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寒い家は理由(ワケ)あって寒いのです

塩原真貴

塩原真貴

テーマ:建築について

連日雪が降り続いています。太陽も見えず、気温は日中でも10℃までは到底いかない。
朝、事務所にきてまずやることはファンヒーターのボタンを押すことです。
寒い家に住んでいる人は誰だってそうです。きっとお母さんが多いんだと想像します。

ファンヒーターの電源ボタンの周辺には、現在の温度と目標とする設定温度の液晶画面が大抵ついてますよね。

今日は 「22 ・ 3」 でした(泣)

弊社のファンヒーターの8Lほども入る灯油タンクは1日でなくなります。
10月から暖房をしはじめて、かれこれもう200Lくらいは使いました。
それでも足元は寒く、毎日靴下を2枚はいて、足の裏にカイロをくっつけています。

一日数回は寒い廊下に行って、ポリタンクからぎゅ~んと哀しい音を響かせて灯油を入れています。
この作業も時間的に大変もったいなく感じています。

自慢気に受け取られることを恐れずに書くんですが、
我が家は全館温水パネルヒーターの暖房で、この灯油を入れに行く作業はありませんし、
燃料もさほどかかりません。灯油換算で冬の間(10月~4月)で300L程度で済んでしまいます。
ここだけの話・・・・のはなし実際には原発由来の深夜電力を使った蓄熱式なんですが・・・)

こういう状況だと、正直会社に行くのも少しつらく感じてしまい、冬でも太平洋高気圧に覆われた我が家で育った子供たちは、果たして将来社会人になったとき、冷たい他人風も吹き荒れる社会になじめるんだろうかと心配になってしまいます。

金銭的な格差もさることながら、暮らしている温熱環境の格差も今後大きくなってゆき、それが社会問題化するのではないか、とさえ最近思います。

会社を辞める理由~

「職場の住環境が悪く、冬はとても寒く作業効率が落ち、意識が散漫になり、そうして起こったミスを上司にとがめられ、断熱や暖房方式の見直しによる環境整備を上司に提案したがばっさり断られたため」、とか

「暖房がエアコンであるため、肌が荒れて乾燥し、美しい歌声を最大の武器としているこの私が、あろうことか彼女に「最近あんた冴えないよね」とフラれた。ここは人間が安心して生活できる場所ではない!ましてや経済活動をする場所ではないのではないか?」
なんて、冗談みたいなそうじゃないようなことを言う若者がでてきてしまうのではないか!(笑)

私たち省エネ住宅建築技術推進者は、そうした若者を、意図せずに生み出してしまっているのかも!(汗)

・・・・前置きが長くなってしまいました(*^。^*)

「寒い家はなぜに寒いのか?」
最近お問い合わせも多いこのキーワード。少しひも解いて解説します。

①まずは床下の断熱材があるかどうかチェック


床下に断熱材がないお宅がけっこうあるんだなぁ、と感じています。
点検口があればそこから潜る、なければ畳をめくり、のこぎりでどこかに床下が覗ける開口をつくってください。
断熱材がまったくなければ、「そりゃ寒いわな~」でおわっちゃうかもしれませんし(笑)、あればどんなふうに床の裏側にくっついているかチェックして下さい。
ま、大抵は床下は狭くて、全域を確認できません。断熱材が落下していたり、水廻りの配管周辺はほぼもう適当になっています。
よろしければ写真をメールで送ってください。アドバイスできると思います。

床下は地熱の影響もあって零下にはなかなかなりませんが、この時期おおむね外気温+2~3℃といったところです。この空気に直接床板の裏が接しているかぎり、床の表面温度はその気温に近いということになります。
カーペットやじゅうたんにすると劇的に暖かくなるはずと思われがちですが、足の裏が接する面積が小さくなり、これらは足の裏との間に若干の空気層をつくるかたちになるので、冷たい、という感覚から逃れられるだけなんです。

電気カーペットなんかを敷くと、確かにとても快適にはなるのですが、半分以上の熱は床下に吸い取られてゆきますので、電気代にびっくりすることでしょう。その場から離れられなくもなるので要注意です(笑)

②窓ガラスをペアにしたのになんで?

ほとんどの古い家はアルミサッシではないかと思います。新しい家でも、寒い家には今もアルミサッシが採用されています。
そしてガラスは1枚の単板ガラス。
もうすでにご存じない方はいないと思いますが、昨今はペアガラスが当たり前で、ガラスとガラスの間にうすい~い金属フィルムを貼ったものや、熱を伝えにくいガスが封入されたものも一般的に使われています。
ガラスとガラスの間隔は最近では16mmが当たり前になってきており、10年くらい前に流行った6mmの空気層を持つペアガラスを、単板ガラスと交換して寒さ対策としたリフォームも「思ったほど効果がなかった」とばっさり斬られています。
ガラスだけでなく、枠の部分からも相当の熱が逃げているのだということは、結露水の多さからも感じられますよね。

てっとり早く、ペアガラスで樹脂枠の2重窓にするのがいいと思います。来年度からまた住宅エコポイント制度が復活するかもという話もあり、窓の断熱化は最も優れた省エネ化、寒さ対策になることは間違いありません。
しかし春や秋など、窓を大きく開けて風通しを良くする生活が日本にはありますよね。その時に窓を2回開け閉めするというのはどうも抵抗があるようです。あまり頻繁に開け閉めしないところは2重サッシ、頻繁に開け閉めするところは思い切ってサッシ枠ごとオール樹脂窓に交換しましょう。樹脂サッシも以前に比べて信頼性がありますし、値段も手ごろになってきています。

③天井裏ものぞいてみよう!


