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加藤俊光

おひとりさま・おふたりさまの様々な悩みに寄り添う行政書士

加藤俊光(かとうとしみつ) / 行政書士

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

コラム

あの時遺言書を書いておけば・・・ 相続トラブルを防ぐチャンスを逃した残念な事例

2011年12月26日 公開 / 2019年1月25日更新

テーマ:円満解決の極意【相続相談の現場から】

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き退職 手続き遺言書 書き方

 今月は今年最後の『拡大無料相談会』として土・日の2日間にわたって開催いたしました。今年一年間途切れることなく定例無料相談会を続けてこられたことに感謝するとともに、年末のご多忙な時期にもかかわらず、ご予約をいただいた皆様においでいただきましたことにお礼申し上げます。

 80代前半の女性が、『どうにかならないものでしょうか・・・・』とご相談においでになりました。お話をうかがうと、3年ほど前から入退院を繰り返している2歳年上のご主人の体調がかなりお悪くなっており、最近になって2人の息子さんたちがご主人の亡くなった後の相続を当てにするようなことを口にするようになっているのだが、いまから何か準備をすることはできないでしょうかとのことでした。

 この方の場合も、ご主人が亡くなった場合の相続財産はいまお住まいになっている土地・建物とわずかな預貯金のようですが、実は最近このような方に相続トラブルが急増しているのです。

 なぜなら、遺言がなければ法定相続が原則となるのですが、かなり広大な土地・建物をお持ちの方ならばいざ知らず、一般的な土地・建物の場合において法定相続分通りに分割することは現実的にはほぼ不可能だからです。とはいえ、相続人のどなたか(多くの場合は現在そこにお住まいになっている方)が土地・建物を相続するということになれば、他の相続人と遺産分割協議をする必要が出てきます。預貯金がそれなりにあればお互いに譲り合いもしやすくなるのでしょうが、預貯金がほとんどない状態で相続人同士が譲り合えない場合には、最終的には唯一の相続財産である土地・建物を売却して分けるしかないという事態にもなってしまうのです。

 そこで、このような事態を未然に防止するための唯一の方策として、私はいつも『争わないための遺言書』をお書きになることをお勧めしています。いま現在、その土地・建物にお住いの方が今後も住み続けることができるようにするとともに、他の相続人の遺留分にも配慮した遺言書を作成しておけば、唯一の土地・建物を売却して分けるしかないという相続トラブルは確実に回避できると断言できるからです。

 しかしながら、今回ご相談においでになった方は、すでにご主人の認知症が相当進行しているとのことでしたので、残念ながら『争わないための遺言書』はもう書くことができないと判断しました。20年ほど前にご主人が会社を退職された際に、『遺言を書こうか』というお話もされたことがあったようですが、その時には『今すぐ書こう』ではなくて『そのうち書こう』となってしまい、結局は書かずにいるうちに認知症になってしまったとのことでした。認知症になってしまった以上、遺言書を書くことはできず、残念ながらこの方は相続トラブルを未然に防ぐことはもはやできないと言わざるを得ないのです。

 確かに、『あまり早く遺言を書いても、その後に状況が変わることもあるのではないか』と質問されることがあります。

 しかし、人間がいつ亡くなるかは誰にも分かりませんし、生きている以上、状況が変わっていくのは当然であり、状況が変わらなくなるのを待っていたら、おそらくいつまでたっても遺言を書くことはできないでしょう。

 思うに、遺言は生命保険やがん保険などと同じように、起こるべきリスクに対して早い段階から対策を立てるために書くものです。

 とすれば、『遺言を書こう』と思った時こそがまさに『遺言を書くべき時』であり、その後の状況の変化に対しては、必要に応じて遺言の内容を見直していくしかないと言えます。

 遺産分割協議の実務に携わっていると、『遺言があればこんな不毛でみにくい相続トラブルは起きなかっただろうに』と感じることが多々あります。もちろん、遺言を書くかどうかはご自身の判断ですが、もしも『そろそろ遺言を書いたほうがいいのかな』あるいは『自分も遺言を書いてみようかな』とお考えになった時には、まさにその時が『遺言を書くべき好機』ととらえていただきたいのです。

 私は日本全国から、そうでなくともせめて私の周りから、相続トラブルに巻き込まれてしまって『あの時遺言を書いておけばよかった』と後悔される方をなくしていきたい。そのためにも、私自身もすでに遺言を書きました。弊事務所においでいただければ、私の遺言原案をお見せしながらあなたにとって最良の遺言とするにはどうしたらいいか、惜しみなくすべてお話しをさせていただきます。

 これからも私は、遺言者の想いを理解できる相続・遺言の法律専門職としてひとりでも多くの方に『元気なうちに遺言書を書くこと』のご提案をし続けていきます。
 

この記事を書いたプロ

加藤俊光

おひとりさま・おふたりさまの様々な悩みに寄り添う行政書士

加藤俊光(相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所)

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