営業もコミュニケーション
ホームセンターなどでちょっとした家具を購入すると、組み立てるのに必要な「説明書」が付いています。
そして、その説明書を見ながら順番に組み立てれば、完成するようになっています。
この説明書のように、文章や図表などで明確に伝達できる情報のことを
「形式知」
といいます。
逆に、客観的な表現での伝達が難しい情報を
「暗黙知」
といいます。
介護の仕事で言うと、排泄介助や入浴介助の手順は、ある程度形式知で指導したり、情報共有できます。
でも、認知症の方の対応であったり、自立支援を促すお声掛けであったりは、暗黙知の部分が大きい。
そもそも、メンタルに関係することや、コミュニケーションに関する指導や情報共有は、形式知化しようとすると、
「心がこもっていない」「機械的だ」となりがちです。
営業のお仕事などもそう。
マニュアルを読んでいるだけのような営業トークは、聴いていて不快にさえ感じます。
なので、ベテラン営業マンほど、暗黙知のまま若手に指導してしまうんですが、
「誠心誠意対応するんだ!」とか
「もっと自然に!」
とか言われても、指導を受けている側からすれば、自分の経験値に照らし合わせて、わかる範囲の「誠心誠意」「自然」を体現するしかない。
ベテランからすれば、「なぜわからない?なぜできない?」となる。
私も今年50歳になる「おじさん」ですので、ベテランさんの気持ちはよくわかります。
だからこそ、暗黙知を上手に形式知に変換してあげてほしい。
まだまだ道半ばですが、私が伝えているコーチングコミュニケーションは、その変換の仕方が他の講師やコーチとは違うことに、最近気がついた。
もちろん、参加者全員に伝わることを目指しているものの、まだそのレベルではないので、毎回必死で準備し、工夫しています。
ある時、コミュニケーション研修をさせていただいた直後に、
「でも、難しく考えないで、自然にやったらいいよ」
と、ベテランさんが受講者さんに声を掛けていました。
「その『自然』が伝わらないから、研修しているんだけどなぁ」
と思いつつ。
「自然に」は大切です。でも、最初から自然だと、永遠にコミュニケーションは変わりません。
コミュニケーション研修は、「違和感」を持ち込みます。
自分自身が今までやってきたコミュニケーションとは違うものを持ち込みます。
その違和感に足を踏み入れないと、コミュニケーションは変わりません。
違和感のあることを継続することで、それが「自然に」なっていきます。