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長期化・泥沼化してしまう調停や訴訟! 相続トラブルは決して他人事ではありません!

加藤俊光

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テーマ:時々雑感【平塚|法律専門職の視点】

 漫画家でタレントの江川達也さんが、1999年に死去した父親の遺産相続分を受け取っていないとして、兄を相手取って3250万円の返還を求めた訴訟において、支払いを命じた判決を不服とした兄側が控訴をしたというニュースを読みました。

 父親が亡くなったのが15年前、その後数年にわたって裁判所で遺産分割調停を試みるも結局合意に至らず、2009年に弟が兄を相手取って訴訟を起こしたが、それを不服とした兄が控訴をしたというのがこれまでの大まかな経過のようです。このケースでは、遺産分割調停がどのくらいの期間行われていたのか明らかではありませんが、お父さんが亡くなられたのが15年前で、弟が提訴したのが父の死後10年ということから考えても、おそらく遺産分割調停の一般的な年数である3年から5年程度は行われてきたと見るのが妥当なところでしょう。そして、09年に提訴された第一審におよそ3年近くかけて、さらに今度は控訴審に舞台を移して審理するということですから、解決までにはいったい何年かかることでしょうか。

 裁判所に持ち込まれる遺産分割調停は増加の一途をたどり、残念ながら年間1万件を超えるようになってしまいました。しかも、調停申立のうちのおよそ半数以上が遺産額が2000万円以下であるそうです。このデータを見ても、もはや相続争いは遺産が少ないほど揉めやすく解決が難しいということを如実に物語っていると言えやしないでしょうか。

 思うに、誰が何を相続するかの話し合い、いわゆる遺産分割協議は今後ますます難しくなる一方であり、相続人同士で冷静に話し合いができるケースはほとんどなくなっていくことでしょう。

 とすれば、相続トラブルの原因である誰が何を相続するかの話し合い、いわゆる遺産分割協議をすることなく相続手続を進めることができれば、相続トラブルはほぼ未然に回避できるはずです。

 でも、そんなうまい方法なんてあるのでしょうかと聞かれたら、私は、たったひとつだけですがあるんですと答えることができます。

 それは、①すべての相続人に対して十分な配慮をした遺言書を公正証書にしておいて、②遺言書の中で遺言執行者を指定しておき、③遺言公正証書の正本を遺言執行者に預けておくことです。そして、遺言書を保管する遺言執行者は相続人のどなたかがおやりになるのは絶対に避けて、私どものような専門家に依頼することが大切なポイントです。

 このようにしておけば、遺言者が亡くなった場合に、遺言執行者は速やかに遺言の執行(遺言書に書かれた内容を実現すること)に入ることができます。遺言執行者は、各相続人に対して必要に応じて説明し協力を求めることになりますので、相続人同士で『誰が何を相続しようか』と話し合いをする必要がなくなります。相続人同士で遺産をめぐって話し合う必要がないのですから、遺産の分け方はもちろん感情的な対立なども起こる可能性は極めて低いと言えるでしょう。

 確かに、振り込め詐欺にしても、交通事故にしても、自分だけは大丈夫と考えてしまう人がいるのは事実です。同じように、相続トラブルにしても『うちは相続争いなど起きるはずがない』あるいは『自分の亡くなった後は残された家族がうまくやってくれるはずだ』と考えてしまうのもひとつの考え方です。しかし、私に言わせれば『物事を冷静に客観的に捉えることのできない人』あるいは『残された家族に対する配慮など全く考えない人』なんだなという印象を持たざるをえません。だって、きちんとした遺言さえあれば、ご自身が亡くなった後で何年にもわたって相続人同士が遺産をめぐって裁判所でみにくい争いをするような事態をほぼ完璧に防ぐことができるのに、その手立てを打つ自らの責任から逃げて自分だけ先に逝ってしまうわけですから。

 これからも私は、ひとりでも多くの方を相続トラブルに遭遇させないためにも、ひとりでも多くの方に『争わないための遺言書』のご提案をし続けていきます。

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加藤俊光
専門家

加藤俊光(行政書士)

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

単身者・子どものいない夫婦世帯が人生の最終章で直面する介護や医療、金銭管理、死後の事務手続、お墓、ペットなどの切実な問題に寄り添い解決。地元の在宅医療・介護の専門職と密接な連携が取れる体制にも自信あり

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