“なんとなく統制”から脱却するための内部統制とリスク管理|小さな会社でも始められる経営の土台づくり
前回、リスクマネジメントとは「起こるかもしれない危険をあらかじめ考えて、安心できるように工夫しておくこと」と説明しました。
この「あらかじめ」という点が非常に重要なのですが、実際には十分に取り組めていないのが現状ではないでしょうか。
導入が進まない背景には、次のような要因が考えられます。
① 経営資源の不足
・人手不足:専任のリスク管理担当者や法務・総務部門が存在しない。
・時間不足:日々の営業や生産に追われ、将来のリスクを検討する余裕がない。
・資金不足:予防策や保険、BCP(事業継続計画)の整備にコストをかけられない。
② 意識の問題
・「うちには関係ない」という楽観:大企業に比べ規模が小さいため、災害やサイバー攻撃などのリスクを軽視しがち。
・経験依存型の経営:経営者の経験や勘に頼り、体系的なリスク管理が後回しになる傾向。
③ 情報・ノウハウ不足
・リスクマネジメントに関する知識やツールを持っていない。
・相談できる専門家やネットワークが乏しい。
しかし、こうした取り組みを後回しにし続けると、次のような深刻な問題を招きます。
① 損失の拡大
・災害・事故・トラブルが発生してから慌てて対応すると、被害が拡大しやすい。
例:サイバー攻撃で顧客情報が流出 → 信用失墜 → 補償・訴訟費用による経営悪化
② 経営の継続性への脅威
・中小企業は財務的な余裕が少ないため、一度の大きなトラブルで倒産リスクが高まる。
例:主要取引先の倒産に備えていない → 売掛金未回収による資金ショート
③ 信頼の低下
・顧客、取引先、金融機関から「リスクに弱い会社」と見なされ、信用や取引条件が悪化する。
④ 人材への悪影響
・トラブル発生時に社員が過重労働を強いられる。
・再発防止策がないと「また同じことが起きる」と社員のモチベーションが低下する。
成長期の企業にとって、売上や拡大戦略に目が向きがちですが、その土台を揺るがすのが予期せぬリスクです。リスクマネジメントは「コスト」ではなく「成長を守る投資」です。 小さな一歩でも構いません。まずは身近なリスクを洗い出し、優先度をつけて対策を始めることが、持続的な成長につながります。経営者自らが意識を変え、社員とともに「備える文化」を築くことが、中小企業の未来を守る鍵となります。
※過去関連コラム【リスクマネジメントとは?】 https://mbp-japan.com/kyoto/tam-smec/column/5203452/



