【妄想コラム】もしもアイルトン・セナが老舗企業の社長だったら~信念が人を動かす経営~
はじめに
2019年4月に順次施行された働き方改革関連法は、労働環境に大きな変革をもたらしました。時間外労働の上限規制や年5日の年次有給休暇取得義務、同一労働同一賃金の原則など、企業の労務管理に直接的な影響を与える施策が次々と導入されてきました。
特に中小企業においては、2020年4月からの上限規制適用に加え、2024年4月には建設業や運送業などの適用猶予業種にも本格適用される「2024年問題」を迎えたばかりです。
そして施行から7年が経過した2026年3月13日、厚生労働省の労働政策審議会において、これまでの効果検証と今後の課題を整理した「働き方改革の総点検」が報告されました。
この報告は、経営者にとって見逃せない重要な転換点を示しています。
今回は3回にわたり、「働き方改革の総点検」をテーマに、押さえておくべきポイントを財務と労務の両面で解説していきます。
第1部では、総点検で明らかになった法改正の成果と課題を整理し、現状の認識を共有します。
働き方改革関連法の主要施策とその目的
2019年施行の働き方改革関連法の主な内容を振り返ります。
| 施策 | 内容 | 適用開始時期 |
|---|---|---|
| 時間外労働の上限規制 | 月45時間・年360時間を原則とし、臨時的な特別の事情でも年720時間・単月100時間未満、複数月平均80時間以内 | 大企業:2019年4月、中小企業:2020年4月 |
| 時間外労働の上限規制 | 月45時間・年360時間を原則とし、臨時的な特別の事情でも年720時間・単月100時間未満、複数月平均80時間以内 | 大企業:2019年4月、中小企業:2020年4月、適用猶予業種:2024年4月 |
| 年次有給休暇の取得義務 | 年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の取得を使用者が確実に取得 | 2019年4月(企業規模問わず) |
| 同一労働同一賃金 | 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止 | 大企業:2020年4月、中小企業:2021年4月 |
| 高度プロフェッショナル制度 | 高度な専門職について労働時間規制の適用除外 | 2019年4月 |
| 勤務間インターバル制度 | 努力義務として、終業から次の始業まで一定時間の休息確保 | 2019年4月 |
(出典:厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし」)
これらの施策は、「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」という3つの柱を軸に設計されました。少子高齢化が進む中で、働く人々が健康で働き続けられる環境を整備することは、持続可能な経済成長の基盤となる重要な取り組みです。
総点検で明らかになった「成果」
厚生労働省の総点検報告によれば、7年間で以下のような一定の成果が確認されています。
1.長時間労働の減少
厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、労働者の総実労働時間は減少傾向にあります。
特に月間総実労働時間が200時間を超える労働者の割合は、2018年の約15%から2025年には約11%へと減少しました。
また、週労働時間60時間以上の雇用者の割合も2018年の6.9%から2025年には5.1%へと低下しており、若年層や女性労働者において顕著な改善が見られます。
2.年次有給休暇取得率の向上
厚生労働省「就労条件総合調査」によると、年次有給休暇の取得率は2018年の52.4%から2024年には62.1%まで上昇しました 。これまで取得率が低かった中小企業や製造業、建設業などでも改善傾向が見られ、意識改革が進んでいることが示唆されています。
3.柔軟な働き方の広がり
内閣府「働き方改革に関する企業調査」(2025年)によれば、テレワークを導入している企業の割合は大企業で約70%、中小企業でも約35%に達しており、柔軟な働き方を選択できる環境が整いつつあります。
総点検で浮き彫りになった「課題」
一方で、現場では以下のような課題も指摘されています。
1.企業規模間・業種間の格差
従業員30人未満の企業における年次有給休暇取得率は約48%にとどまり、全体平均(62.1%)を大きく下回っています。また、建設業や運輸業では時間外労働が依然として多く、人手不足と業務量のバランスに苦慮している実態があります。
2.「名ばかり管理職」「隠れ残業」の問題
労働時間を正確に記録せず自宅や外出先で業務を行う「隠れ残業」や、実質的に時間外労働規制を免れようとする「名ばかり管理職」の問題が指摘されています。特にテレワークの普及が、労働時間の把握を難しくしている側面もあります。
3.同一労働同一賃金の実効性
「職務内容の違い」や「責任の程度」の判断が曖昧で、依然として待遇格差が解消されていないケースが多く見られます。中小企業では人事制度の整備に必要な専門知識やリソースが不足しているという背景もあります。
4.勤務間インターバル制度の普及の遅れ
努力義務にとどまっていることもあり、導入企業の割合は2025年時点で約5%程度と低迷しています。
まとめ
働き方改革関連法の施行から7年が経過し、長時間労働の減少など一定の成果が見られる一方で、企業規模間の格差や隠れ残業、同一労働同一賃金の実効性不足など、いくつかの課題が残されていることが明らかになりました。
第2部では、この総点検結果が中小企業に与える財務面・労務面への影響と課題について掘り下げていきます。



