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【宗教法人の管理・運営(15)】  -仮役員-

拾井央雄

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テーマ:寺院の管理・運営

第3節 仮代表役員及び仮責任役員
(選定)
第14条 代表役員又はその代務者は、この法人と利益が相反する事項については、代表権を有しない。この場合においては、代表役員以外の責任役員のうちから、責任役員会において仮代表役員を選定しなければならない。
2 責任役員又はその代務者は、その責任役員又は代務者と特別の利害関係がある事項については、議決権を有しない。この場合において、議決権を有する責任役員又はその代務者の員数が責任役員会における当該事項に係る議決数に満たないこととなったときは、竹輪宗の規定に従って他の寺院の住職の職にある者及びこの寺院の檀信徒のうちから、責任役員会においてその議決数に達するまでの員数以上の仮責任役員を選定しなければならない。

宗教法人

代表役員と利益相反事項

代表役員は、当該宗教法人と利益が相反する事項については、代表権を持ちません(法21条1項)。
その場合、仮代表役員を選任することになります。

住職でない人を仮の代表役員にするわけですが、その選任方法は、規則の定めによることとされています(法21条1項)。
したがって、選任方法を規則に定めておかなければなりません。

「利益が相反する事項」とは

「利益が相反する事項」とはどういうことを言うのでしょうか。

「利益が相反する事項」には、例えば、
・当該宗教法人と代表役員との間の財産の売買
・代表役員が当該宗教法人から金銭の貸付けを受けること
・代表役員個人の債務について当該宗教法人の財産を担保にすること
・代表役員個人の事業に当該宗教法人の財産を無償で利用させること

などが挙げられます。

平たく言えば、宗教法人が損をしたら代表役員が得をする関係を言います。
逆に、代表役員が損をして宗教法人が得をする場合はどうなるのでしょうか。

この場合も利益が相反するように見えますが、宗教法人に不利益を生ずるおそれがない場合は、「利益が相反する事項」に該当しません。

例えば、
・代表役員個人の財産を当該宗教法人に贈与する場合
・代表役員個人が当該宗教法人の債務について保証する場合
・代表役員個人が当該宗教法人に無利息無担保で金銭を貸し付ける場合

などです。

登記について

仮代表役員は特別な事情がある場合の一時的な機関ですので、登記の必要はありません。

責任役員と特別利害関係

責任役員も、その責任役員と特別の利害関係がある事項については、議決権を持ちません(法21条2項)。
そのため、議決権を有する責任役員の員数が議決数(過半数、特別多数)に満たない場合は、仮責任役員を選任することになります(法21条2項)。
特別な利害関係があれば必ず選任するというわけではありません。

仮責任役員の選任方法は、規則の定めによります(法21条2項)。
ですから、一人でも特別利害関係があれば必ず仮責任役員を選任する、と決めておくことも可能です。
もっとも、この法人ではそのような規定にしていません。

「特別の利害関係」とは

「特別の利害関係」と「利益が相反する事項」とは違うのでしょうか。

「特別の利害関係」は、上記「利益が相反する事項」よりも広い意味です。
・解任決議において対象となっている責任役員
・当該宗教法人と特定の責任役員との間の訴訟に関する事項
・特定の責任役員の報酬・退職金に関する事項

などが考えられます。

一方、 責任役員全員の報酬に関する場合は該当しません。
また代表役員に選任される場合の責任役員も該当しないという判決があります。

同法は右代表役員を互選する場合における責任役員の立場は、その者が代表役員の候補者に擬せられたときでも、議決事項に対して特別の利害関係を有する場合には当たらないとの見解に立つものと考えるのが相当である。(東京高判昭53・2・28)

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拾井央雄
専門家

拾井央雄(弁護士)

京都北山特許法律事務所

エンジニア15年〜弁理士5年と弁護士としては異例の経歴を持ち、技術系分野に精通。知的財産や技術系法務のエキスパートとして数多くの事業者を支援。また自身が住職である立場から宗教法人のサポートも手掛ける。

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