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『遺産を寄付したい』 遺言書がなくてもできますか? 

加藤俊光

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テーマ:時々雑感【平塚|法律専門職の視点】

 昨日(9月28日付け)の朝日新聞の国際面の下部にこのような広告が掲載されました。
 


 ご自身が亡くなった後について、葬儀や埋葬などの在り方とともに、相続財産についても例えば環境問題や障がい者の福祉問題などに貢献するための団体などに寄付をしたいといった要望をお持ちになる方は、おそらく今後も増えることと捉えています。このようなご要望をお持ちの方はもちろん、今後お考えになられる方にぜひお伝えしたいことがあります。

 それは、このような立派な想いはご自身の胸の中に秘めているだけではまず実現されることはないということです。

 相続は人の死亡によって開始しますが、遺言がなければ法定相続が原則となり、亡くなった瞬間に観念的にではありますが法定相続人が法律に則ってそれぞれ相続分を相続してしまうのです。また、もしも相続人が誰もいないことが確定した場合においても、相続財産は最終的には国庫に帰属し国の財産になってしまいます。

 したがって、自らの亡き後に残された財産を寄付したい場合には必ず遺言が必要となり、現在の日本の法律では遺言なくしてこのような想いを実現することはできないのです。

 だからといって、遺言はただ書いてあればいいというものではありません。遺言は、ただ書かれただけでは誰も遺言に書かれた内容を実現などしてくれません。結局は、この世に生存している誰かが遺言に書かれた内容を実現するための手続きを講じなければならないのです。さらに、せっかく遺言を書いたとしても、残念なことにどこかへ紛れ込んでしまったり処分されてしまったりする可能性もあります。私が自筆証書遺言をお勧めしていないのは、この点が最も不安であるからにほかなりません。

 では、どうすればご自身が亡くなった後で、ご自身のご要望を確実に実現することができるでしょうか。それは、遺言を公正証書で作成しておき、その中で遺言執行者を指定しておく方法があります。そして、その時は必ず遺言公正証書の正本を相続開始まで遺言執行者に確実に保管してもらうことがポイントです(なお、遺言公正証書の原本は必ず公証役場で保管されます)。

 また、私は遺言執行者や遺言公正証書の正本の保管については、相続人のどなたかではなく利害関係のない専門家にすることを強くお勧めしています。そうすれば、せっかく作成された遺言が誰かの手によってなかったものとして扱われてしまう心配はないですし、相続開始後すみやかに遺言執行手続に入ることができるため、相続人やその関係者の間で不毛な争いが起きる余地もほとんどありません。

 私もすでに遺言を書きました。これからも私は、遺言者の想いを理解できる相続・遺言の法律専門職としてひとりでも多くの方に『争わないための遺言書』をご提案をし続けていきます。

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加藤俊光
専門家

加藤俊光(行政書士)

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

単身者・子どものいない夫婦世帯が人生の最終章で直面する介護や医療、金銭管理、死後の事務手続、お墓、ペットなどの切実な問題に寄り添い解決。地元の在宅医療・介護の専門職と密接な連携が取れる体制にも自信あり

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