屋根裏の状況

押入の天井ベニアなど、どこか屋根裏に行ける入口を、大抵は大工さんが作ってくれています。
パッと見分らない場合もよくありますので、ふとんたたきの棒などを使って、天井を突っついてみて下さい。
そして懐中電灯を片手に未知との遭遇を果たしてください。
ほとんどの家には、うす~いビニールの袋に入ったようなグラスウールパックが並べてあります。
一見寝袋の下に敷くようなマットにようにも見えるかもしれません。
天井板には乗らないでください。足を踏み抜いたり落っこちたりしますよ~(^_^)/~
釘なんかも出ていることが多々ありますので、靴をはいて、慎重に足元を照らしながらご覧ください。

人が入れて作業できるほどのスペースがあればラッキーです。
天井を壊さずに、断熱材を追加して敷くことができるかもしれません。
屋根裏は夏は60℃近くにもなりますし、冬は外気温と同じ風が入ってくるところです。
屋外に張ったテントにいるようなものです。
天井に断熱材が無い場合は、せっかく暖房や冷房しても、魔法瓶のフタをしないような感じで、どんどん熱は逃げてゆきます。あたたかい空気は比重が軽く、上へ上へと昇ってゆきますから、最終的にファンヒーターで温めた熱の多くはこの空間を無駄に温めて外に逃げてゆくということになります。
きちんと天井面で断熱された屋根裏の空間はほぼ外気温に近く、今の時期でしたら、外が0℃ならぜいぜい2~3℃です。

天井裏気流止め

この空間を暖めると、屋根に積もった雪を溶かし、溶けた水は軒先でつららになります。
つららが出来るお宅は家の中が寒い、そうささやかれています。
断熱がしっかりした家の屋根に積もった雪はなかなか解けませんし落ちません。


④外壁はいちばん表面積が大きい


外壁は、床や天井に比べると面積が大きく、且つ断熱することが難しい部位です。
壁の中は普段見えませんが、床下からの冷たい空気がぎゅんぎゅんと駆け上がっています。
さきほど天井裏の話をしました。
実は、階段などを通じて2階の部屋にふわふわ上がっていった暖かい空気が、じんわりと天井面から屋根裏に逃げてゆくのをイメージしがちですが、そうではなく、壁の中が煙突のようになってしまっていて、部屋を暖めると壁が温まる。その壁の熱を得た壁の中の空気がソレイマダ!とばかり駆け上がってゆくのです。これではいっこうに部屋の温度はあがりません。壁の中を通っている空気にずっと温度を奪われっぱなしなんですね。それが証拠に、壁の中の断熱材は、地面から吹き上げられたホコリで黒ずんでいます。

これは外周の外と接している壁だけではなく、部屋と部屋を区切っている間仕切り壁の中もそうなっています。むしろ断熱材がない分、空気が駆けあがりやすくなっているんです。
これを防ぐには気流止め、という壁の中に風が入らないように綿状のもので詰め物をするのがやはりよいと思います。
気流止め
ただ、狭くて潜れない床下からこの作業を行うのはかなり困難です。
床に断熱材が入っていない、もしくはきちんとくっついていない場合は、思い切っていちど床を剥いでしまうことを考えましょう。当然費用は高くつきますし、荷物や家具を移動させなければならないので大変です。
しかし、これをやらないと、なかなか暖かい家にならないのも事実。大変だと思っているのは住んでいる人で、私たち工事人からすると潜って作業するほうがよっぽど大変なんです!
床を剥いでみたら、思わぬ事態に気付くことも良くあります。シロアリ被害や漏水による土台の腐れなどです。
これは残念なことではありますが、そこに今後も住み続けてゆく以上、「早く気付いてよかった」ことなのだと前向きにとらえることもできます。このままの状態でその上に暮らすことを考えれば・・・

床を剥がすといろいろと


特定の部屋だけを、薄い断熱材と一体になったパネルを使って”ぱたぱたっ”と壁に張ってクロスで仕上げて「あなたも簡単エコリフォーム!」なんていうリフォーム用商材もあるようですね。効果がないとはいいませんが、先ほど述べました”床下からの気流止め”が解決されず、むしろ他の部屋との温度差を大きくしてしまうので、私個人的にはおすすめしませんね。温度差が家の中でできるだけないようにすることが断熱材を入れる目的だからです。

現状が昔ながらの土壁(ベトカベ)ならば、外壁の外側に断熱材を100mm程度張りつけることをおすすめします。
特に外壁が傷んでいたり劣化が進んでいる場合は、足場代が当然かかりますが、断熱効果は抜群です。

外壁下地
外壁付加



いろいろな話が交錯して読みにくかったと思いますが、ここまで読んでくれてありがとうございました。
断熱を語らせるとかなりしゃべりすぎます。すみません。

なぜうちは寒いのか?と案ずるのであれば、まずは断熱材の有無をチェックしていただたいと思います。
大工さんが「いれといたよ」と言っていたけど無かった、なんていうこともザラにありますので・・・。

また、「予算がそれほどないので、最もコストパフォーマンスに優れ効果的な方法を教えてほしい」
とか、「効果の程が分らないので、断熱リフォームをした家を見せてもらいたい」
などのご相談がございましたら、お気軽にお声掛け下さい。そんな方々のために存在していると自負しています。

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塩原真貴
専門家

塩原真貴

株式会社Reborn

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