高齢者を支える法律専門職として、『在宅ケアフェスタ IN ひらつか』に出展いたしました
『年間で約32000人』 いったい何の数字でしょうか。これは、誰にも看取られることなくこの世を去っていく人の数であり、いまこの日本で現実に起きていることなのです。
先日、ある訪問看護師からいま訪問看護の現場で起きているお話を伺う機会がありました。少し前のことですが、80代後半のお独り暮らしの女性が亡くなったそうです。彼女はすでにご主人に先立たれており、またお子様もいらっしゃいませんでした。兄弟姉妹は8人いたそうですが、そのうちの数人はすでに亡くなっておりまた交際のある方もみなご高齢になっていました。
そこで、彼女は2年前に体調を崩されたときに、今後のことを考えて生前整理をはじめました。まずは、①必要以上に延命治療はせず、また可能な限り在宅で医療を受けることや、②療養はもちろん葬儀なども高齢の兄弟姉妹を頼ることはできないため、それぞれの分野の専門家へ依頼すること、③残った財産はすべて本人がとりわけ関心をもっていた盲導犬育成の社会福祉事業に寄付をすることなどを決められたそうです。
その後の彼女は安心して残りの人生を過ごされたそうです。在宅医療に理解のある医師や訪問看護師、ヘルパーなどの援助を得ながら、ご主人との思い出がたくさんつまったご自宅で最期を迎えるのでした。
彼女は、誰にも看取られることなく、たったひとりで自宅の布団の中で息を引き取られてから数時間後に、毎日様子を見に来てくれるヘルパーさんによって亡くなったことが発見されました。すぐに医師によって死亡が確認されて、その後民生委員や遺言執行者の協力で葬儀が行われてこの世を去られたそうです。
人は誰しもひとりで生まれてきて、そしてひとりで旅立っていくと言われますが、本当に誰にも看取られずに人知れずこの世を去っていくという現実が身近にあることを改めて思い知らされました。彼女はどんな想いで最期のときを迎えたのだろうか、そして最期に彼女が見たものは何だったのだろうか。私にはとても他人事として片づけてしまうことはできません。
このような事例は今後もますます増加することでしょう。私は、法律専門職である前にひとりの人間として、何かお手伝いできることはないかと考えています。私ひとりではできることは限られているかもしれませんが、私ども法律専門職の知識や経験を何かの参考にしていただけるようでしたら喜んでご提供したいと感じました。
私は、日本全国から、そうでなくともせめて私の周囲から、『誰にも看取られることなく、人知れずこの世を去っていく』方をなくしていきたい。そのためにも、これからはもっと医療関係の方や福祉関係の方と密接な関係を築きながら『素晴らしい人生のエンディング』のお手伝いをさせていただきたいと願っています。
そのためにも、これからも私は、ひとりでも多くの方に『遺言書のご活用による生前整理』のご提案をし続けていきます。