定年後の再雇用 ~定年制度の終焉~
本屋さんで本を買っても、本の使用許諾契約を求められることはありません。
買ってきた本を自分で読むのに誰かの許諾は必要ありません。
CDを買ったときも同じです。
買ってきたCDを聴くのに、誰かの使用許諾は必要ありません。
しかし、コンピューターのアプリケーションソフトを購入すると、ソフトウェア使用許諾契約への同意を求められます。
もちろんアプリケーションソフトには著作権がありますが、それは本やCDも同じです。
では、ソフトウェア使用許諾契約は、何を許諾しているのでしょうか。
今さらですが、コンピューターのソフトウェアには、プログラムの著作物(法第10条第1項9号)として著作権が発生します。
そして、著作権者は著作物を複製する権利(複製権)を専有します(法第21条)。
購入したソフトウェアを自分のコンピューターで実行させるにはインストールしなければなりませんから、必ずソフトウェアを複製することになります。
ただ、ソフトウェアを記録した記録媒体の所有者には、そもそも自分がコンピューターで実行させるために「必要と認められる限度」での複製が法律で認められています(法第47条の3第1項)。
そして、コンピューターにインストールしたソフトウェアを実行させるのに、著作権者の許諾は必要ありません。
ソフトウェアを実行させる権利は著作権の内容となっておらず、著作権者が専有しないからです。
したがって、「必要と認められる限度」を超えたソフトウェアの複製があった場合に著作権侵害を問うことができ、その部分での複製を認める場合が著作権の「許諾」ということになります。
一方、「必要と認められる限度」以上にソフトウェアの複製を制限したり、本来自由であるソフトウェアの実行を目的や使用する者で制限するのは、契約上の「制限」ということになります。
この制限に反しても著作権侵害は問題とならず、契約違反に問えるだけです。
ソフトウェアの利用関係を定めた契約書は、「許諾」しているのか「制限」しているのかを明確に区別することなく、ほぼ一律に「ソフトウェア使用許諾契約」という名称が付けられています。
そしてほとんどの契約は、その名前に反して著作物の利用を「許諾」するのではなく、ソフトウェアの実行を「制限」する内容となっています。
中には、「使用」や「使用権」について何ら定義することなく、「非独占的な使用権を許諾します」とだけ定めている契約も少なくありません。
著作権侵害と契約違反とでは、法的効果が異なります。
入手したひな形をなんとなく使いまわすのではなく、その条項が、本来著作権侵害となる行為を許諾しているものなのか、本来自由な行為を契約によって制限しているものなのか、常に意識しておくことが必要です。