破産,個人再生,任意整理 ~(3)個人再生~

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:借金

(続き)

今回は,破産ができない(破産しても「免責(債務を支払わなくてもよい)」が認められない)ケースや破産が適当でないケースにつき,説明し,次に「個人再生」という制度を紹介します。

1 債務を負った事情に問題があるケース
  
「破産して,債務を支払わなくてもよい」ということになると,破産したほうは助かりますが,一方で,破産した人にお金を貸した人(債権者)は損をすることになります。

とすると,「債権者の利益も考慮して,破産を認めるのかどうかを決めないといけない」ということになります。

破産については,何度も言いますが,「債務者の再スタートのための制度」ですので,どちらかというと,破産をする側(債権者)にメリットがあるようになっていて,よほど大きな問題がない限り,破産は認められることのほうが多いです。

では,どのようなケースで破産が認められないかというと,次のようなものが代表的な事例です。

(1) 浪費やギャンブル
 
借金ができた理由が,浪費(高額の飲食や自身の収入に見合わない高額商品の購入等)やギャンブルであり,それが見過ごせないほどの金額である場合です。

最近増えているのが,ギャンブルというより,携帯等のゲームについての課金等の浪費で,これも浪費にあたります。

(2) 金券や高額商品を購入して換金

例えば,「クレジットカード等で,金券や高額商品を購入し,それを売却することで,現金を得る」ということを繰り返す人がいます。

これは,ある意味「クレジットカード会社を騙している」ようなものですので,これがあまりに多額になると,破産が認められないことがあります。

(3) 投資の失敗

例えば,「借入をして一攫千金を目指すような取引をし,失敗して,その投資金を失う。」ようなケースです。

つまり,このケースで,破産を認めれば,誰だって,「借入をして成功すれば一攫千金,失敗すれば破産で借金は返済しないで済む」と考えてしまいそうになります。

今よくあるのは,FX取引や仮想通貨,あるいは株式の信用取引等です。


以上,紹介した以外にもありますが,多いのは上の3例かと思います。

このような時にどうするのか,それは,破産ではなく,「個人再生」という手続きを検討します。

これは,簡単にいうと,「破産は原則として1円も支払わない」のに対し,「個人再生は,債務残高の5分の1か100万円か多いほうの金額を分割(基本的には3年間の分割払い)で債権者に支払い,それ以上の債務については,支払わなくてよい」という制度です。

つまり,借金が合計で300万円ある方がいるとして,破産ですと,1円も返済しないのですが,個人再生ですと100万円(300万円の5分の1は60万円ですが,100万円のほうが多いので100万円となります)だけ分割で支払っていくこととなります(もし,借金が800万円ですと,5分の1の160万円を支払います)。

個人再生については,前記の浪費等がある場合でもかなりの確率で認められることが多いのですが,一方で,逆に,圧縮した後の返済がきちんとできるのかについては,裁判所は厳密に検討してきます。

ですので,個人再生は,基本的に安定した収入がない方でないと難しいことになります。


あと,個人再生の選択をするケースとして,破産では手放す必要がある自宅を,どうしても保持しつづけたいと希望するケースです。

すなわち,個人再生は,どちらかというと,自宅を所有する方が,破産を選択するのでなく,自宅を所有したまま,他の債務を圧縮して返済し,経済的な再スタートを切るということを制度目的としている部分があります。

具体的には,自宅を所持し続けるために,自宅に関する住宅ローンは原則としてそのまま返済を続ける一方,その他の債務については,先ほど説明した形で,返済額を減額して返済していくのです。

結果,他の債務の返済が3年間で終了すると,住宅ローン以外の債務は無くなり,住宅ローンの返済は,その後もそのまま続けていくというものです。

このように「個人再生」は,上記のような特別な理由のある方には使い勝手のよい制度と言えます。

(続く)

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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