が期待できる
・デメリットは
▲イニシャルコストが高い
▲ランニングコストも高くなる傾向(暖房しなくてはならない室内空間が大きくなるので)
▲外側に断熱材を張った場合、発泡スチロール状の断熱材は白あり被害にあいやすい
▲建築後すぐの床下結露・カビの発生リスク高い(コンクリートの水分が乾かないうちは)
▲発泡系の断熱材は一般に燃えやすく、火事になった場合有毒ガスを発生させ避難が困難になる、また紫外線により断熱性能が劣化する
基礎断熱に対して『床断熱』があります。文字通り1階の床の直下に断熱材を敷き詰める方法で、この場合床下は地窓とよばれる換気の窓や基礎と土台材の間に隙間を取って、いずれにせよ床下の換気を行い、床下を”外”と考える手法です。
現在はまだ住宅メーカーによって方針がばらばらで、約20%のメーカー・工務店が基礎断熱を採用しています。
私も双方やってきましたが、現段階では『床断熱』のほうに分があると考えています。床断熱の方がイニシャル、ランニング共にお客様にメリットがありますし、なにより基礎断熱のほうがやはり白ありの被害にあいやすく、かつ発見が遅れます。白ありは断熱材や木材の中に存在し、なかなか外見から発見しにくいものです。最近では特殊な機械で(レントゲンのように)検査することもできますが、1年おきに検査するなんてことは到底できませんし、その被害状況の恐ろしさ、気持ち悪さといったらたまりません。
床下放熱器はいわば床下に置くパネルヒーターです。床下に置くので当然見えませんから、デザイン性無視の放熱器(パネル)でよいので安くできます。
放熱器の直上の床に格子のある開口(床用ガラリ)を設け、そこからの暖気と、放熱器の輻射熱を床フローリングの裏面をあたため、主として1階の床面全体をあたためるのです。
最近はこの放熱器の代わりにエアコンを床下に設置する方法もありますが、1台で賄おうとすると温風経路が難しくなります。床下空間全体をガランドウにする必要性に迫られ、基礎の構造計算との戦いになります。この段階で間取りに制約が出てくることが多く、いちばん大事な間取り・プランニングが、施主希望よりも建築士主導になりがちに。間取りと構造の強さは密接に関係していますが、どちらを優先すべきかといえば、個人住宅の場合は間取りが優先、それに構造を後追いで検討する、ということがほとんどです。
また部屋ごとの温度コントロールも難しく、吹抜けがない場合は特に2階の暖房をどうするか、という問題に直面することとなります。
輻射熱は”直接”、が一番効率がよい。
放熱器が室内に見えている状態が、最も効率よく輻射エネルギーをいろいろな部分に伝えることができます。
わたしがおすすめしているパネルヒーターはPS社(ピーエス)のものでデザインや色、大きさが選べるのが魅力。室内に露出された温水パネルはあらゆる方向に輻射熱を伝え、それは床であり、天井であり、壁であり、人間であり、家具であり・・・。温まった床や壁、天井からはまた輻射熱が放出されるのです。
長文になってしまいました。おそらくご理解は難しいかと思いますが、次回お目にかかった機会や見学会の際にでもあらためて説明をいたします。
【結論】
・床下放熱器は基礎断熱工法が前提となる。基礎断熱はイニシャル、ランニング共に床断熱工法に比べて不利。加えて白あり被害のリスク大。
・床下放熱器は輻射式の暖房と言えるが、温度コントロールが難しい(特に2階)。
床下からの暖気の上昇と、床下への冷気をとり入れる「空気循環」の経路を間違えないように計画すべし。
・1階床面の温度は上がるため、1階での住み手の満足度は高く、イニシャルも100万以下に抑えられる。
・しかしながら、室内露出・分散型の放熱器(パネルヒーター)の方が各部屋の温度コントロール性、快適性(温度ムラできにくい)で優位かと思います。
私たち技術者は、間取りも構造も同時に検討すべきで、ミスや施工不良が起こりにくい工法や技術を追求すべきだと考えています。
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私が主宰のRebornでの設計による床断熱工法=ツーバイシックスを使ったプラットフォーム型工法も参考にしてみてください。コストパフォーマンスに優れた高性能グラスウール16K t=140mmを床組構造材に充填した工法で、床下からの気流止めを構造用合板12mmで行っています。いわゆるツーバイ工法の床の作り方になりますが、木造在来工法にミックスさせることにより合理化、作業性、施工容易性を図っています。