勉強嫌いの子どもに、まず必要だったこと ――「誉める」ことの大切さ

篠田啓彦

篠田啓彦

テーマ:体験談

子どもがなかなか勉強しない。

宿題を始めても、なかなか進まない。

「早くやりなさい」

「どうしてこんなに時間がかかるの?」

「みんなはちゃんとやっているのに……」

気がつけば、親子で毎日のように言い合いになってしまう。

今回は、そんなご家庭にとって、考えさせられるエピソードをご紹介します。

なお、このお話は、啓理学舎に入塾されたお子さんの話ではありません。

しかし、「子どもを誉めることの大切さ」を考えるうえで、とても印象的な話なので紹介させていただきます。




「私、勉強が嫌い!」


そのお子さんは、小学5年生の女の子。

本人も「自分は勉強が嫌い」と公言していました。

学校の宿題は、普通にやれば15分程度で終わる内容です。

ところが、勉強が嫌いでイヤイヤ取り組んでいるためか、お母さんが横についていても、宿題に1時間以上かかってしまうことがありました。

ある日のことです。

算数の「あまりのあるわり算」の宿題をしていました。

計算そのものはほとんど終わっていて、あとは「あまり」を書けば終わり。

ところが、なかなか書こうとせず、ぼーっとしています。

それを見たお母さんが、

「早く書きなさい」

と言うと、娘さんは「やる気をなくした」と言って、拗ねてしまいました。

こうしたことが続けば、親の側も疲れてしまいます。

そして、ある日――。

あまりにも宿題をダラダラやっている娘さんに、とうとうお母さんも我慢できなくなり、今までにないほど強く怒ってしまいました。


お母さんが怒った直後、娘は……


しかし、怒った直後にお母さんは我に返ります。

「言い過ぎてしまった……」

そう思い、娘さんに謝ろうとしました。

ところが、その娘さんはというと――。

何事もなかったかのように、弟と一緒に遊んでいました。

その姿を見て、お母さんも少し拍子抜けしたのではないでしょうか。


公文でも、4時間かかっていた


実は、このお子さんは公文にも通っていました。

そこでも、普通なら1時間程度で終わる教材に、なんと4時間ほどかかってしまうことがあったそうです。

公文の先生によると、その大部分は、教材を解いている時間ではなく、窓の外をぼーっと眺めている時間だったとのこと。

さらに先生は、教材を解いているときでさえ、「全く目に正気が感じられなかった」と話していました。

これだけ聞くと、

「この子は本当に勉強が嫌いなんだな」

と思ってしまいます。

ところが、ここで大切なことがあります。

この女の子は、勉強は嫌いでも、学校に行くことは決して嫌がっていなかったのです。

むしろ、学校生活を楽しんでいた様子でした。


そんな娘を見て、お父さんが言ったこと


お母さんは、娘さんの「やる気のなさ」についてお父さんに相談しました。

すると、お父さんから意外な言葉が返ってきました。

それは、

「そんなに勉強が嫌いだと言っているのに、それでも宿題をやろうとしているじゃないか」

というものでした。

そして、

「勉強が嫌いなのに、学校にはちゃんと通っているじゃないか」

とも言ったそうです。

お父さんは、

「できていないことを注意するよりも、まず、できていることをしっかり誉めてあげた方がいいのではないか」

と、お母さんにアドバイスしました。

これは、とても大切な視点だと思います。


「できていないこと」ではなく「できていること」を見る


私たちは、子どもの勉強を見るとき、どうしても「できていないところ」に目がいきます。

宿題が遅い。
計算ミスをする。
集中できない。
漢字を覚えていない。
読解問題が解けない。

だから、

「もっと頑張りなさい」
「どうしてできないの?」

と言ってしまいます。

しかし、子どもからすれば、

「できないことを毎日指摘される」

という状態になっている可能性があります。

そこで、このお母さんは、お父さんのアドバイスを素直に受け入れ、まずお父さんから言われたことを娘さん本人に伝えました。

そして、お母さん自身も、娘さんの「良いところ」を改めて考えてみました。


「そういえば、この子にはこんな良いところがある」


すると、いろいろなことを思い出しました。

例えば、おいしいおやつを食べていると、

「お母さん、このおやつおいしいから、半分あげる」
「弟にもあげる」

と言うことがある。

また、お母さんから何も言われていないのに、弟の世話を積極的にしていることもある。

そう考えてみると、

「この子には、こんなに良いところがあるじゃないか」

と気づいたのです。

そして、お母さんは、他の子どもと比べるのではなく、

娘さん自身が少しでも成長したところを見つけて、誉める

ようにしました。


すぐには変わらなかった


もちろん、誉めるようにしたからといって、翌日から突然、勉強好きになったわけではありません。

しばらくは、娘さんに大きな変化はありませんでした。

しかし、少しずつ変化が現れてきました。

それまで、お母さんがかなり手をかけなければできなかった宿題を、徐々に自分でやるようになっていったのです。


子どもを変える前に、「見方」を変えてみる


このエピソードから、私たちは大切なことを学ぶことができます。

それは、

「子どもを変えようとする前に、子どもを見る私たちの視点を変えてみる」

ということです。

もちろん、勉強をしなければいけないときには、勉強をする必要があります。

宿題をしなければならないこともあります。

しかし、

「宿題をやらない」

「勉強が遅い」

「集中できない」

という部分だけを見ていると、親子ともに苦しくなってしまいます。

一方で、

「今日は昨日より少し早くできたね」
「ここは一人でできたね」
「弟に優しくしていたね」
「勉強が嫌いなのに、ちゃんと学校に行っているね」

というように、子どもの小さな成長や良いところに目を向けることもできます。


「誉める」は、甘やかすことではありません


「子どもを誉めると甘やかしてしまうのでは?」

と考える保護者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、「何でもかんでも誉める」ということと、「子どもの成長を見つけて認める」ということは違います。

