【第3部】データで見るハラスメントによる損失~生産性低下・離職コストによる財務への影響~
はじめに
第2部では、欧米諸国の少子高齢化データとシニア活用の課題について解説しました。
第3部となる今回は、急速な経済成長とともに社会保障制度の再構築を進めるアジア諸国の動向に目を向けます。「豊かになる前に老いる」という課題に直面するアジア各国の施策を踏まえ、現地法人を持つ企業や外国人労働者を雇用する企業が取るべき財務・労務戦略について解説します。
アジア諸国における社会保障制度の拡充と動向
アジア諸国では、法改正による対象拡大やデジタル技術を活用した制度整備が急速に進んでいます。
| 国名 | 最新の施策・法改正動向 | 制度の主な特徴・構造的課題 |
|---|---|---|
| 中国 | 法定退職年齢の段階的引き上げ、第15次五ヵ年計画により介護保険本格導入 | 2011年に社会保険法施行、都市と農村の保険統合を推進。年金は地域経済により格差 |
| 韓国 | 少子高齢化への対応のため2025年に年金改革、国民年金保険料率を9%→13%に段階的に引上げ | 日本と同様に国民皆年金・皆保険制度、高い貧困率と低い出生率 |
| ベトナム | 定年退職年齢を2028年に男性62歳、2035年に女性60歳に段階的に引上げ | 2025年社会保険改正により年金受給資格期間を20年から15年に短縮、社会保険加入率が低迷(2020年時点31.5%) |
| インドネシア | BPJS(社会保障実施機関)による全住民皆保険推進 | 医療・労働保険の統一を目指すも、島嶼部のインフラ格差や保険財政赤字が課題 |
| インド | 国家国民医療保険「PM-JAY」とデジタルID「ABHA」の連携 | デジタルIDによる医療データの一元化、重い医療費負担と限定的な社会保障制度の対象 |
このように、これまで手薄であった新興国の社会保障制度が急速に拡充されています。
外国人材採用における財務・労務の影響
こうしたアジア諸国の制度変化は、日本企業の経営にも影響を与えます。
財務の観点では、海外現地法人における法定福利費負担の増加が挙げられます。
例えば中国やベトナムでは、法改正に伴い企業側が負担すべき社会保険料の範囲や金額が増大しており、物価上昇も相まって現地人件費の高騰要因となっています。現地での資金繰り計画において、社会保険料の増額リスクを盛り込んでおくことが不可欠です。
労務(外国人材受入)の観点では、日本国内で技能実習生や特定技能外国人などを雇用する際、母国と日本の社会保障制度の違いによるトラブルを防ぐ必要があります。社会保障協定の適用や、帰国時の「脱退一時金」の手続きなど、正確な制度理解と周知が求められます。
海外進出による労務・財務の対策
海外進出企業や外国人材を多く雇用する企業に対し、日本と同様に現地法人の法定福利費上昇を見越したキャッシュフロー計画の再検証が必要です。特に新興国では制度改正のスピードが速いため、事前のアディショナルコストを見込んでおくことが必要です。
労務目線では、外国人労働者が安心して働ける職場環境の整備が必要です。
入社時の社会保険加入手続きの丁寧な説明はもちろん、帰国時に公的年金から支給される脱退一時金の制度について案内するなど、労使間の信頼関係を構築することが優秀な人材の定着につながります。
まとめ
今回のポイントは以下の通りです。
【今回のポイント】
- アジア各国は、社会保険の適用拡大やデジタル化を急速に推進
- 海外現地法人では法定福利費の上昇に伴う人件費高騰をリスクとして財務計画に織り込む
- 国内での外国人材雇用では、日本の社会保険制度や脱退一時金に関する丁寧な労務周知が不可欠
第4部では、医療制度改革やマイナ保険証の本格運用が労務に与える影響を解説します。
【財務・労務のお悩みはマネジスタ湘南社労士事務所へ】
「自社のケースだとどうなる?」「資金繰りと人件費のバランスを見直したい」など、まずはお気軽にご相談ください。
・初回相談(30分):無料(オンライン対応可)
・お問い合わせ・ご相談はこちら:マネジスタ湘南社労士事務所HP



