知っておきたい著作権(1)
今回は、先のコラム「知っておきたい著作権(2)」で挙げた事例問題について解説したいと思います。次のケース(Q1)~(Q5)が著作権の侵害になるか否かです。いずれも著作権の侵害にはなりません。ただし、無条件に何の問題も生じないというものでもありません。
(Q1) 映画館で古い名画を上映していたので、自分のスマートホンの待受画面にするため、映画の一画面のみを撮影した。
(A) 著作権の侵害にはならない。
映画館へ行くと、上映の最初に頭をカメラの形にした人が出てきて映画の撮影は違法ですという映像が流れることはよくご存じと思います。著作権の場合、基本的に個人利用の場合には侵害になりません。ただし、映画は盗撮防止に関する特例法があり、たとえ個人利用でも映画館での撮影は違法になります。この場合、適用があるのは、いわば新作に対してであり、最初の有料上映後8ケ月を経過した映画には適用されません。したがって、このケースでは著作権の侵害にはならない可能性が高いです。しかし、映画館では上映の開始前に、撮影は止めて下さいと言っている以上、映画館側のルールを守らなかったことになり、削除してくれと言われても仕方ありません。
(Q2) 有名人と並んで撮った写真を、その有名人に無断で自分のブログにアップした。
(A) 著作権の侵害にはならない。
この場合の著作物は「写真」であり、著作権は写真を撮った人に帰属します。したがって、「その有名人に無断」でブログにアップしたからといって、著作権の侵害ということにはなりません。しかし、有名人にも肖像権があり、その有名人から載せるのを止めてくれ、と言われたらアップを止める必要があります。この場合、俳優などはもともと顔を売る商売ですからプライバシー権は制限されますが、肖像権のうち、特にパブリシティ権が問題となります。
(Q3) 人気アニメのキャラクタをコピーし、プリントした自分のTシャツを着て街を歩いた。
(A) 著作権の侵害にはならない。
この程度で終わっていれば、個人利用の範囲となり著作権の侵害にはなりません。しかし、これで終わらず、「それ気に入ったから譲ってくれ」、と言われ、他人に販売したり、Tシャツに、キャラクタと一緒に自分の経営しているお店の名前等を表示したような場合には、個人利用の範囲を超え、著作権の侵害になります。
(Q4) 有名なタレントのトークショーを無断でICレコーダで録音した。
(A) 著作権の侵害にはならない。
個人利用の範囲となります。しかし、上記の映画館の場合のように、事前に「録音をご遠慮下さい」というアナウンスがあれば、主催者側のルールを守らなかったことになり、消去してくれといわれても仕方ありません。
(Q5) 本屋で、自分の携帯電話により、レシピのページを次々と撮影した。
(A) 著作権の侵害にはならない。
個人利用の範囲となります。しかし、これでは本が売れなくなります。実質、窃盗に近いかもしれませんが、本を盗んだわけではないので窃盗にはなりません。いわば法律(著作権法)がこの状態を想定していないということでもあり、いずれ何らかの法改正がなされるかもしれません。いずれにしても、マナー違反であることは間違いなく、このような行為は避けるべきでしょう。