【宗教法人の管理・運営(17)】 -役員の解任-
(責任役員会及びその職務権限)
第10条 責任役員は、責任役員会を組織し、次の各号に掲げるこの法人の事務を決定する。
一 予算の編成
二 決算(財産目録、貸借対照表及び収支計算書)の承認
三 歳計剰余金及び予算外収入の処置
四 特別財産及び基本財産の設定及び変更
五 不動産及び重要な動産に係る取得、処分、担保の提供、その他重要な行為
六 主要な境内建物の新築、改築、増築、模様替え及び用途変更等
七 境内地の模様替え及び用途変更等
八 借入れ及び保証
九 事業の管理運営
十 規則の変更並びに細則の制定及び改廃
十一 合併並びに解散及び残余財産の処分
十二 その他この規則に定める事項
十三 この法人の事務のうち責任役員が必要と認める事項
2 責任役員会は、代表役員が招集する。ただし、責任役員の定数の過半数から招集を請求されたときは、代表役員は、速やかに招集しなければならない。
3 責任役員会の議事は、この規則に別段の定めがある場合を除き、責任役員の定数の過半数で決する。
4 責任役員会における責任役員の議決権は、各平等とする。
5 会議には、議事録を作成する。
*責任役員の職務権限は規則記載事項である(法12条1項5号)。
《責任役員会》
・ この定めにしたがって、責任役員は宗教法人の事務を決定する(法18条4項)。
・ 責任役員会に関し、とくに法律の定めはない。
しかし、法19条の規定からして、事務を決する会議体として責任役員会を設けることが前提と考えるべきである。
・ 持ち回り決議も可能であるが、一堂に会して意見調整のうえ事務を決定するのが基本であることは言うまでもない。
・ 議事録の備え付け義務が法定されている(法25条2項5号)。
・ 規則で諮問機関の諮問を経ることになっている場合は、その手続きがなければ決定できない。
・ 規則に別段の定がなければ、宗教法人の事務は、責任役員の定数の過半数で決し、その責任役員の議決権は、各々平等とする(法19条)。
・ ある責任役員と特別の利害関係がある事項について、その責任役員は議決権を有しない。
仮責任役員を選任することになる→規則14条。
《Q&A》
質問1
当宗教団体では、すべての信者で構成する総会において、団体の事務を決定します。
責任役員という少数の者による決定が、総会の決定よりも優先されるなど考えられません。
総会によって事務を決定するというように規則で定めることはできますか。
回答1
信者総会というものを設けて、ここで何らかの決議をすることが認められないわけではありません。
諮問機関として信者総会を設け、その決議を経たうえで責任役員会が事務を決定するという規則を設けることも可能です。
この場合、総会の決議なく責任役員会で事務を決定することはできないことになります。
しかし、総会の責任役員による事務決定権を奪うような規則は、宗教法人法18条に違反します。最終的に責任役員会で認められなければ、事務の決定はできません。
ただし、ここでいう事務とは財産管理など世俗的な事項に関する事務であり、宗教上の事務(儀式の執行など)の決定は、責任役員会の権限ではありません。
質問2
責任役員会で包括関係を廃止するという決議がされました。しかしこれは、責任役員らが議決権を濫用してしたものであり、しかもきちんとした会議の手続きもとられていません。新しい責任役員を選任したので、当法人から旧責任役員に対して決議無効確認訴訟を提起したいと考えていますが、できますか。
回答2
この場合、法人が原告となって訴訟を提起することはできません。当該決議は法人の決議としてなされていますから、逆に法人を被告として、この決議によって法的地位の左右される人が原告として訴訟を提起すべきです。