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拾井央雄

知的財産や技術系法務に強い理系出身の法律のプロ

拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

ペット葬祭への課税

2024年1月7日

テーマ:寺院の管理・運営

コラムカテゴリ:法律関連

宗教法人

【Q】

収益事業からの収入には法人税が課税されると聞きました。
ペットの葬儀や供養などを始めようと思うのですが、これは収益事業にあたるのでしょうか。

【A】

近年は少子化が問題になっていますが、ペットを自分の家族のようにかわいがる人が増えているようです。
それに応じて、自分のペットが亡くなったときに、人間と同じように葬儀を行い、埋葬したいと考える人も増えています。
そのため、ペット葬やペット供養の需要があり、この需要に対応する寺院も増えてきています。

しかし、従来の宗教行事の範疇から外れることもあり、収益事業にあたるのかが問題となります。
もし収益事業にあたれば、ペット葬やペット供養は法人税の課税対象となります。

これについて、参考となる最高裁判例があります。
天台宗の寺院が、ペット葬やペット供養を行っていたところ、このような葬祭業は収益事業にあたるとして、税務署が法人税を課税しました。これに対し、ペット葬祭業は宗教行為であって収益事業にあたらないと主張して、寺院が課税の取消しを求めた事案です。

この寺院は、境内にペット用の火葬場、墓地、納骨堂を設置し、引取りのための自動車数台を用意して、死亡したペットの引取り、葬儀、火葬、納骨、法要を行っていました。
また、ペット葬祭業を説明するパンフレットやホームページもありました。
このホームページ等には、「料金表」が掲載され、葬儀・火葬についての料金、埋蔵・納骨についての料金が記載されていました。

寺院側は、大乗仏教においてはすべての存在に仏性があり、ペット葬祭は宗教行為に他ならないと主張していました。

これに対し最高裁は、法人税法は、公益法人等の所得のうち収益事業から生じた所得について、同種の事業を行うその他の法人との競争条件の平等を図り、課税の公平を確保するなどの観点からこれを課税の対象としているから、

収益事業に該当するかどうかは、
①(対価性)事業に伴う財貨の移転が役務等の対価の支払いとして行われる性質のものか、それとも喜捨等の性格を有するものか、
②(競合性)宗教法人以外の法人の一般的に行う事業と競合するものかどうか
等の観点を踏まえた上で、
当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当という考え方をしましました。

そして、
本件では役務等に対して料金表等により一定の金額が定められ、依頼者がその金額を支払っているものと認められる。したがって、これらに伴う金員の移転は、役務等の対価の支払いとして行われる性質のものと見るのが相当である、
本件ペット葬祭業は、目的、内容、料金の定め方、周知方法等の諸点において、宗教法人以外の法人が一般的に行う同種の事業と基本的に異なるものではなく、これらの事業と競合するものといわざるを得ない、
このような事情を踏まえれば、宗教上の儀式の形式により葬祭を執り行っていることを考慮しても、本件葬祭業は収益事業にあたると解するのが相当と判断しました。

ペット葬祭が収益事業にあたるかは、金員の支払いの任意性に加えて、宗教法人以外の業者が行う事業との競合可能性も考慮に入れて判断されることになります。
料金の決め方や事業の内容が一般のペット葬祭業者と同じようであれば、人間の場合と同等の儀式を行っていたとしても、収益事業とされることが考えられます。

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