大切なのは、他の子どもと比較するのではなく、

「以前のその子と比べて、どこが成長したのか」

を見ることです。

昨日より5分早く宿題が終わった。
自分から机に向かった。
以前はできなかった問題が1問できた。
本を1ページ多く読んだ。
弟に優しくできた。

そうした小さな変化を見つけて、

「できるようになったね」
「頑張ったね」
「うれしいな」

と伝えてあげる。

それが、子どもにとって大きな力になることがあります。


子どもの「やる気」は、どこから生まれるのか




子どもに、

「やる気を出しなさい」

と言っても、なかなかやる気は出てきません。

むしろ、

「自分はダメなんだ」
「どうせやっても怒られる」

という気持ちになってしまうこともあります。

だからこそ、まずは、

「◯◯ちゃんには、こんな良いところがあるよ」

と伝える。

そして、小さな成長を一緒に喜ぶ。

そうすることで、子ども自身が、

「もう少しやってみようかな」

と思えるようになることがあります。

今回のお子さんも、すぐに変わったわけではありません。

しかし、お母さんが子どもの見方を変え、少しずつ良いところを認めるようになったことで、最終的には、宿題を自分で進める姿が見られるようになりました。


お子さんの「できないところ」ばかり見ていませんか?


もし今、

「うちの子は勉強しない」
「宿題に時間がかかりすぎる」
「どうしてこんなにやる気がないのだろう」

と悩んでいるのであれば、一度だけでも、お子さんの「できていること」を探してみてはいかがでしょうか。

勉強のことではなくても構いません。

優しいところ。
家族を大切にするところ。
友達に親切にできるところ。
好きなことには一生懸命になれるところ。
以前より少し成長したところ。

きっと、いくつか見つかるはずです。

そして、それを言葉にして、お子さんに伝えてみてください。

「あなたには、こんな良いところがあるよ」

その言葉が、すぐに何かを変えるとは限りません。

でも、子どもの心に少しずつ積み重なっていくものなのではないでしょうか。

子どもの教育では、「何を教えるか」だけでなく、

「子どもをどのように見て、どのような言葉をかけるか」も、とても大切

なのだと思います。


自己肯定感を育てることと、学習


ここまでのお話は、一見すると「家庭での子どもへの声かけ」の問題のように思えるかもしれません。

しかし、私はここに、子どもの自己肯定感と学習との深い関係があると考えています。

「自分はダメだ」
「どうせ勉強してもできない」
「お母さんに怒られるから、勉強したくない」

このような気持ちを抱えたままでは、子どもが自分から学ぼうとすることは、なかなか難しいでしょう。

反対に、

「自分も少しずつできるようになっている」
「自分のことを認めてもらえている」
「もう少しやってみよう」

という気持ちが育てば、学習に対する姿勢も少しずつ変わっていく可能性があります。

だからこそ、子どもの教育では、単に「できる・できない」だけを見るのではなく、

一人ひとりの小さな成長を認めることが大切

なのだと思います。


そして、自己肯定感は「国語」の学習にも関係します


実は、国語という教科は、子どもの自己肯定感と無関係ではありません。

国語の読解問題では、

「何を聞かれているのかわからない」
「自分の答えに自信がない」
「また間違っているかもしれない」

という状態になってしまう子どもがいます。

特に、国語は算数の計算のように「答えがすぐに見える」教科ではありません。

文章を読み、考え、自分なりに答えを出さなければなりません。

だからこそ、

「自分は文章を読める」
「自分は考えることができる」

「自分の考えを言葉にすることができる」

という経験を少しずつ積み重ねていくことが大切です。

「正解したから褒める」のではありません。

「ここまで文章を読み取れたね」
「この部分に気づいたのはすごいね」
「前より自分の言葉で説明できるようになったね」

というように、

子ども自身の成長や努力、考える過程を認めることが重要

なのではないでしょうか。


啓理学舎が大切にしていること


啓理学舎では、国語を単なる「入試問題を解くための教科」としてだけではなく、

子どもが自分で考え、自分の言葉で表現するための学び

として捉えています。

そして、その学びの中で、

「わかった!」
「自分の力で答えられた!」
「前より読めるようになった!」

という小さな成功体験を積み重ねていくことを大切にしています。

子どもを他の子どもと比較するのではなく、その子自身の成長を見る。

できなかったことを責めるのではなく、できるようになったことを認める。

そして、

「自分はできる」
「もっとやってみたい」

という気持ちを育てていく。

それは、国語の力を伸ばすだけでなく、

これから先の学習に向かうための土台にもなるの

ではないでしょうか。

「子どもを伸ばす」ということは、できないところを直すことだけではありません。

その子の中にすでにある「良さ」や「成長」を見つけ、それを本人に伝えてあげること。

その積み重ねが、子どもの自己肯定感を育て、やがて「自分から学ぶ力」につながっていく

のだと思います。

啓理学舎も、国語教育を通して、子どもたちの「できた!」という経験を一つでも多く増やしていきたいと考えています。

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篠田啓彦
専門家

篠田啓彦(塾講師)

国語専門オンライン学習塾 啓理学舎

保護者の方に家族関係改善等を助言させていただくとともに、国語が苦手なお子さまでも特別な学習方法で真の「基礎学力」「国語力」が身につき、さらに各教科の成績向上、中学・高校合格へ導いている。

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