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「収入のための残業」の削減 ~働き方改革~

拾井央雄

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テーマ:中小企業の攻め方・守り方


「収入のための残業」

政府の推進する「働き方改革」では、働き過ぎを防ぐための労働時間法制の見直しとして、残業時間の上限を、原則として月45時間、年360時間とする法改正が行われ、2019年4月1日から施行されています。
その一方で、会社から支給される残業代が従業員の生活を支えているという面もあり、むしろ従業員の側が残業を望むという場合があります。
ときには、業務多忙というわけでもないのに、ただダラダラと職場に居残っているだけのように見えることがあるでしょう。
こういう「収入のための残業」にも残業代の支払いは必要なのでしょうか。

残業は「させる」もの

労働基準法は、1日8時間を超えて労働させてはならないと定めています。
労働は、事業主が労働者に「させる」ものだという前提に立っているのですね。
そして、36協定をして労基署長に届け出た場合には、8時間を超えて労働させることができる、としています。
つまり、1日8時間を超える労働は事業主が「させることができる」ものであって、事業者がさせていないにもかかわらず、労働者が自主的にするということは想定されていません。

黙示の残業指示

それでは、残業を命じていなければ職場に残って働いている労働者に残業代を支払わなくていいのかというと、そう単純ではありません。
もしそんなことが通用するなら、評価を気にする労働者が容易に業務を放置できないのをいいことに、残業しなければ回らないほどたくさんの仕事を与えながら、残業を命じないことでタダ働きさせる狡猾な事業主がいないとも限りません。
したがって、明示的な指示だけでなく、黙示の指示によって行う残業についても、残業代の支払いが必要とされています。

そして労働者が自発的に残業している場合に、管理職がこれを中止させないで黙認していることは、黙示の指示が認定される事情になります。
管理職が労働者の終業時刻を現認せず、タイムカードの打刻のみに任せていたため残業していることを知らなかったとしても、そのような体制を継続していたことを以て残業を黙認していたとされる可能性があるため、注意が必要です。
また、自己申告で労働時間を把握している場合、たとえ労働者が残業を申告していなかったとしても、任せていた業務量が残業を前提としていたような場合、黙示の指示が認定される可能性を否定できません。

「収入のための残業」を削減するために

厚労省が策定した労働時間の適正な把握のためのガイドラインでは、使用者による労働者の始業・終業時刻の確認方法として、原則的に使用者が「自ら現認」することとしています。
また記録方法としては、タイムカード等による「客観的な記録を基礎」とするとしています。

事業者にとって必要のない「収入のための残業」をなくすには、労働者の労働時間と与えている業務量とをきちんと把握し、業務量を超えて残業している場合には黙認せず帰宅させるなどの指示が必要と言えるでしょう。

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拾井央雄
専門家

拾井央雄(弁護士)

京都北山特許法律事務所

エンジニア15年〜弁理士5年と弁護士としては異例の経歴を持ち、技術系分野に精通。知的財産や技術系法務のエキスパートとして数多くの事業者を支援。また自身が住職である立場から宗教法人のサポートも手掛ける。

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