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加藤俊光プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

きょうだいにはハンコ代で充分というのはちょっと自分本位では!? だって遺言がないのですから!

加藤俊光

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テーマ:円満解決の極意【相続相談の現場から】

 今月も無事に『相続・遺言に関する無料相談会』を終えることができました。前日の雨も上がっていいお天気になった日曜日でしたが、ご予約いただいた皆様においでいただいたことにお礼申し上げます。

 60代の男性が、『先日、父の四十九日も無事に済ませたので、そろそろ兄弟と遺産相続の話をしようと思う』とご相談においでになりました。お話を伺うと、遺言がないこと、お母様はもうずいぶん前に亡くなっており長男であるこの方のご家族と同居していたこと、相続人はこの方と弟さんが2名の合計3名であるということのようでした。

 ところが、この方は『財産はすべて長男である自分が相続する。ハンコ代はいくらぐらいにしたらいいのか教えてほしい。そして、自分が全財産を相続するのだから相続財産がいくらなのかは兄弟たちに教えないで手続きを済ませたい』とおっしゃいました。

 実務に携わっていると、いまだにこのような考え方をする人と出会うのが現実です。

 確かに、お父様と同居されて面倒を看られたこと、早くにお母様を亡くされて長男としてのご苦労が多々おありになったことを考えれば、私も決してこの方のお気持ちが理解できないわけではありません。

 しかし、遺言がない以上法定相続が原則であり、結果的に相続人の間で相続する財産に多い少ないの差が生じることはあっても、少なくとも誰が何を相続するかの話し合い、いわゆる遺産分割協議を始める段階では相続人全員に平等に権利があることを前提にしなければ、まとまるものもまとまらなくなるばかりか相続人同士で不毛な感情の対立が起こることも容易に想定できます。

 思うに、遺産分割協議は相続人全員が満足するための場ではなくて、相続人全員が少しずつ不満を引き受ける場としなければ決して当事者の話し合いによる解決は望むことができません。

 とすれば、まずは相続財産がいくらだったのかを明らかにすることは当然のこととして、ご長男が今後も家やお墓を守っていくという負担を引き受ける代わりに二人の弟さんには法定相続分よりも少ない相続となってしまう不満を引き受けてもらうのがあるべき姿であり、多少不満は残るけれどもまあ仕方がないなと収めてくれる可能性があると考えます。これこそが、実は当事者の話し合いで速やかに円満に相続問題を解決することに他ならないと言えるのではないでしょうか。


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 したがって、私は以上のような自分自身の考え方をお話しし、私の方針に同意していただけるのであればお引き受けいたしますとお伝えして面談を終了させていただきました。

 世の中には、相続・遺言業務に携わっている専門職は世の中に数多くいます。非常に残念なことですが、おそらくこの自分本位な相談者の言いなりになってしまい、相続人同士の人間関係を無視した対応をしてしまう専門家もいることと思います。それは決して間違いではないのですが、到底私が理想とする『円満な相続』とは言えません。相続は、遺産を分配するという側面も持ちますが、それ以上に人間関係を適切に調整するという側面もあるのです。

 おそらく、あの相談者は私に依頼しないことでしょう。しかし、私は、この仕事を続けている限り『遺産分割協議は相続人全員が少しずつ不満を引き受ける場としなければならない』という方針を決して見失うことなく、相続人全員に理解と譲歩を求め続けていくつもりです。

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加藤俊光
専門家

加藤俊光(行政書士)

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

単身者・子どものいない夫婦世帯が人生の最終章で直面する介護や医療、金銭管理、死後の事務手続、お墓、ペットなどの切実な問題に寄り添い解決。地元の在宅医療・介護の専門職と密接な連携が取れる体制にも自信あり

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