ファイナンシャルプランナー(FP)の役割とは

伊藤俊輔

伊藤俊輔

テーマ:FP全般

 日本FP協会のwebによると、ファイナンシャルプランナー(FP)とは「相談者の夢をかなえるパートナー」とされています。
 もう少し具体的には「夢や目標がかなうように総合的な資金計画を一緒に考え、サポートする専門家」と書かれています。

 <参照web>
  日本FP協会 FP(ファイナンシャル・プランナー)とは?
   http://www.jafp.or.jp/confer/about_fp/(161105再リンク)
   http://www.jafp.or.jp/learn/fptoha.shtml(旧リンク)

 「夢や目標がかなうように」というのは一般的に意味合いが広すぎてわかりにくいと感じますので、私の考える「FPの役割」を少し異なる視点でお伝えしたいと思います。


 FPは 「相談者が純資産を着実に増やす」 もしくは 「相談者が純資産を適切に管理する」 ためのお手伝いをする専門家だと思って日々の業務に取り組んでいます。

 もちろん「夢や目標がかなうように」は大前提として間違いないかもしれません。でも、日々生活しているなかで接する表現として、夢や目標は身近ではないと感じます。

着実に増やす・適切に管理する

 着実に増やす・適切に管理する「純資産」とは何でしょう。

 純資産とは、預貯金や自宅などのプラス資産から住宅ローンや奨学金などのマイナスの資産(借入金)を差し引いた、家計における正味の財産です。

 住宅ローンを組んでいない、自動車ローンもない、奨学金も返し終わった。
 こういった方々は、預貯金など=正味の財産となります。

 住宅ローン・自動車ローン・奨学金などがある場合には、手元にある預貯金などから
 これらの借入金額を差し引いた額が現時点における正味の財産です。

    正しくは土地・建物や自動車にも評価額があり、売却すれば現金化できます。
    とはいえ、私が相談をお受けしている普通の会社員や自営業の方々にとって
    自宅やマイカーを現時点や近い将来において現金化するという考え方は
    なじみませんので、日々の管理においては都合上省略しています。


 プラスの資産やマイナスの資産という表現を使うと、いわゆる資産家の方々が対象であって、自分自身や家族には関係のないことだと判断されてしまうかもしれません。
 毎年・毎月・毎週・毎日、時々刻々と変化する家計の状況をどのように把握し、純資産を着実に増やす・適切に管理するのか。この考え方は額の大小に影響を受けるものではありません。

第一は現状把握

 京極・出町FP相談では「家計の資産表【B/S】」を使って、項目の整理を進めます。

    B/Sとはバランスシート(貸借対照表)です。
    企業の財務を確認するための考え方をシンプルに家計でも活用します。


 まずはプラスの資産から。

 普通預金や定期預金は1円や10円単位の把握は省略してでも、とにかくすべての口座に残高がいくらあるのかを確認するところから始めます。ひと言で表すと、すべての通帳を記帳するということです。

 投資信託・株式・外貨などをお持ちであっても考え方は同じです。現時点でいくらあるのか。当時いくらで購入したのかではありません。あくまでも現時点での額を確認します。iDeCo(個人型確定拠出年金)も同様です。
 また、お金の貯まるタイプの生命保険も同じです。現時点でいくら貯まっているのかを確認します。

 社内預金・財形貯蓄、持株会、確定拠出年金(企業型)なども当然ながらご自身の資産です。現時点での額が仮につかめなければ、確認できる直近の金額情報で問題ありません。

 最初の段階としては項目に漏れのないように書き出すことが何よりもたいせつです。

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 次にマイナスの資産です。

 住宅ローン・自動車ローン・教育ローン/奨学金、カードローンやリボ払いなどの借入金があれば、現時点で借入残高がいくらあるのかを確認します。できれば、いつまで返済が続くのか返済終了予定日も確認しておきましょう。

 
 最後に、すぐに現金化できない(しない)けれど間違いなくお持ちの資産です。

 自宅の土地や建物、自動車やバイクなどの車両、貴金属などがあれば項目として書き出しておきましょう。理想でいえば、それらもプラスの資産として現金化した場合の額を含めるのがよいのかもしれませんが、調べるのも手間がかかりますし、手放すつもりはないとお考えのケースが多いのではないでしょうか。項目が把握できていれば問題ないと考えます。

    専門的な表現となりますが、土地は路線価(相続税評価額)、建物は固定資産税評価額を
    書いておくことで、空欄を避けることも可能です。

相談者さんそれぞれに人生観・価値観は異なります

 ファイナンシャルプランナー(FP)の役割は、これらの項目に関わる知識や情報を駆使して、どのようなスケジュールでマイナスの資産を減らし、いかにして着実にプラスの資産を増やすのか。日々の生活費・教育費・お金を掛けたい趣味などの支出とのバランスを加味して適切に管理していくためのお手伝いをする、ということになります。

 私個人の考え方として、裏技と呼ばれるような手法は好きではありません。
 ご家庭によって異なる項目を1つひとつ押さえていきます。

 ・税や控除の視点から有利な仕組みを活用できているのか。
 ・貯蓄とローン返済のバランスはどうか。
 ・明らかに必要性の高くない支出が続いていないか。
 ・まとまったお金を使うときに、資金の出所は適切な優先順位になっているのか。
 ・生命保険・損害保険は意図する保障・補償内容になっているのか。
 ・住宅を購入する際、住宅ローンの選び方や諸費用は適切か。
 ・投資性金融商品は手数料の抑えられたものを選択できているか。
 ・教育費の準備は順調か。
 ・将来資金の確保において公的年金の位置づけはどうか。


 必ずしも最適である必要はありません。
 相談者さんそれぞれに人生観・価値観は異なります。
 無責任に書くつもりはありませんが、私のお伝えする選択肢が将来的には結果として最適ではないこともありえます。

 多岐に渡る細かな項目の確認を進めるのは、「相談者が純資産を着実に増やす」 もしくは 「相談者が純資産を適切に管理する」 ためのお手伝いがFPの役割であるからです。

 日々の生活においては家庭があり、趣味があり、仕事があり、地域活動があり、時間は有限です。
 お金についても何とかしたい、ずっと気になっていると思われたとしても、ご自身やご夫婦やご家族だけでは専門性の観点から気づけない項目や、そもそもの言葉の意味を調べる時間もかかります。


 「相談者が純資産を着実に増やす」 もしくは 「相談者が純資産を適切に管理する」 ためのお手伝いをする専門家としてのFPの役割が、もっともっと広く知られるよう地道にがんばってまいります。


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■過去参照コラム
 ・ファイナンシャルプランナー(FP)に相談できること
 ・FPへ相談する際に注意したいこと

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 日々をつづった日報はブログにて。【2009年9月より更新中】

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