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加藤俊光

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加藤俊光(かとうとしみつ) / 行政書士

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

コラム

『格安』には常に『リスク』あり? 相続業務も同じです! 

2012年5月9日 公開 / 2018年9月21日更新

テーマ:ちょっとひと息つく時間【平塚|行政書士のひとりごと】

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

 大型連休の始まった先月29日の未明に、関越自動車道で乗客45名を乗せた高速ツアーバスが道路左側の防音壁に激突し、うち7名の方が亡くなる大惨事が発生しました。報道によれば直接の原因は運転手の居眠りのようですが、全くあってはならない事故であり亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方の一日も早い回復を願うばかりです。

 今回の事故を契機に、様々な立場から高速ツアーバスの問題点が指摘されていますが、私は高速ツアーバスに限らずに、身の回りにある『格安』な商品・サービス全般について、ひとりひとりがよく考えなければならない時期に来ているのではないかと捉えています。

 例えば、今回の高速ツアーバスでは、金沢駅から東京まで乗車した場合で、片道3500円だったそうです。とすれば、45人乗車しても15万7500円の売り上げにしかならないことになります。募集企画をした旅行会社や、バスを運行する会社があって、しかも高速道路通行料や燃料代、はたまた車両の維持・整備費用や運転手の人件費を考えれば、この金額で本当に採算がとれるのか疑問です。

 そういえば、生肉のユッケによる集団食中毒を引き起こした焼き肉チェーン店も、びっくりするくらい安い値段を掲げていたと記憶しています。『安物買いの銭失い』ということわざがありますが、お金を失うくらいならまだしも、命まで落としてしまっては元も子もありません。どんな商品やサービスでも、それに見合っただけの適正な価格というものがあるはずであり、びっくりするような『格安』な値段を掲げているのは、常にそれなりに理由があるとともに相応の『リスク』と隣り合わせであることを覚悟する必要があるようです。

 そんな『格安』における思わぬリスクについては、実は私たちのような士業と呼ばれる専門家にも同じことが言えるのです。私は、相続・遺言業務に特化した事務所を運営していますが、世の中にはこの相続・遺言業務でも『格安』料金を掲げている事務所があるのです。

 例えば、『遺産分割協議書作成料金 5万円』などと謳っている事務所を時々見かけることがあります。

 実は、私はそのような広告を見るたびに信じられない思いを感じていました。私の経験上ですが、当事者の話し合いを円満にまとめて遺産分割協議書を作成するには、どうしても6か月程度は必要になります。5万円でどうして採算がとれるのか、いくら考えても私にはどうしてもわかりません。

 また、ある税理士は遺産分割協議書作成を10万円で引き受けているようです。しかし、その税理士の対応はひどいもので、ひとりの相続人の話だけを聞いてすぐに遺産分割協議書を作成してしまい、『あとは皆さんで話し合ってください。話し合いがまとまらなくても、こちらでは一切責任を負いません』といった信じられない対応をしているようです。

 いつもお話ししていることですが、遺言がなければ法定相続が原則であり、相続人全員に平等に権利が発生することになります。この原則を理解したうえで、話し合いをスタートしなければならないのですが、先の税理士のようにひとりの相続人の言い分だけを聞いて遺産分割協議書を作成してしまったりすれば、他の相続人には当然ながら不信感や反感を持たれてしまう可能性があるのです。事実、この事例では、私のところに『兄貴が勝手に税理士に頼んでこんな遺産分割協議書を作ってしまって、兄弟に署名捺印をするように言ってるのですがどうしたらいいでしょうか』とご相談においでになられたことで明らかになりました。

 確かに、相続では命を落とすようなことはまずありませんが、このようにいい加減な対応をすることで相続人同士が本来しなくても済んだはずの不毛な感情的対立を招いてしまい、相続が争続となってしまうケースが急増しています。きちんと順序立てて話し合いをする土台を整えれば当事者の話し合いで速やかに円満に解決することができるのです。私に言わせれば、裁判所で何年にもわたって相続争いをすることは、無益であり本当に無駄なことです。『安物買いの銭失い』ということわざは、相続手続を依頼するにあたっての専門家選びにもよくあてはまります。

 私どものような法律専門職のサービスも、それに見合っただけの適正な価格というものがあるのであって、びっくりするような『格安』な値段を掲げているのは、常にそれなりに理由があるとともに相応の『リスク(相続が争続となってしまう危険)』と常に隣り合わせであることを、ひとりでも多くの方に知っていただきたいと思っています。
 

この記事を書いたプロ

加藤俊光

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加藤俊光(相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所)

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